尾張瀬戸・岩巣山登山
09.7.19 瀬戸市岩屋町


東海地方は鬱陶しい日が続き蝉が鳴いたかと思うと、直ぐに天気が崩れ梅雨明けが来ない。

政界も、すっかり国民の関心は政権の行方 ”日本の夜明け”は果たして来るのか・・・


先月から週末には山に出かけていて、今日は焼物で有名な瀬戸市の東北にある

岩巣山へ、曇天の中、雨具持参で覚悟のうえの山登りに出かけた。


瀬戸市品野に流れる鳥原川の渓流を遡ると、紅葉で有名な「岩屋堂公園」がある。

そちらに車を留めて登山が始まる。 家を9時過ぎに出て一時間ほどで到着したが

駐車場はかなり埋まっていた。 紅葉の時期でもないので空いていると思っていたが、

こちらでは夏場市民プールが開かれていて、その来場者が午前中から押しかけている。




渓流横の駐車場

プールを横目に見て渓流沿いに進むと、左手の店屋横に赤い字の

「岩屋堂入口」の看板があり、あまりにも古ぼけ薄れかかった文字の為

危うく通りすぎるところ、気が付いて、その細い路地へ入って行く。

やはり登山口らしく、木も茂り野良の感じがする小道が続いている。



登山道

登って行くと、直ぐに薬師岩屋堂が見えた。  大きな岩が上に乗っかり洞窟を造っている。

岩屋堂の中は薄暗く、昨夜降った雨で、じめじめしていて仏像らしきものが祀ってある。

こちらには、今日の登山の無事安全の願いをかける。


岩屋堂は奈良時代の725年、名僧行基がこちらに草庵を結び、聖武天皇の病気平穏を

願い三体の仏像を彫り、これを安置して岩屋山薬師堂と称し天台宗に属していたと言う。

しかし、1430年に瀬戸市・雲興寺の二世天先祖命禅師がこの下に浄源寺と言う

曹洞宗の寺を開山建立して現在は、その奥の院となっている。




岩屋堂






岩窟内

岩屋堂の左には「暁明ヶ滝」の案内があり、登山の前に滝を見物する。

滝と言うのは大方、木々の茂みに囲まれ薄暗いところが多いが、こちらも御多分に漏れず

今日の曇りで、更に暗く、湿った涼しい空気が漂っている。 




滝の入り口





暗い滝

早々に引き上げて山登りに移る。 岩屋堂の右脇を進むと、赤い華奢な鳥居が幾重にも重なって続く。

その先は竹薮になって山道らしい所を抜けると、すぐに急斜面が待ち構えていた。

登山道は険しく岩の多い上り道である。 この様子じゃペースを落とさないとスタミナがもたない。


早々、焦る気持ちをセーブしながら一歩一歩踏みしめて登る。 上るほどに傾斜がきつく感じられ、

本格的な山に来ている様で、低山でもこんな岩場に囲まれた厳しい山もあるものだと、驚かされる。

やはり自然はなめて掛かると恐ろしいものがある。 山岳信仰が起きたのもそういった意外な恐ろしさから

生まれてきたのであろう。 それでも、最近、山登りが続いている為か、身体も慣らされペース掴みも

巧くなって来た様で、自分ながら満足感を味わい足元を確かめながら歩を進める。


今日は雨の心配のある梅雨の季節、登山者は少なく余程の物好きか何かのこだわりを

持った人ぐらいで人影は見かけない。 そんなことを考えながら途中、地獄岩、砦岩、松茸岩など、

奇岩怪石があるそうだが、有るにはあるが、どれがどの岩かは皆目見当がつかない。


変わった大きな岩があることは確かである。 それよりも落下しないものかと、その方が気に掛かる。

一時間ほどかかって、漸く展望台へたどり着く。  そこは、未だ木の香が残る木造の展望台で

二人連れの男女が盛んに写真機を持ち盛んに撮っていた。 写真に趣味を持つお二人の様だ。

 我々が展望台に上ると、” ごゆっくり ”と、気を使ってくれたのか早々に去って行った。

  お陰でベンチで、ゆっくりと寛ぎ、少し早いが昼食もとった。



大きい岩のある登山道

展望台からは真下に岩屋堂のプールが青く、くっきりと見え、その先に東海環状道が斜めに走り

遠景は、すっかり曇り展望がきかない。



左隅に岩屋堂の市民プールが見える。





東海環状道の上の町は瀬戸市品野の街、その先は名古屋市。


一息入れて、ここからはアップダウンのある尾根づたいの道を辿る。

道は東海自然道で両脇、熊笹の生えた雑木林を進んでいくと、下り降りたところに

小さな渓流が流れ丸太を組んだ木橋を渡る。 孫たちが流れを覗き込み盛んに沢蟹を探すが

見つからなかったのか、ぶつぶつ言いながら、追っかけてきた。


道は右へ曲がり沢に沿って進む。 蚊やハエが汗の匂いに誘われてか顔に鬱陶しく接近する。

昨夜の雨で道はぬかり水浸しの部分も目立つ、側溝がないため水が道に流れ込み、

笹の中に足を踏み入れ水を避けて通る。 やけに水が多いと思いきや、その先には

道際に湧水が出ていた。 昨夜の雨水と一緒になり、流れが溢れているのだ。


折角の湧き水、口を潤し手を溜りに浸けると、冷たく涼しい。 

暫く、両手を浸けていると身体の汗まで引きそうな気持ちよさ。

孫たちも、真似をして手を浸ける。   気持ちいいね〜!!


湧水で生気を得て、さらに先へと進む。 やがて視界が開け花崗岩の風化した斜面が

現れ、今回のコースの一番高い元岩巣山のピークも近いようだ。



木がなくなり視界の開けた岩の風化した禿山





木造階段の登り道


木材で作られた階段の道を上り、更に林を進んで行くと、ベンチが見えた。

標識があり、右手に入って行くと展望が広がり砂礫化した肌を見せた元岩巣山であった。

コンクリートの三角点が埋め込まれていた。 こちらが今回の尾根づたいの海抜最高地点だ。



元岩巣山の三角点 499m


頂上に到着して、兄孫が疲れた足を癒そうとしたのか、靴を脱いだ瞬間、靴は山のスロープを

転げ落ち、花崗岩の風化した砂礫が潤滑剤となって、あっと言う間にドンドン落ちて行く。

皆が あ!、あ!、あ! と声をあげるが靴は一向に止まらず、やっと、木のある所で止まる。


さて兄孫はどうするのか? と見ていると、片足に靴を履いたまま、坂を下り掛けるが

砂礫で滑って、途方にくれ、母親からは、気を付けないからでしょう! と叱られ、

八方塞がりのご様子。 ここらで、お爺ちゃんの出番とばかり、孫に向かって 

” 滑るから裸足になって、木の生えている所を下りて、次は真横に靴の位置に進め!” と号令!


兄孫は躊躇していたが、再度、声を掛けると、覚悟を決めたのか、靴下を脱いで下り始めた。

やはり素足で滑らないことが感覚的に解ったのか、木のあるところを下って行く、次で横に

移動をして靴をゲット。 自信がついたのか帰りは、靴を片手に砂礫の斜面を真直ぐに登って来た。


  孫はアフリカのマサイ族の様に足で大地を掴む原人の感覚を感じたのであろうか?

孫が上がってきた時、” アフリカ人は裸足の人もいるんだよ” と言うと、孫は頷いていた。

その間、息子は何もかも承知の上か、こちらに負かせっきり、こちらを見てにやり。



靴を片手に砂礫の斜面を登る孫


一件落着、後は展望を楽しむ。 西北には、これから登る岩巣山の峰が見え

こちらからは左に回り込む尾根道を辿って行くことになる。

西方は残念ながら霞んで街は見えない。 

秋から冬に掛けては御嶽山や伊吹山がよく展望出来るそうだが。



元岩巣山より西北に見る岩巣山480m






西方の眺め





東北にあたる岐阜との県境にある三国山の鉄塔群





西南方向、名古屋市街





南東、猿投山方向


元岩巣山の後は、また尾根を下り最後の岩巣山へと進む。

間もなく分疑点に到着。 「定光寺・白岩」の標識があり真直ぐ白岩の方へ進む。

なだらかな上り下りを繰り返す自然道を進むが、一向に道は左へは曲がらず、どうやら間違ったようだ。

地図を取り出して見ると、何と定光寺方向に行くのが正解で、折角の行程を無駄にする。

今来た道を戻り、漸く分疑点まで来て、定光寺方面へと自然道を外れて尾根道に入る。



元岩巣山よりの下り自然道

明るい林の登山道を登って行くと、今日の最後のピーク岩巣山に到着する。

こちらは標識が設置されていて、何故か高い方の元岩巣山の方には

標識がないのが、どうした理由なのか気に掛かる。



岩巣山への登り道





  
岩巣山480mの標識

見晴らしの方も元岩巣山に比べて展望も少なく頂上らしくない頂上である。

孫たちも興味が今ひとつなのか、早々に下りようと仰る。




岩巣山480mより望む元岩巣山499m


帰り道は往路と違って、やはり楽である。 どんどん孫たちは先を急ぐ。

暫く行くと砂礫のある下りで、孫が足を滑らせ尻餅をする。 

つま先に重心をかけて歩きなさいとアドバイスすると、皆がへっぴり腰で歩く姿に大笑い。


その後、何を思ったのか、兄孫が何ごとか独り言をぶつぶつと言って歩く。

何事かと、聞いて見ると、夏休みに伊那の山へ二泊三日の屋外実習に行くと言う。

その際、グループの代表として発表する内容を練習していると言う。

山に着て思い出したので、こちらでマスターしていくそうだ。


こちらは疲れて、そんな余裕はないが、子供は回復が早いのに驚く。

よいことだが、他事を考えながら歩いていると、危ないからと注意すると、

先ほど転んで感じているのか、つぶやきの声は聞こえなくなった。


往きに休んだ展望台に着き、これから足場の悪い急斜面の岩場を下りるようになり

左のひざが痛み出した。 これはヤバイと身体を横にし、左足の屈伸を避け

左足から下ろしながら何とか騙しだまし岩屋堂までたどり着く。 汗びっしょりになる。


息子の嫁がプールの前に氷屋があったと言うので、それではと、その氷屋に

かけ込み、掻き氷を注文する。 何年ぶりかの掻き氷である。


最近は、これほどの汗を掻くことは少なく、カキ氷も縁遠くなったが、

やはり、汗をかくと身体が要求するようだ。  万歩計を見ると22700歩と出ていた。


一杯の掻き氷に、皆んな疲れを忘れ、今日の山登りを終えた。

車で帰途に着く頃には、本格的な雨となっていた。 


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