「ね、私すごい気になってたんだよ?サスケくんのファーストキスの相手。」
「どんなひとなのかなあ・・・?」
私は桜から目を離して、ちらりとサスケくんを盗み見た。手には手作りの、プリン。
あっ・・・
わらって、る・・・?
よーく見ないと判らないようなちょっとした変化かもしれないけど、たしかに、
サスケくんは
笑ってた。
うれしくて、うれしくて、
私も、笑った。
今も幸せ、だよ、わたし。
のばした手はもう、届かないけれど。
あなたがここにいる。
これ以上の幸せがあるでしょうか。
「サスケくん、帰ろっか。」
辺りがオレンジに染まったころ、私たちは家路についた。
私の髪と、桜の花が、同じように朱に染まっていた。
サスケくんはそれを見くらべて、またすこし微笑んだようにみえた。
それにしてもおかしいわよね。
こんな状態のサスケくんに任務がくるんだから。
この前はBランクだった。
そのときのサスケくんの動きは、いつもとまったく違っていて、
まるで血に飢えた黒豹のように闇夜を駆けた。
彼の写輪眼は暗闇で、獣のように光った。
わたしはそれが恐くて、任務終了のあとのサスケくんの後姿に、声をかけるのをためらった。
すると、サスケくんはふと振り返って、私を探して手をのばした。
わたしは引き寄せられるようにその手を取った。
彼は私を見つけて、私の体を抱きしめた。それは思ったよりずっと優しくて、私も彼の背中に手を回した。
彼の瞳に私がうつった。
彼は、本当は私をいつも見ているのだと、わかった。
ただ少し、悲しみがすべてを凌駕しているだけ。
ああ、こんな風に抱きしめあったら、生きていけるかもしれない。
二人でなら、前に進めるかもしれない。
そう、気づいた。
今回はAランク。
それはサスケくんでなきゃできない仕事があるってことで、それだけサスケくんの能力の高さを示しているのだろうけど。
なんども抗議に行ったけれど、とうてい相手にしてくれなかった。
しかもカカシ先生まで。
「俺とナルトもついていくから」って・・・
「サクラも。来てくれるだろう?」
・・・そんなこといわれたら、行くしかないじゃない。
私も、少しは役に立つかもしれないし。
何よりサスケくんの安否を心配しながら待ってるしかできないのが一番嫌。
『サスケくんともう会えなくなるかもしれない』
あんな気持ちを味わうのはもう、嫌。
あなたが、ひとりあの修羅の道に入ってしまったとき。
一緒に戦っていても、あなたがいつのまにか隣からいなくなりそうで、恐かった。
ああ、そうね。自分も死ぬかもしれないと思ったけれど、
自分が死ぬことよりも、あなたと離れ離れになることが恐いとそればかり思っていた。
わたし、自分が思っているよりこわい女なのかも。
愛というのがこういうことなら、
きっと愛なんてキレイなものじゃない。
だってなんて自分勝手な気持ち。
あなたを失って悲しくなりたくないの。
あなたを失って傷つきたくないの。
でも私は言うわ。
あなたを愛してる。
人を愛することを
誰が美しいものだって決めたの。
だって、
あなたがここにいる。
それ以上の幸せがあるでしょうか。
死なないでほしいって、そういうことでしょう?
また会いたいって、そういうことでしょう?
そう願うのが愛することなら、
私は言うわ。
あなたを愛してる。
任務は、明日に迫っていた。
おやすみ、と私はサスケくんにキスをした。
ねえ、約束、するね。
大丈夫。私が、守るから。
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