木曽・駒ケ岳
13.8.15


 盆休みの15日、息子と木曽・駒ヶ岳に出かけた。 駒ヶ岳は名古屋より一番手軽に行ける3千メートル級の山である。

名古屋からは高速道路のみで行くことができる。 夜明け前に起きて3時に出発する。 と言うのも、盆休みはロープ

ウエィの混雑が予想され、折角、行ってもロープウエィで一時間半も待たされるのでは興味が半減するからである。

家を出て、第二環状経由で名神に乗り継ぎ夜の中央自動車道を走る。 多治見から瑞浪と美濃を過ぎ、恵那市を

ぬけると、もう中津川である。昔であれば中仙道での山越えであるが、今は恵那山をトンネルでぬけると言う便利

な世になったものである。 トンネルを出て道を下ると、そこはもう信濃・飯田で、微かに姿を見せる南アルプスの

伊那谷を眺めて走ると駒ヶ根I..Cに到着。 インターを降りて、山に向け2・3分走って菅の台バスセンターに着いた。


丁度、時計は午前4時半、既に大勢の登山客がバス停に並んでいた。 夫々各地から夜掛けで走って来たので

あろう。 中には座り込んで居眠りの客もいる。 早速、駒ケ岳・千畳敷までのチケット(往復3800円)を買って

乗車の列に加わる。 客が大勢の為、” 臨時バスが直ぐ参ります”と増発のアナウンスがある。 ロープウエィ

の始発が6時なので、それを目標に皆さんバスを待っているようだ。 日帰りで駒ケ岳頂上を巡って帰る登山客

が多いそうだ。 中にはサンダル履きの若い女性も見かける。 5時の始発のバスが入って来た。 堂にか乗り

込んで、これからロープウエィ駅には約30分程で到着するとの案内があった。 



狭いバス登山道

道路は渓谷に沿って登り車一台が通れる程の道路幅でS字カーブが続く。 左カーブの時は山側で心配しないが、

右カーブの時は運転台が渓谷に飛び出しながら廻って行くので、実にスリリングな運転である。 こちらは冷や冷や

するが、運転手の顔を見ると、落ちつき払っているので安心する。 途中、下りの車と出会うが、要所には対向可能な

道幅が確保され、上り優先で、下り車がバックして譲ってくれる。 巧みな運転と深い谷を眺めている間に、

ロープウエィの「しらび平駅」に無事到着する。 先ずは一安心。



登山客で賑わう「しらび平駅」標高1661m

バスから吐き出された登山客は、ロープウエィへと流れ、6時発のゴンドラに乗り込む。

定員は61名でバス一台を飲み込んでしまう。 しかし、立ちんぼで、ぎっしりの状態、真ん中

ともなれば、人影で外の景色は見られない混雑ぶりである。 幸いこちらは押し込まれて反対

側ドア−に張り付き外を眺められた。 ロープウエィは中央アルプス・宝剣岳(標高2,931m)の直下

「千畳敷カール」まで2333mが架けられ 山は針葉樹のシラビソに覆われ、中には白骨化した

枯れ木がかなり多いのが気になる。 眼下には急勾配の渓流も流れ2・30mの滝も落ちている。

7分余りで標高差950mを一気に駆け登り、千畳敷駅に到着する。 寒暖計が15度をさしている。



山一面を覆うシラビソの原生林


千畳敷駅の寒暖計が15度を指している。

辺りは、すっかり夜が明けて明るくなり、山々が朝日に栄え、遠くの山は霧でぼんやりと、近くの山は、しっとりと姿を

見せて清々しい朝である。 千畳敷は古代氷河が流れて浸食により岩盤が削られて出来たカール(半円形の窪地)

で、広さを例えて「千畳敷カール」と呼んだそうだ。 中央アルプスを背に池や花々が咲き、変化に富んだ素晴らしい

景観で我々を迎えてくれる。



千畳敷駅舎とホテル千畳敷




西方の霞む山々



朝の中央アルプス連邦




宝剣岳標識

まずカールの散策道を伝って駒ケ岳神社の祠に出る。まず身の安全をお願いしてスタートする。

間もなく、ガレ場に入り、駒ヶ岳への登山道に入る。 山々は緑の柔かな裾野を広げるが、上部は

鋭い岩肌をあらわし対象的な姿を見せる。 まだ秋の感じは少しも見せないが、空を見ると、雲が高く

秋は始まった様だ。


駒ケ岳神社




登山道標識

ロープの張られたガレ場を更に進む。 ロープ外の緑地カールには、一面に可憐な

高山植物が咲き乱れて、登山者の眼を和ましてくれる。 コバイケイソウやチングルマ

黄色で長野県には多いと言われるシナノキンバイ等々・・!



高山植物チングルマ




白花のコバイケイソウ、黄色はシナノキンバイ

可憐な花や、千畳敷カールのシンボルとも言われる宝剣岳を眺め歩いていると、何時も間にか

ロープウエーの山頂駅は遠くになっている。 



登山道




山頂駅

やがて八丁坂分疑点に到着。 此処からはすっかり風景が変わり急勾配の岩と石のガレ場の蓮続である。

今日の目標はこの先に広がる展望台の「乗越浄土」標高2850mである。 この展望台から駒ケ岳、宝剣岳、中岳

へと繋がっている。 歳柄も考え、ゆっくり一歩一歩足場を確認し踏みしめながら登る。 前からは降りてくる人もあり

狭い登山道では、すれ違うのも大変だ。 更に後ろの人にも自分のペースが遅い為、道を譲り、息も上がって頭が

ふらつき出した。 こんな筈はないと思うが、どうしようもない。 睡眠不足で家を出て、車とロープウエィで一挙に

標高2600mを越える高地で急登をすれば無理もない。 以前、スイスで体験した酸欠症状と同じだ。 やはり

容易く登ると、やはり付けが廻ってくると言うものだ。 こうなれば登山者の邪魔をしない様、岩場を探し、暫し

休憩とする。 2600mでの酸素濃度は72%程度で、歳を考えれば、やはり順応のために半日程度は身体を

慣らしていく必要がある様だ。 子供達にギブアップを告げ、こちらで待機することにする。 暫く身体を休め

ていると、呼吸も納まり周囲の景色も見る余裕が出てきた。 



登山道を進むハイカー達

すると若い男女の2人連れが、下りて来た。 ”もう登られたのですか?” と尋ねると、

男性が女性の足元をを指差し、”これでは登れませんわ!” と、おっしゃる。 

見ると素足にサンダルである。 ” 山に来るのにこれではね〜 ” と軽蔑の言葉。

男性は余程登れなかったことが残念だったようだ。



宝剣岳

身体の調子もよくなって来たので、ぶらぶらと、高度を上げて周囲を散策する。 やっぱり

山は美しいし、計り知れない力を持っている。 宝剣岳の頂上を眺めていると、微かに動く

ものが見え、よく見ると登山者であった。 あ〜アと溜息が出る。 うらやましいな〜先ほどの男性

と同じ気持ちである。 そんなことを思いながら、一時間ほどすると子供達が下りて来た。乗越浄土

 まで行って来たの?と聞くと、いや途中で下りて来たと言う。 きっと、息子は、こちらを待たすのを

憚ったのだろうと思うと、申し訳ない気持ちだった・・・ 



山を楽しむ登山者たち




宝剣岳











宝剣岳頂上 2931m 人が見える。

下りは子供達と一緒に、身体も環境に慣れたのか楽々と下りる事が出来た。 時間はまだ昼前であるが、

ロープウエィの混雑を避けるため、時間はまだ早いが下りる事にする。 お陰で帰りのゴンドラは、がら空きで

貸しきり状態で下りることが出来た。 後はバスで往きと同じルートで菅の台バスセンターまで下り、こちらの

「駒ケ根ファーム」で休むことにする。 「駒ケ根ファーム」はこちらの特産品の直売やおみやげショップがあり、

南信ビールの味わい工房もあって、農産物の直売や地方から集まってきた民芸品などのテント販売もあり、

街興しに励んでいるようだ。 傍には赤穂渓流も流れ大きなつり橋(こまくさ橋)も架かり、対岸の森では

アウトドアー体験広場があり、クライミングウオールやザイルクライミングの体験など、が楽しめる。


息子達は、そちらへ行ったが、こちらは「駒ケ根ファーム前」のテント休憩所で、駒ヶ根牧場の牛乳で

出来たソフトクリームを食べ、ぼんやりと休憩。  すると、直ぐ横のテントで陶器の民芸品を売っていた

小父さんが、客も少なく、手持ち無沙汰か、こちらのテントにやって来た。 すると横に座り、話しかけて

来た。 ” どちらから来ましたか?” と問われる。 ” 名古屋ですわ” と答えると、 ” 私は豊川から

毎年こちらにやって来る” とおっしゃる。 豊川で焼物の植木鉢を売っているそうだが、” 夏場は暑いし

こちらは涼しいので、避暑がてらの趣味ですわ” とおっしゃる。 こちらには人形などの飾り物など

好きなものを焼いて持ってくるそうだ。 こちらの場所代が280円と安いので、車で持ってきて、車で

寝泊してお客さんとは気軽な世間話で、涼しい夏がすごせるので、もう癖になっているそうだ。

話に乗せられたのか、帰りには、家内が陶器の「地蔵菩薩」を買っていた。


ソースカツ丼の店

昼になり、駒ヶ根はソースカツ丼が有名だと言うので、トンカツは好物、早速、豚カツ屋へ

中央道を天竜川方向へ越えた街道筋の「きらく」と言う大きな駐車場のある店に入いる。

店は、まだ新しい建物で清潔にされていて感じの良い雰囲気だ。 若い女性に奥の和室

に案内される。 靴を脱ぐのが面倒だが、やっぱり脱いで見ると、歩き疲れがあるのか

気持ちよい。 店のテーブルの来歴によると、昭和3年にカツライスから始められたと

書かれ、当時、駒ヶ根は生糸の生産で栄えたらしく、土地の人たちで繁盛したそうで

この地方の元祖店のようである。 メニューを見ると、カツが専門であるが、ラーメンも

あるようだ。 こちらはソースカツ丼を貰う。 注文を受けて作るのか、暫く時間が

かかったが、揚げたてのカツ丼が出てきた。 ご飯の上に細かく切ったキャベツが

たっぷり載せられ、その上に160gのトンカツがのせられ、さっぱり味のソースたれ

が斑なくかけられている。 カツはふっくらと揚げられて癖のない味わいで、味が薄く

近頃、腎臓機能が低下して、蛋白質摂取の制限を受ける我身には、ぴったりのもの

であったが、肉の量が多く、最後は孫に応援してもらって完食とあいなる。



陣馬形山のキャンプ場 上伊那郡中川村大草1649-1

食事を済まし時間もあるので、天竜川を越え、南アルプスの西側につらなる陣馬形山からの展望が

素晴らしいと言うので行くことにする。 153号線を越えて天竜大橋を渡り210号線に入り南下して

折草峠より山へのアクセス道路を登っての約一時間の所要。 途中道が狭く、車の交替ができない

所もあり、バイクで行くのにはいいコースである。 パラボラ・アンテナの建つ頂上の下に柴の広場が

広がり、炊事施設も備えられたキャンプ場となっている。 高校生らしいグループが先生らしきリーダー

と共にキャンプをしていた。こちらの駐車場に車を留め、暫し散策。 昭和には畜産振興で牧場があった

そうだが、今は記念碑が建っている。 また陣馬形山は伊那山脈の一つで、戦国時代には展望の良い

ことから武田軍の狼煙台が置かれていたと言われ標高は1445mと言う。  キャンプ場から少し登ると

頂上である。 眼下に天竜川の流れる伊那谷が見え、西には中央アルプスの駒ケ岳や宝剣岳、空木岳

・・・東には南アルプスの北岳や仙丈岳、赤石岳などが見えるそうだが、今日は気温の上昇のためか

残念ながら霞んでいる。 頂上にはブロンズ製の展望案内図プレートがあった。



南アルプス連邦




伊那谷の風景

こちらは、晩秋ともなれば、きっとアルプスの山々には白い冠雪が見え、辺りは白樺と紅葉

に彩られ、澄み切った空気で、素晴らしい伊那谷の風景が待っているのであろう。

そんな想像をふくらませながら、木曽・駒が岳行を終える。

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