4-2. 原子力委員会は、核利用を推進するために存在する




 原子力委員会は、原子力の平和利用を謳った原子力基本法により、「原子力の研究、開発及び利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的な運営を図るため」、設置されたものであり(参照1)、5年毎に原子力長期計画を策定してきた。その現代版が、原子力政策大綱である。
 原子力政策大綱の目玉商品は、何といっても、核燃料リサイクルである。原子力委員会の新計画策定会議は、原子力政策大綱を定めるための会議であり、その中で核燃料リサイクルの可否、4つのシナリオの検討を行い、結局、再処理、プルサーマルを路線をとる。

 原子力政策大綱の大筋は、第12回新計画策定会議で実質的に決まったと言っていい。その会議の中で、原子力委員会委員長である近藤委員長は、吉岡委員の意見に対し、次のように答えている。

原子力委員会というのは原子力基本法にありますように、原子力の研究・開発を通じて将来のエネルギー資源を確保するための政策を決めるのがミッションなんです。ですから、原子力がなくなるような状況にはならない、あるいは国民の皆様から、原子力を将来ともエネルギー資源としてエンジョイしていただけるような条件整備をすることが仕事であって、そういうことを防止するべく策を考えることが重要だと申し上げている
参照2)

 つまり、原子力基本法というのは、核の利用を促進するためにあり、原子力委員会は、それをどう推進していくかを話し合う場でしかない。第12回新計画策定会議の場において、核燃料リサイクルに明確に反対したのは、伴委員だけである。吉岡委員は「同意しない」であり、この両名は、元々、脱原発を提言している人たちである(渡辺委員が保留で他はすべて賛成。策定会議の委員名簿については参照3)。原子力委員会が核利用を“推進する”組織ならば、何も反対しそうな人を人選する必要はなかったはずだ。多方面の意見を考慮に入れた、という既成事実を作るため、彼らは利用されただけなのである。原子力委員会委員長は、反対意見に対する“回答”を上手に見つけ、とにかく推進決定へ導くことしか頭にない。その結果、素人でも、政策の欠陥を見つけ出すことが容易となった。

 伴委員は、最後の新計画策定会議で、次のように発言している。

私は、脱原発という立場からかかわっていて、必ずしも前へ進めるだけではない、後ろに下がる計画もあってもよいだろうというふうなことで発言をしてきました。
参照4)

 残念ながら、原子力委員会の性格上、徒労であったと言えるだろう。したがって、原子力委員会とは全く別に、核の平和利用の可否を話し合う機関が必要なのである。




参照
 1. 「原子力委員会と長期計画(平成6年原子力委員会)」(「原子力百科事典ATOMICA」)
 2. 第12回新計画策定会議「議事録」p39(「原子力委員会」 「新計画策定会議」)
 3. 第1回新計画策定会議「資料第1号 委員名簿」(「原子力委員会」 「新計画策定会議」)
 4. 第33回新計画策定会議「議事録」p9(「原子力委員会」 「新計画策定会議」)




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