歴史散歩 尾張・定光寺
10.1.17


瀬戸市の北部、多治見市に近い丘陵に尾張徳川家の菩提寺・定光寺がある。

中央線の小さな駅「定光寺」で降り中央線沿いに流れる庄内川を渡り205号線の

坂道を定光寺川に沿い1km程上って行くと左手に風変わりな八接ぎの擬宝珠の石橋がある。

こちらが定光寺の入り口で、これより本堂までは165段の階段を登るとの案内がされている。

運動には丁度、手ごろの段数で、えらくもなく途中に祀られた石仏を見ながら木に覆われた参道を

登って行くと山門が見える。 山門には金文字で「臨済宗妙心寺派」の表札が古い山門に光っている。



定光寺入り口の石橋

この橋は尾張藩、2代目藩主の徳川光友が献納したと言われる。




165段の参道





山門

定光寺は1336年に臨済宗建長寺派の寺院として覚源禅師が開山したが、1649年に妙心寺派寺院として

再興 され、本堂は創建当時の姿をとどめており国の重要文化財に指定されている。 本尊は延命地蔵菩薩

が祀られ、尾張藩始祖・徳川義直の菩提寺ともなっている。 徳川義直公は練武のため瀬戸の水野に

よく狩猟で訪れ、こちらに立ち寄た際、ここを自らの廟所と決めたと伝えられている。



本堂、重文

本堂(仏殿)は桧皮葺で尾州家20代・徳川義知の扁額「無為殿」が掛かり

大きくはないが、屋根が空に向け反り上がり重文に相応しい姿である。

本堂の右手には、珍しい銅葺き屋根に海鼠壁の門がある。 源敬公廟所とあり

徳川義直の贈り名を付した廟所への入口である。 石畳の道が右手に続き

その先に「獅子の門」がある。 門ではあるが文化財保存の為、上に更に

門を覆いかくし、残念ながら外見は無愛想なものとなっている。

廟所は本堂と同じく国の重要文化財である。



源敬公廟所門




獅子の門

獅子の門を抜けて更に進むと石畳は左に折れ、木漏れ日の中に青銅で葺かれた

中国風の門がある。 門には同じ様に青銅屋根の築地塀が繋がり廟所を囲んでいる。

門はやはり保存の為、覆いが被り部分的にガラス張りで中身が見える様になっている。

扉には左甚五郎の作と言われる獅子の彫刻が黒漆の枠に囲まれガラス越しに見える。



龍の門





龍の門

竜の門を潜ると正面に焼香殿があるが、同じ様に覆いが被っている。

中を覗くと、がらんとして焼香台がぽつりと見えるだけである。

その背後に唐門があり、中に尾張徳川家始祖・義直公の円形墳丘の

土盛の上に墓石が立っている。 その東には殉死者の墓石が並んでいる。

この廟所は義直に仕えた中国の文人(明の帰化人)陳元贇が設計した

儒教式の廟建築で、義直が亡くなった翌年の1651年に建てられた。

韓国でも朝鮮時代は儒教の国であった為、偉人の廟所でよく見かける形である。



ガラス越に見る左甚五郎の彫刻





葵紋のある墓所・唐門 背後に石標あり





義直公・墓石 丸い盛土の上に墓石が立つ





殉死者の墓


徳川義直公略歴

義直は1600年徳川家康の九男として側室・亀を母として大阪城・西の丸で生まれる。

幼名を五郎太と呼び、生母・亀(相応院)と共に駿府で育ち1603年には甲斐25万石の

城主に封ぜられるが入国はせず甲斐には城代を置き、家康や母・お亀の方と共に駿府

 に住む。1607年には兄・松平忠吉(家康の四男)が病死のため清洲城の城主となる。

1609年、家康により名古屋城が築城されると清洲は防衛上名古屋へと遷府がされ

1610年、義直は初代尾張・名古屋城主となるが、未だ幼少の為、犬山城主であった

家老の平岩親吉や竹腰正信等に政務を任し、実際に任についたのは大阪冬の陣に

15歳の初陣を飾り、翌年、夏の陣にも参戦してからのことで、尾張・美濃・信州の60

万石を領する城主となる。その後、尾張藩の基礎を固め私的な面でも文武両道に優れ

儒学と神道に傾注し儒学を堀杏庵に学び、神道研究家の伯父の徳川光圀を心酔して

光圀に習い歴史書「類聚日本記」を著し、その他の著書と共に家康の蔵書の3分の1

を引継ぎ「蓬左文庫」として残している。 又、思想的には「尊王思想」に徹し尾張の行政

への影響は大きく幕末の大政奉還時、尾張藩主・徳川慶勝は新政府派と佐幕派の対立の

中、藩内の反対を押し切り、多くの藩を新政府派に導いたのも義直の尊王思想の影響と

も言われている。 また、武術では柳生利厳から新陰流兵法を学び相伝を受けている。

家康の子としての自覚も強く尾張藩を治め、現在の東海地区を築きあげた名君として

名を残しているが、尾張より将軍が一人も出せなかったのも義直公が将軍・家光との

 対立が尾を引き尾張藩の将軍家への姿勢が一因との見方もある。


義直公 1650年、享年51歳で没す。


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