3-2-3. 高速増殖炉の核燃料について




 高速増殖炉の核燃料は、実際に燃焼させるMOX燃料と炉心を覆うブランケット燃料で構成されるているが、発電後にプルトニウムができるのは、ほとんどMOX燃料のほうである。実験炉「常陽」では、MOX燃料に生成されるプルトニウム量は、ブランケット燃料の20倍、原型炉「もんじゅ」のそれは、7倍である(参照1)。

 使用済みMOX燃料は、硝酸に溶けない白金などの金属が多く作られ、現在の再処理方法では、これらのスレッジとともに捨てられるプルトニウムが多くなる。したがって、プルトニウムの回収比率は下がってしまうのだ。高速増殖炉の増殖比は1.16であるから、倍増するための増殖分0.16を確保するのは難しいといえるだろう。一方、ブランケット燃料の再処理は比較的簡単だとされる。

 ブランケットの照射済核燃料は、炉心から漏れてくる中性子を吸収するだけなので、核分裂反応はあまり起こさず、燃焼度は低い(1,000〜2,000MWd/t程度)。したがってその再処理は軽水炉の場合と比べてはるかに容易である。
参照2)

 しかし、仮にブランケット燃料からプルトニウムをすべて回収したとしても、「もんじゅ」の場合、生成されるプルトニウム量の7分の1程度しか確保できない。したがって、プルトニウム濃度の高い、かつ、高燃焼度の使用済みMOX燃料に対応した再処理を実現できなければ、高速増殖炉によるプルトニウム増殖は、不可能である。
 槌田敦氏の断言した「実際には、Puは増殖しないのである」という言葉は、現実味を帯びている(参照3)。

 ブランケット燃料のプルトニウム生成量は少ないが、プルトニウム239の純度は非常に高く、常陽ブランケットでは99.36%、もんじゅブランケットでは97.5%である。これは、兵器級プルトニウムと呼ばれる。ブランケット燃料の再処理が容易であることも加わり、この事実は、核武装論の材料によく使われる(参照1)。




参照
 1. 「日本核武装によるアジア核戦争の恐怖」【資料】(「環境問題を考える」)
 2. 吉岡斉「原子力の社会史」p198
 3. 「日本核武装によるアジア核戦争の恐怖」【6.増殖炉というもんじゅのウソ】(「環境問題を考える」)




戻る

トップへ
1