第32号 2015年6月 発行 聖ベネディクト女子修道院 

オブレートだより

金祝のお恵みに浴して    シスターマリアベダ 岡 由美子

「神の計らいは限りなく、生涯わたしはその中に生きる」(Ps139)は私の好きな詩句です。

 幼稚園入園のために父を中国に残して母は妹と私を連れて帰国してくれたおかげで、残留孤児を免れたことを初めとして、多くのお恵みをいただいて来ました。
高三の時甲府教会で受洗し、上京して修道院の寮に入り、いくつかの会のシスター達の姿を見て修道生活を考えるようになりました。
学生寮創設のため来日したシスターに頼まれ働くようになり、そこでは仏語も勉強させていただいたのですが、ベネディクト会との出会いは、 会社時代の同僚のお姉さんが麻布の修道院にいて、シスターフランセッタの料理教室の珍しい中国料理をご馳走になったことがきっかけです。

 入会は昭和37年3月で、シスターヨハネと連絡船に乗り夕張の清水沢に到着、先着のシスターホスチアと修道生活を始めました。
厳しい寒さに午後になるとお腹が痛みました。
その一年前修道院を見学した時食事の質素さに感激したのですが、入って見るとアメリカ風の美味しい食事に、四旬節中は節制をと教えられて何と辛かったことか。
翌年室蘭の新しい修練院に移りましたが、修練期の失敗の一つは、ある日夕食は各自好きな所で食べて良いと言われ、私達三人は裏山に登り、 素晴しい夕陽を眺めおむすびを頬張りおしゃべりを楽しんで帰ったとたん、院長様から修練者が禁域を出たと叱られました。

 初誓願後東京で大学生活を終えて戻り、私達の学校に勤務しました。
カナ文字タイプ以外にとり柄のない私が中高生に教えるのに、初めはアップアップで仮性近視になりながら十二時過ぎまで社会科等の授業準備に取っ組みました。
高一の生徒達に英作文の力を付けたいと思って課題を出した所、そのうちの一人は毎日1ページぎっしりに様々な話題の英文日記を提出し、 そこまで実力のない私は食事係りのアメリカ人のシスターに添削を手伝ってもらってなんとか面目をたてました。
早めの退職後付属の幼稚園で英語の歌を教えなどし、先生方の子供への接し方を見て私の生徒達への接し方の至らなさを反省しましたが後の祭りでした。
一方ホームヘルパーとして近隣のお年よりや目の不自由な方のお世話ができたことも大変幸せでした。

 ところで、終戦の年に小学校に入った私は、7月の空襲で家を焼かれて疎開する前の3ヶ月ほど音楽を教えて下さった大好きな先生と、入会後数年して帰省した折に教会でばったり会って、 それが結婚後の芦沢先生だったのです。
そんな訳で甲府教会の方々がオブレートになられて、私達のためにお祈りして下さっていることを大変有難く思います。

 「神の計らいは限りなく…」お恵みの中にいながら今もってお返しできないでいる自分を自覚しつつ、生徒達、今まで私に関って下さった方々に心から感謝すると同時に、 粗忽で未熟な私がここまでこられたのは、励まし、支えてくれた共同体のおかげと思っています。

 シスターホスチアは丁度3年、シスターヨハネはたったの1ヶ月長生きしてくれたら一緒に金祝に与れたのに。
残念ですがすべては神様の計らいの中にあること。
聖ベネディクトの娘としていっそう神様への信頼を深める日々を過せたらと願っています。