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〜スリランカに行く〜

「スリランカ、行かない?」
 例によって、旅友たちの誘いは突然だ。
「行く、行くぅ」
 例によって、私は即答だ。
 ってなわけで、スリランカ、行ってきたっス。
「スリランカ行ってくるよ」と言った場合、それに対する反応には
3パターンがある。

パターン1繙???????
パターン2繙それは、かつてのセイロンだね(正論っス)。
           紅茶がおいしいところだね。
パターン3繙またインドぉ?

 これから詳しく書くけれど、この反応のどれもが、正しいような
間違っているような、だったスリランカの旅。
 さて、私たち(私+旅友×2」」・夫婦もん)が、なぜにスリラ
ンカを選んだのか? それは、インドが好きだからであり、かつ、
南の国が好きだから、だ。
 つまり私たちも実際に歩いてみるまでは、スリランカをインドの
延長線上と考えていた。
「スリランカとインドって、どっか違うの?」
 うーん、ごもっともなご質問。でも、じぇんじぇん違う国だったん
だなぁ、これが」」。

〜スリランカはきれい〜

 インドに行ったことない人に、「スリランカとインドは、じぇんじぇん
違うんだよぉ」と言ったところで、まあ理解してもらえないってことは
分かってるのね。
 それにしたって、スリランカとインドは全然違うんだよぉ!
 そのことには、空港に降り立った瞬間から気づかされていた。
「スリランカの空港って、インドと違って、とってもきれい!」
 どのくらい違うかっていうと、牧志公設市場とハンビータウン(注1)
くらい、っていうのかしら? まあ要するに、スリランカの空港は、
極めて常識的な美しさを保っていたってわけ。
 さて、飛行機が深夜に着くと分かっていながらも、私たちが宿の
予約なんてしてるわけがない。
 空港で両替を済ませると、ニゴンボという、空港から車で30分ほ
どのビーチリゾート地まで移動することにした。
 みなさん、インドの真夜中の空港をご存じだろうか? ご存じな
い。そりゃ残念。それはそれは悪い人たちが、集まっているわけで
ござんす。
 だから空港から出たときの私たち3人組は、肩をいからせ、じぇ
ったい誰にもだまされないぞっ!と目をギラつかせていた。
 ツツツ」」(ヴ、来た来た)。
「タクシー?」(ヴ、どーする、どーする?)
「ノーサンクス」(まずはこう言ってみよう)
 スタスタスタ」」・(はれはれ、行っちゃうのぉ?!)。
 そう。スリランカ人は、押しが弱かったのだ。空港にたむろする
タクシー運転手なんて、この世で一番タチ悪い奴ら、としか思って
いない私たちの目の前で、彼らは料金の交渉もせずに帰っていく
じゃないか。
「おいおい、もっと押しが強くなんなくちゃ、金稼げないぞ!」
 思わず叫ぶ私たちであった。

〜真夜中のランバダ〜

 空港でニゴンボまでのタクシーチケットを買い、ワンボックス型
の車に乗り込んだ。
 夜中の2時。あたりは真っ暗。道路はボコボコ。だーれも通らな
い道を、ボンボン跳ねる低速タクシー。もわんとした空気。異国だ
よぅ。ウキウキ。
 潮の匂いで(本当は看板を見たから)ニゴンボの町に到着したこ
とを知る。
 真ーーっ暗。
「宿はどこだ?」
「宿は知らない」
「宿の名前を忘れたのか?」
「宿の予約をしていない」
「だから、行きたい宿はどこだ?」
「宿を知らない」
 タクシー運転手との会話は、どうどうめぐりを繰り返した。それ
でもどうにか“私たちは、どこにも宿を取っていない。行きたい宿
もない。つまりは、何もしてない不精者”ということを理解してく
れたタクシー運転手が、ゲストハウス(安宿)の看板を見つけて、
細い路地に入ってくれた。
「おーい、だれかぁー」
 シーン。宿からは誰も出てこない。アセ」」・。だめだ、次、行っ
ちゃってくださーい。
 チャ〜ラチャララァ、チャラララチャラララ、ラ〜ララァ♪
 な、なにこの音? もしかして、ランバダ?
 このワンボックス型タクシーは、バックするときにランバダをあた
りにまき散らすのだ。うるさい、うるさすぎるっ。脳天気なランバダを、
静かなニゴンボの町にこれ以上まき散らさないためにも、早く宿を探さ
なくっちゃ。
 数軒回ったのち、浜の目前に立つ小さなゲストハウスの門を、庭
で寝ていたおじい(注2) が開けてくれた。ふぅ。これでひと安心。
 運転手さんに心ばかりのチップをあげた。運転手さんは、はにか
みながらもうれしそうだった。
 チャ〜ラチャララァ、チャラララチャラララ、ラ〜ララァ♪
 流れ去るランバダも、心なしかうれしげだった。

〜すべてが開放だぁ!〜

 満月を見上げながら、私たちはスリランカ最初の夜を堪能した。
蚊帳の中にもぐりこんだときにはもう、カラスの鳴き声と、漁船の
モーター音が騒がしかった。
 翌朝。濃く澄んだ青い空を埋め尽くすように、ヤシが生い茂って
いた。
 ゲストハウスの勝手口から浜にでると、子供たちがウジャウジャ
寄ってきた。
 船が漁からどんどん戻ってきた。船に走り寄って中をのぞき込んだ
けれど、魚はもう見当たらなかった。漁師たちが笑った。
 陽の光が白かった。アチチチ。焼けた砂が足を焼いた。
「朝食にするかい?」
 ゲストハウスのおじいが、ティーポットとトーストをもってきてくれた。
 中庭をボーッとながめながら朝食をとった。紅茶はおもいっきり
薄かった。中庭の中央にはモンパの木、まわりにクロトンとヤシの
苗木(注3)。だれかの家の庭みたいね。
 あーゴロゴロ。うーゴロゴロ。暑いよぅ、うれしいよぅ。
 と、ゴロゴロと転げ回るわたしたちの目の前を、頬を赤く染めた
カップルたちが横切っていく。
 ホヨ、なぜここにカップルが?パッタン。ハレ、となりの部屋に
入ってっちゃった。なぜに?
 ゲストハウスを出入りするカップルたちを、しばらくながめてみ
た。ははーん(*^_^*)。よーするにここは、ラブホテル としても使わ
れているってわけね。
 へ、まてよ。そらーすごいことじゃないか。おとなりのインドな
んて、婚前交渉はもちろん、デートすらおおっぴらに行われること
は少ないのよ。ふーん、スリランカって、開けてるんだぁ(だれか
コップ持ってきて、コップ)!

〜アーユーアンダスタン?〜

 宿のおじいに宿泊代(2泊分1人400Rs=約800円)を払い、
ついでにタクシーを呼んでもらう。途中、象の孤児院に寄ってキャン
ディまでは、所要4〜5時間。タクシー代は2300Rsに決まった。
 例によってランバダをまき散らしながら(これってニゴンボのタ
クシーだけみたい)、出発。
 スリランカはヤシの木でできているんだ。これが印象。 やんばるの
木を全部ヤシにしたみたいに、どこもかしこもヤシ・ヤシ・ヤシ・ヤシ
」」・ヤシガニッ(ボツ)(注4)。
 車の中からパシャパシャと写真を撮っていたら、運転手が、
「キレイなところがあったら、停めるから言いなさい。アーユーア
ンダスタン?
「は、はい。アンダスタン」
 象の孤児院というのは、親からはぐれた小象を育てているところ
で、たまに日本のテレビでも紹介されている。
 象さんだぁ、ウッキウッキ、と勇んで行ったけれど、足を鎖でつ
ながれた小象が見せ物になっていて、気分がシュンとした。近くの
川で水浴びしてる象たちも力がなくって、バサーッと鼻から水を出
してる象は一頭もいなかった。
 でも、ここのレストランのカレーは美味しかったから、許そう。
 車に戻ると、運転手のおしゃべりは一層力を増していた。
「あの青いかざりは、政府のかざり。アーユーアンダスタン?
「?? は、はい。アンダスタン」
「ここは○×□っていう町。アーユーアンダスタン?
「は、はぁ。アンダスタン」
 実際のところは、早口だし、なまってるしで、ほとんど聞き取れ
なかった。でも聞き返したら、また長々と説明聞かなきゃいけない
から、黙って耐えた。
 キャンディという町に着いた。キャンディは日本でいう京都・奈
良のようなところで、仏教国スリランカの心のふるさとだ。だから
当然、国内外からの観光客も多い。
 わたしたちはまたしても、その夜の寝床を決めていなかった。普
段はさんざんけなしている『地球の迷い方』をやおら取り出し、鼻
毛運転手をあっちゃだ、こっちゃだ、と振り回した。
 それでも気に入った宿がなかなか見つからず、双方ともかなりゲ
ンナリしてきた。
「もーいーや。駅で下ろして。アーユーアンダスタン?
「お、おっけー。アンダスタン」
 キャンディ駅で私たちは車から飛び下りた。その時、鼻毛アンダ
スタン運転手は、明らかにホッとした表情をした。死なすっ! (注5)

〜酒だ、酒だぁ!〜

 ゲストハウスは駅から電話して見つけた。宿の奥さんは日本人、
ということだった。駅までダンナさんが車で迎えにきてくれた。
「あらあら、どうも。ようこそ、いらっしゃい」
 フロントに入るなり、聞きなれた言葉が耳に飛び込んできた。で
も、現地日本人にすがりつきたくなるほどのスリルが、スリランカ
にはなかった。「どこにでも日本人はいるんだなぁ」こんな気持ち
しか湧いてこなかった。
 部屋はトリプルで一泊800Rs。広いバルコニーがついていて、キ
ャンディの緑が見渡せる。
「ああ、やっとここまで来たね。まずはビールで乾杯だね
 翌日はボタニカル・ガーデンという、アジア最大(だと思う)の
熱帯植物園に行った。「この〜木なんの木、気になる木♪」(ベン
ジャミナ)があった。芝生の上で寝てみた。暑くてすぐに起きた。
 植物園まで迎えにきてくれた宿の車が、途中で酒屋に寄った。
「うふうふ。これでわたしたちの今晩のビールも、十分あるね
 夜はキャンディダンス見学→仏歯寺。仏歯寺はその名の通り、仏
陀の歯が祀られている寺で、スリランカ仏教の中心だ。ライトアッ
プされた寺の中に、お供えの花を持ったスリランカ人たちがどんど
ん吸い込まれていく。私たちもブッディストのふりをして(仏教徒
だと入寺がタダになる。セコい)、思いつくかぎりのお願いごとをし
た。ほんとうにセコいのだ。
 その翌日は移動予定だったけれど、次のホテル(たまにはホテル
に泊まるのよん)の予約が入らず、一日空き。宿の奥さん、ヒロコさ
んに近場の観光情報を詳しく聞いた私たちが向かったのは、クイー
ンズ・ホテル(コロニアル風のクラシックなホテル)のバーだった。
だって昼間っから酒飲めるところって、ここぐらいなんだもの。
 宿に戻るなり、
「今日はどちらまで?」
クイーンズ・ホテルのバーで、お酒などを少々」」
「(苦笑)」
 結局、チェックアウト時に私たちの部屋の前には、スリランカの
地酒アラック×1、ジン×1、ビール×?の空きビンが並んでいた。

〜列車だ、列車だぁ!〜

 次の目的地はヌワラ・エリヤ。ここまでは列車の旅なんだぁ。列
車に乗るのなんて、すごーく久しぶり(注6) 。うふうふ。
 ヌワラ・エリヤは高原にある町で、スリランカ人のだれもが行き
たがる避暑地だ。熱帯の国には、「涼しいことはいいことだ」とい
う考え方があって、ここスリランカではヌワラ・エリヤに行くとい
うことが、ステータスになっているようだ。
 長距離バスで行くこともできるけれど、“列車から見える風景は
絶景”と『地球の迷い方』に書いてあったから、それを信じて駅に
向かった。
 列車はなにしろ揺れた。揺れたというより、飛んだ、というほう
が適切かもしれない。ボヨーン、ボヨーン。私たちは紅茶をこぼし、
駅で買ったパンを鼻につっこみながらも、列車旅を満喫した。
 歩いたほうが早いのでは、と思われるほどの列車の中からは、一
面に広がる茶畑が見えた。山の斜面という斜面が茶畑だった。窓枠
に頭を乗せて風に吹かれながら、襲ってくる睡魔と戦った。
 駅をひとつスッ飛ばしたからバックする、という事態を含めて、
キャンディからヌワラ・エリヤまでの所要時間は5時間。それでも
座っているのに疲れたら歩けばいいし、いろんな物乞い(歌を歌っ
て金をせびる母子物乞いとか、自分の病気診断書を見せて回る男の
子とか)や、物売りもくるし、飽きることなんてなかった。列車を
選んで大正解。
 それになにしろ、5時間の列車の旅が1人57Rs(約120円)
いうのが、ありがたやありがたや。

〜白い息と黒いスープ〜

 ヌワラ・エリヤのグランド・ホテルは、白壁に赤い屋根が乗った、
これぞ正当派高原リゾートホテルよ、といった外観。どの部屋にも
暖炉が切ってあるのは、避暑地のホテルならでは。
 まずは例によって、バーで到着の乾杯をしてから、各自、部屋で
ゴロゴロを決め込んだ。リゾートとは、かくあるべきかな。
 すると、ヒヤヒヤヒヤ」」。開け放っていた窓から、どんどん冷
たい空気が入ってくる。かなり涼しい。スリランカに来てはじめて
出会ったバスタブということもあって、3人とも風呂につかった。
 さて夕食時になって、中華でも食うか、とホテルの外へ出てみる
と」」。さっむーい!! 息が白ーい。星がきれーい。熱帯にもこん
な寒いところがあったなんて。どうりで誰もが「あそこは寒い、あ
そこは寒い」って言ってたわけだ。ブルブル。
 寒いってこともあって、メニューにあった“フカヒレスープ”の
文字が目に刺さった。だいたい、海外にいるときこそ、日本では手
が出ないものを食べるべきなのだ。フカヒレスープ、3つねぇん。
「おまたせしました。フカヒレスープでございます」
 シーン」」。目が点。
 ズズズ」」。舌が棒。
 ちっがーう! これのどこがフカヒレスープやねん! フカヒレ
スープは、こんなに黒くなーい!フカヒレスープは、こんなに甘く
なーい! うっきぃーっ!!
 こうして過ぎていく、甘く切ないヌワラ・エリヤの夜。



(注1)どちらも沖縄本島にあります
(注2)おじいさんのことを沖縄ではこう呼びます
(注3)熱帯・亜熱帯地方によく見られる植物です
(注4)西表島などのマングローブ林に生息するカニです
    おいしいけれど、乱獲により数が少なくなってしまいました
(注5)「死なすっ!」は「殺すっ!」の沖縄型です
(注6)沖縄帰りだったもんで・・・


(GoGoスリランカ<上>終わり)

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