さあパーティが始まる。
「ご来訪・・・歓迎いたしますわ・・・」
私は薄く笑って彼を迎えた。
このまま岩のくぼみの奥へ・・・奥へ・・・
ゲリラ戦の極意そのニ。自分の陣地へ誘い込む。
「フフ・・・わざわざお出迎えとは・・・気がきくね・・・。」
「もうひとりが、見えないようだが・・・」
カレは失った左腕をみてまたニヤニヤと笑う。
今彼の歩くすぐ横に、そのサスケくんがいる。
幻術でこのヒトにはみえていないはず・・・
私もすずしく笑って答える。
「ふふふ・・・足手まといは・・・捨て置きましたわ。」
ここは大きな賭け。
見てはいけない。
見てはいけない。
けしてこのヒトの足元を見てはいけない。
ドクン、ドクン
血が逆流する。心臓が壊れそう。
「ヒドイお人だ・・・その冷酷さで私の部下もたやすく殺されたのか・・・」
「あら、女の恐さをご存じないのかしら。いい女ほどおそろしい・・・」
妖艶なんてどう表すのか知らなかったけど、このときの私の表情のことをいうのかもしれないと自分で感じた。
「・・・そうかも知れませんネェ・・・・・・フフ、違うところで出会っていたら、ゼヒわたしの女にしたいところですよ・・・」
ゲ!サイアク。お断り。
「アラ・・・それは光栄ですこと・・・」
もう少し。もう少しでサスケくんが彼の間合いから出る。
「あなたも強いのね・・・違う場所で、出会えたらよかったのに・・・」
また一歩。彼が動いてサスケくんとの距離は充分とれた、安心したその瞬間、
にぶい痛みとともにわき腹から鮮血が飛び散った。
「・・・っ!」
顔をしかめた私をみて、ニヤリと笑うカレ。
一瞬のスキも見逃してはくれないのね。
「いいカオだ・・・」
「わたしはそのカオをみるのが、スキなんだよ・・・。いい女なら、なおさら・・・ネ・・・」
気分が悪い。
おかしな顔をして彼はニヤニヤ笑った。
・・・狂ってる。
ビュッ!
今度は左足に彼の投げたクナイが命中した。血が滴り落ちる。
「抵抗、しないのかい・・・?」
「・・・」
カレはどんどん近づいてくる。
そう、来て。
ここまで、来て。
「次は右足・・・」
「・・・っ!」
痛みに気を失いそう。
わたしのまわりはもうすでに血の海だった。
こういうときに昔の出来事が走馬灯のようによみがえってくるっていうのかしら。
へんね、私の声が聞こえる。
小さいころの私。
本ばかり読んでた。
私が問い掛ける。
ねえ、きんじゅってしってる?
ねえ、きんじゅってなに?
どうしてつかっちゃいけないの?
・・・じゃあ、どうして、きんじゅなんてあるの?
・・・ああ、そうか。
わかった。
答えが、わかった。
きっと、間違ってないよね。
ううん。間違いでもいい。
ずっと、わからなかった。
だれも教えてくれなかった。
どうして、きんじゅなんてあるの?
ああ、そうか。
・・・それは、大事な人を守るため。
間違っててもいい。
『今私がそう決めた。』
『それはあなたを守るため。』
目を開けて、狂ったカレを見据える。
私も、狂ってるといえば狂ってるか。
苦笑した。
「ねえ・・・最後に・・・あなたの名前を知りたいわ・・・ステキなあなたの・・・」
「・・・観念したのですか・・・?もう少し遊んでもらいたかったのですが・・・」
カレの右手にはとどめのチャクラが大量に練られていた。
「・・・私の名前は・・・ダルク・・・!」
右手が振り下ろされた瞬間私に触れたそれは跡形もなく消え去った。
『・・・死せよ、ダルク・・・!』
私は目を見開き、
私の声が、こだました。
その一瞬すさまじい光が洞窟を照らしたかと思うと衝撃波で空気がビリビリと震えた。
体が、あつい。
私が触れようと手をのばしたさきの、カレのカオはゆがんでいた。これがさっきあんたが言ってた恐怖にゆがんだカオ?
だったらぜんぜんイイカオなんかじゃないわ。
指先で触れるとたちまちその奇妙にゆがんだモノが見えなくなり、次の瞬間それが消えたのだとわかった。
首から上のない黒尽くめは音もなく崩れ去り、わたしはあまりのまぶしさに目を閉じた。
体が、あつい。
血が、たぎる。
・・・心臓が、こわれる。
ああ、これが、禁呪。
次の瞬間、荒々しい衝撃が私のからだを引き裂いた。私は後ろによろめいた。
それは空気を伝わって大地を揺らした。
洞窟が、壊れる。
ハッ、っとしてわたしは叫んだ。
「サスケくん、逃げて!!」
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