『カラスからシスターへの手紙』

カラスの夫婦より

 

 人間様が新型コロナのニュース喧騒の中、修道院前の道路を挟んだ沢のドングリの高木に巣作りを始めたのが肌寒い日が続いていた4月20日。
人間界で身近な鳥の中で、嫌われ鳥が私達カラスです。
この色と鳴き声に加え雑食の習性から、ゴミを漁って散らかすからでしょうね。
ましてや巣を作りだしたら、子を守ろうとしているだけなのに危害を警戒されてか、行政様の苦情係に「カラスのやつが」と通告、たちまち巣を撤去されてしまうからたまりません。
悔しい思いを何度もしました。


ハシボソガラス

 ところが、朝早く向いのシスター方が聖堂で祈っていても、私達ハシボソガラス特有のガァーガァーと何度も何度も叫んでも、低空飛行で枝を運び続けて厄介鳥のはずなのに、私たちを窓越しに眺めるまなざしにあったかいものを感じたのです。

後日、そのワケを聞いて納得です、聖ベネディクトとカラスの話は最後に書きましょう。
思い返すこと4月、妻が出来上がった巣が気に入らず、シスターにやきもきさせた事、ネットでカラスの生態を調べ、雨の日も夜もひたすら孵化する日まで妻だけが抱卵し続ける姿に同情してくれた事を忘れません。
ぜひこの気持ちを伝えたかったのです。


 そして、周りの木々の葉が緑になりご昇天を迎えた頃には、雛が大きくなり餌運びが大変でした。
しかし、5月28日早朝、突然一瞬のうちに子供達が襲われ奪われてしまいました。
どうすることもできませんでした。

 

 カラスが登場する奇蹟の話はこうです。
イタリアのヌルシア、スビアコでの事、自ら望んで岩山の洞穴で独居生活をしていた聖ベネディクトの名声が広まったのを妬み、無き者にしようと暗殺計画が何度か持ち上がります。
悪魔のいざないが近くに住む一司祭の心の中を支配し、毒入りパンを洞穴にいる聖人に届けますが、この策略を神の力で知った聖人はこの毒入りパンを一羽のカラスに命じて遠くへ捨てさせたことによって、一命を取り留めます。
なんと、カラスは聖ベネディクトのいのちの恩人だったのです。    (文責Sr.マルタ 上田)

 

毒入りのパンの話は、「中世思想」原典集成5対話第2巻第8章460頁に掲載 平凡社 引用
聖書にカラスが登場:列王記17章2節「数羽のカラスがエリヤに、朝パンと肉を運んでいた。」

 


写真は坂口昂吉著「聖ベネディクトゥス」南窓社表紙