「サスケくん・・・ごめんね、私が油断したから・・・」
サスケくんの傷は思ったよりも深くはなかったが、血が止まらない。

どんなにきつく止血しようとしても包帯は赤々とにじんだ。
サスケくんの唇の色は失われ、顔は青ざめている。

幻術で撒いてきたけれど、ここが気づかれるのは時間の問題だ。

崖下のくぼみの、洞窟のようなちょうどいい空間。
側面の岩にからだを持たせかけて、サスケくんはさっきからピクリとも動かない。




ふと見たサスケくんの
顔色が、おかしい。

私は目を見開いて
自分の顔から血の気が引くのがわかった。
心臓がドクドクと音を立てて速まる。

「サスケくんっ・・・!」

「・・・」

閉じていた目を薄く開け、瞳がわたしを探す。
目が合うと、サスケくんは少し頷いた。

大丈夫だとでも言うように。


私は息を呑んだ。胸が熱い。泣きたくなんてないのに勝手に視界がにじむ。
「サスケ、くんっ・・・」
泣くな。泣くなサクラッ!自分で自分を奮い立たせようとするのに涙はかえってあふれてくる。


愛してるんでしょう?










・・・どうする?










わたしは、どうする?




















その瞬間、まがまがしいチャクラのにおいが、あたりを支配した。

・・・気配を消してこないなんて、私たちもずいぶんとなめられたものね。



私たちを殺したいだけならば、気配を絶ってくるほうが何倍も確実だ。
選択肢は二つ。彼は怒りで我を見失っている。・・・あるいは、・・・そう・・・快楽犯。




ああ、
・・・だったら、イケルかも。



私たちが取ることのできる選択肢は二つ。
いや、正確には、わたしにはひとつ。








ニヤリと笑って、私はサスケくんに近づいた。


「サスケくん、今度は私が、あなたを守る番よ。」

彼の顔をできるだけ優しく包み込んで、乾いた唇に自分のそれをあてた。
・・・よかった。まだ、暖かい。

わたしが今からやることを、あなたはきっと許してはくれないでしょう。

だけれども。


私はあなたを愛してしまったから。




ああ、やっぱり愛なんて美しいものじゃないわ。





汚くて、自分勝手で、醜くて、

そしてなによりも強い。






「サスケくん、ずっと、ずっと大好きよ。」

「ぜったいあなたを守るから。・・・何をしても。」

サスケくんに聞こえないように、ささやいた。





















「サスケくん?まだ、すこしチャクラは残っているみたいね。」
「いい?私が次に呼んだら、すぐ外に逃げて。」
「それまでは気配を絶ってそこにいて。けして敵には気づかれないから。」
「万が一のためにあなたのまわりに風の壁をつくっておくけれど、ちゃんと外に逃げてね?」

何をするつもりだといいたげな、いぶかしい視線に笑って答える。
「大丈夫!起死回生の作戦があるの!」

ホントはそんなのないんだけど、なんだか、絶対うまくいくような気がしていた。











「大丈夫。」

とびっきりの笑顔をサスケくんにむけた。この笑顔を覚えててくれるといいな、なんて思って。

















あのチャクラがもうすぐそこに近づいていた。




不思議と、恐くはなかった。



















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