幼いころの、夢を見た。






『ねえ、教えて』

『禁呪って、なぜ存在するの?』

小さいころ読んだ本の中の気になる二文字がこころから消えなくて、パパとママに尋ねた。










禁呪。

禁呪って、なに?


けして使ってはいけない言葉。


サクラ、いいかい?使ってはいけないよ。




ねえ、どうして?

どうして使ってはいけないの?




おまえが、死んでしまうから。



私が、死ぬの?



そう、だからけして使ってはダメ。



・・・使っちゃいけないのに、どうして、その呪文はあるの?

ねえ禁呪って、どうしてあるの?




ねえ?だれか、教えて?





























ざわざわ・・・ざわ・・・
夜の闇にかくれて、うごめく影は無数に。



任務、決行。


「サクラとサスケは森の中でゲリラ戦を担当。」
「こっちは向こうを正攻法で攻める。」

カカシ先生がてきぱきと作戦を指示していく。もうとっくのとうに「先生」ではないけどきっといつまでも私たちの先生。
いつもこんなならいいのに、とクスリと笑いながら私は思う。

「ん?どうした?サクラ。」
めずらしくやさしい声で話し掛ける。
「カカシ先生、かっこい〜。ひゅ〜」
「ダロ?今ごろ気づいたか。」
先生はいつものように笑ってそして、ささやいた。

「死ぬなよ。」
ああ、Aランクの任務ってこういうものなんだ。


「先生もね。」

目と目が合った。

ああ、もしかしたらこのひとは、まだ私のことがすきなのかもしれない、と思った。



「・・・先生。サスケくんがいなかったら、多分私先生が一番好きよ。」

先生は笑った。
「・・・ああ。」
そして、私の頭をポンポンとかるくなでた。

それは彼がいつまでも先生でいてくれるしるしだった。

一瞬視線がからんで、また離れた。




今度はナルトのほうにむかって、
「まあ、先生と一緒だから大丈夫だと思うけど・・・」
「なに言ってんだってばよ!俺が先生のこと守るってばよ!」
「アンタこそなにいってんのよ」
私は苦笑したけれど、変わらないナルトにあのころを思い出して、少し切なくなった。
ナルトにはそのままでいて欲しい。

死んで欲しくないよ。
これも、きっと愛してるっていうこと。

ねえ、ナルト。
「わたし、ナルトのこと嫌いじゃなかったよ。」
「わかってるってばよ!」

ナルトはにやっと笑った。私も、笑った。

笑って、さよならしたかったから。
ありがとう、ナルト。




あなたなら私が選んだことを、すべて許してくれそうな気がする。
いままでもずっと、そうだったよね。私がずっとサスケくんのそばにいるって決めた時も、あなたはただ黙って私を見ていてくれた。
愛の形は違うけれど、あなたのことも、とても大切に思う気持ちは本当でした。

だから、
「死なないでね」

「大丈夫だってばよ!」

やっぱり、笑った。
ありがとう。あなたとは笑ってさよなら出来ると思ってた。

「もうそろそろだ。」

ナルトから視線を戻し、隣のサスケくんによりそった。
「さ、行こうか。」

皆で目くばせしあって、

「任務、開始!」


次の瞬間、そこには不気味なほど静かな闇だけが横たわっていた。












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