3-2-2. MOX燃料リサイクルの現実




 使用済みMOX燃料の再処理は、東海再処理工場で実績があり、そのMOX燃料は新型転換炉「ふげん」(参照1)のものである。核燃料リサイクルを日本で初めて完成させたのは、「ふげん」と東海再処理工場である(参照2)。「ふげん」は、日本の核発電技術の結晶であり、核燃料として、ウラン燃料、MOX燃料のほか、天然ウラン、回収ウランまで利用できたが(参照3)、発電原価が一般の原子炉の約3倍にのぼることと、プルサーマルというプルトニウム消滅処理の代替発電方式があることから、2003年3月29日、運転を終了した(参照4)。

 使用済みMOX燃料が原子炉内でどれだけ使われたという指標に、燃焼度というのがある。燃焼度は、核燃料が原子炉内で消費される期間が長いほど大きい数値を示す(参照5)。
 東海再処理工場で処理された「ふげん」の使用済みMOX燃料は、最高燃焼度が20,000MWd/t〜30,000MWd/tであり、平均燃焼度で17,000MWd/t以下を2年以上冷却し、取り扱った(参照6)。
 高速増殖炉の使用済みMOX燃料は、燃焼度が高いため核分裂生成物が多くなる(参照7)。この中には硝酸に溶けないものがあり、再処理工程のトラブルの元となる。これは軽水炉の使用済みウラン燃料にも言えることで、燃焼度が高くなればなるほど硝酸不溶の核分裂生成物が増える(参照8)。よって、これらの不溶解残渣(スラッジ)を除去するために清澄工程が設けられている。
 
 東海再処理工場では、再処理し回収したはずのプルトニウムがどこかへ行ってしまった。あるはずのプルトニウムがないのである。思わず笑ってしまいそうな話なのだが、再処理の過程で、さまざまな場所へ残ってしまい、約3%が不足したらしい。特に、清澄工程で除去されるスラッジの中に含有量が多く、高レベル放射性廃液貯槽へと流入する(参照9)。これは、再処理する核燃料の燃焼度が高ければ高いほど、プルトニウムの回収率が低くなることを意味する。

 原子力安全委員会・原子炉安全基準専門部会によると、計画されているプルサーマルのMOX燃料の燃焼度は、「約4万5000MWd/tの範囲内であれば」、問題ないとしている(参照10)。使用済みMOX燃料の再処理について「実績がある」とはよく言われるが、このような高燃焼度の使用済みMOX燃料、あるいは、プルトニウム濃度の高いMOX燃料の再処理は、まだ実績がないのである。恐らくは、核燃料溶解後のスラッジ増加は避けられず、それによりトラブルは頻発するであろう。また、プルトニウムの回収率も下がることが予測される。

 「実績がある」とは、実に空しい話だったのである。




参照
 1. 「原型炉『ふげん』」(「原子力百科事典ATOMICA」)
 2. 「世界最多のMOX燃料体装荷とATR燃料サイクルの実現」(「原子炉廃止措置研究開発センター」)
 3. 「新型転換炉の特徴」(「原子力百科事典ATOMICA」)
 4. 「新型転換炉開発の経緯」(「原子力百科事典ATOMICA」)
 5. 「燃焼度」(「原子力百科事典ATOMICA」)
 6. 「新型転換炉(ATR)燃料の再処理」(「原子力百科事典ATOMICA」)
 7. 「高速炉使用済燃料の再処理」(「原子力百科事典ATOMICA」)
 8. 「再処理技術の現状」(「原子力百科事典ATOMICA」)
 9. 「六ヶ所再処理工場と保障措置」(「原子力資料情報室」)、「核燃料サイクル開発機構 東海再処理施設における計量管理の改善状況」(「原子力規制委員会」)
 10. 「日本のプルトニウム利用計画」(「原子力百科事典ATOMICA」)




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