3-1-1. 核燃料リサイクルで、地層処分地の面積は本当に減るか




 核燃料リサイクルの利点として、地層処分地の面積を減らすことができる、との見解を、資源エネルギー庁が示し、それを受け、原子力委員会は「原子力政策大綱」にその文言を盛り込んでいる。原子力政策大綱では、核燃料リサイクルを考慮するシナリオを4つ挙げ、多角的な視点で比較評価を下している。4つのシナリオとは、全量再処理のシナリオ1、部分再処理のシナリオ2、全量直接処分のシナリオ3、当面貯蔵のシナリオ4である(参照1)。

 使用済み核燃料は、高レベル放射性廃棄物である。それを直接処分するよりは、再処理工場でウランやプルトニウムを取り出しながら、高レベル放射性廃棄物を圧縮し、ガラス固化体にして処分すれば、体積で30%〜40%減少し、処分地の面積で1/2〜1/3に減少する(参照2)。
 これを詳しく見てみてみるが、その前提条件として、2030年時点で核発電設備容量が58GWeまで伸び、その後は一定することとし(参照3)、処分地を軟岩と仮定、また、キャニスタ1つ当たりに使用済み核燃料を2体格納する場合を考える。処分地面積は、全量直接処分で250,000m2、一方、全量再処理ではガラス固化体分140,000m2となり、確かに直接処分の56%に減少する(参照4)。

 しかし、全量再処理とは簡単にいうが、使用済みMOX燃料の再処理はまだ未定であり、原子力政策大綱によると、使用済みMOX燃料の取扱いについては、「2010年頃から検討を開始する」としている(参照5)。ボクは、普通の思考を持った人間である。なぜ、ここで、使用済みMOX燃料の取扱いが未定であるにもかかわらず、その地層処分をする場合を考えなかったのか不思議でならない。再処理が難しく地層処分をすることになった場合、使用済みMOX処分地面積は92,000m2であり、ガラス固化体分と合わせれば、232,000m2となる。直接処分と比較すれば、92.8%に減少する。つまり、再処理することによって、地層処分地の面積は、たったの7.2%しか減少しないことになる。

 ここでちょっと注釈を入れるが、使用済みMOX燃料が非常に持続的な発熱物質であることは、「3. 核燃料リサイクルの評価」で触れたが、すぐに処分できるかできないかは別にして、これを地層処分する場合、使用済みウラン燃料の4倍の発熱量であることから(参照6)、単純に4倍の処分体積を必要である、とし、計算しているようだ。
 そして、もう一つ。シナリオ1のコスト計算においてだけ、使用済みMOX燃料を全量再処理する条件を持ち出している。その使用済みMOX燃料再処理工場は、2047年から操業予定だそうである。二枚舌とはこのことだ。「2010年頃から検討を開始する」程度の見通ししか立っていない使用済みMOX燃料を、全量再処理するとしてコスト計算するとは、ボクの理解力を超えている。

 核燃料サイクルのシナリオ2(部分再処理)は、「使用済燃料は再処理するが、利用可能な再処理能力を超えるものは直接処分する。」(参照7)であるが、実は、これこそ、使用済みMOX燃料を再処理できなかった場合なのだ。これは、六ヶ所再処理工場で比較的楽な使用済みウラン燃料だけを再処理し、残りは全部地層処分する。最初から使用済みMOX燃料は再処理をしない、という想定である。だから、シナリオ2というのは、本当は、シナリオ1の中で検討されるべきものである。

 地層処分地の面積減少効果は、シナリオ2の部分再処理では認められない。しかも、これはシナリオ1の全量再処理の、使用済みMOX燃料が再処理できなかった場合とほぼ同じである。したがって、再処理を行うことによって「原子力政策大綱」の「環境適合性」を得るならば、使用済みMOX燃料の再処理は、絶対不可欠である。しかし、同じ「原子力政策大綱」には、使用済みMOX燃料の取扱いについて「2010年頃から検討を開始する」と書かれてあるのは、どういうことなのだろうか。

 これを逆にいえば、こうなる。

 使用済みMOX燃料の処遇が決まっていない現在では、再処理による高レベル放射性廃棄物の体積、及び処分地面積の低減などというのは、ただのうたい文句にすぎないのである。




参照
 1. 「原子力政策大綱」p35、36(「原子力委員会」) 「原子力政策大綱」)
 2. 第13回新計画策定会議「参考資料1 核燃料サイクル政策についての中間とりまとめ」p3(「原子力委員会」 「原子力政策大綱」)
 3. 第9回新計画策定会議「資料第13号 基本シナリオの核燃料サイクル諸量の分析」p3(「原子力委員会」) 「原子力政策大綱」)
 4. 第9回新計画策定会議「資料第8号 環境適合性について(改訂版)」p9(「原子力委員会」) 「原子力政策大綱」)
 5. 「原子力政策大綱」 p38(「原子力委員会」) 「原子力政策大綱」)
 6. 第13回新計画策定会議「参考資料2 基本シナリオの核燃料サイクルコスト比較に関する報告書」p50(「原子力委員会」) 「原子力政策大綱」)
 7. 第29回新計画策定会議「参考資料2 核燃料サイクルに係わる参考資料」p9(「原子力委員会」) 「原子力政策大綱」)




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