4-2-1. 驚きの地質構造




 使用済み核燃料廃棄の計画は、地下に埋めることになっている。これを地層処分と呼ぶ。使用済み核燃料は、そのまま直接処分するか、核燃料リサイクルにより、ガラス固化体に姿を変えて処分するか、のどちらかである。

 地層処分の宣伝をやっている団体をNUMO(ニューモ)と言うが、正式名称は「原子力発電環境整備機構」である。NUMOの広告によると、地層処分は「世界で進められている」らしい(参照1)。この「世界」というのは、欧米のことだが、確かに地層処分計画があるにはある。しかし、実現しているわけではない(参照2)。

 地層処分検討国の地質は、日本のそれと比較し、問題にならないくらい安定している。日本の地質は、強い地殻変動の影響で地層が複雑になり、断層や割れ目が発達している。一方、欧米は、断層が少なく、地質構造も単調で安定している(参照3)。この違いは、驚きに値する。

 安定した地質にある欧米でさえ、次の記述から、地層処分について慎重に審議していることが伺える。

フランスが,どのような処分方法を選ぶかを国会で最長15年(2006年まで)の議論を経て決定することを法律で定めており,地層処分を進めようとしている国々でも,処分地の選定や影響評価に政府や国会が関与して計画にブレーキをかけられるようになっている.
参照4)

 一方の極めて不安定な地質にある日本は、というと、衆参合わせてたったの7日間の委員会審議しか行われず、本会議では、趣旨説明と採決だけ、という状況で「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が成立した。これにより、地層処分が推進されることになる。そして、

法律の定めるところでは,原子力発電環境整備機構は,処分地選定から操業にいたるまで通産大臣の承認を受けるだけで事業を進められる.
参照4)

 地質に関する、欧米と日本の圧倒的な違いを見せつけられると、こんな簡単な国会決定には首を傾げざるを得ない。真剣に検討したかどうか、疑いが残るのである。




参照
 1. 「2006年度 新聞広告」(「原子力発電環境整備機構」)
 2. 「海外の高レベル放射性廃棄物処分計画 」(「原子力百科事典ATOMICA」)
 3. 「日本列島と欧米の地質」(「地質関連情報Web 社団法人 全国地質調査業協会連合会」)
 4. 「高レベル放射性廃棄物の地層処分はできるか I 」(「埋め捨てにしていいの?原発のゴミ」)




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