木曾の御嶽山登山その2
06.9.24
御嶽神社に参拝し、社の左手に廻ると、後に王滝のピークがあった。
その北側には、剣ヶ峰が赤茶けた火山土に覆われ、なだらかな斜面を延ばし
王滝頂上からの緩やかなスロープと繋がり、コル(鞍)を形成している。
左に流れた斜面は地獄谷へと落ちて行っている。 火山でなければ、
見られない色合で、戦時中の空襲での焼け跡が脳裏をかすめる。
王滝のピーク・標高2936m
剣ヶ峰の頂上には旭館と頂上山荘が見える。 上は晴れているが、
ここからは、周囲の山々のパノラマは雲で一向に顔を出さない。
雲の様子を見ていると、50歳を過ぎた感じの男性が、やって来て
「これから登りますか?」と訊ねられる。 「いや、身体も疲れたし、ガスが
晴れないのでどうし様か迷ってるのです。」と答えると、彼は「午前中は360度
見る事が出来ました。 富士山まで見えました。 昼から見えなくなったので
降りてきました。」と言う。 「山小屋で泊られたのですか?」と聞くと、
「いや、昨日の夜は田の原で車の中で寝て、今朝、早くから登りました、
貴方は?」 と言うので、「今朝、車で来て、登って来ました。」と言うと、
「一晩こちらで寝るだけで、身体が慣れて随分登るのが楽ですよ」 と、
教えてくれた。 別れ際、彼は「それでは頑張って下さい。」と、
エールを残し、降りていった。
こちらは、暫く粘って見たが、少し良くなるが、直ぐ又雲が流れてきて
一向に晴れず、14時になったので、諦めて降りることにする。
剣が峰・標高3067m
剣ヶ峰・左へ流れたスロープは地獄谷へ
帰りがけ、王滝小屋の右手にある奥の院の峰を見て降りる。
下り道は溶岩の上は滑らないが、溶岩の砂は一見、土の様に固まって
見えるが、表面の砂利の上に足を下ろすと、あっ、と言う間に足をすくわれる。
とても危険で、一般の山と違って注意しないといけない。
2度、足をすくわれてしまった。 以後、懲りて、溶岩伝いに、
溶岩砂利の所は避けて下りることにする。
奥の院の峰・2940m 裏側は地獄谷
九合目を過ぎ、「一口水」に来る。 こちらは岩が濡れていて、パイプからポタリと、
一滴づつ水が落ち、その下にコップが置かれている。 コップが満たされるのは
相当時間がかかりそうだ。 携帯の水が切れた人のみが飲む事が
出きる決まりの様だ。 道中、貴重な水呑場である。
紅いパイプの下にコップが置かれ、水は一滴一滴溜まる。
水飲み場を過ぎ、振り返ると山小屋がくっきりと見え、ガスがひいた様だ。
本当に山の天気はよく変わる。 間もなく8合目、帰りは休まなくても
やはり楽である。 しかし、調子に乗ると又、膝を傷める可能性もあり自重する。
ハイマツの間を縫って下りる登山者達
何時の間にか陽は西に傾き、登山者達は往きとは違い元気よく下りて行く。
下りるに従い、下の方はガスが立ちこめて霞んでいる。
霞む下界
愈々、ハイマツの世界からシラビソの植生へと移って行く。
溶岩はなくなり酸化した赤土へと変わり、この辺りは溶岩砂利とは違い
安心して歩く事ができる。 田の原が小さく見えてきた。
白く光った所が田の原
愈々、田の原の自然休養林公園域に入って行く。
これからは歩き良い砂利道に変わる。 すっかり気持にも余裕が出て来る。
左手の高い樹林を見ると、すっかり枯れ果てた「シラビソ」の樹が舎利の様に
幹をむき出しにしている。 やがて彼等は風倒木となり、いつかは朽ちて
生物の糧となり、新しい命を育むのであろう。
田の原自然休養林
シラビソの枯れ木
低木の自然休養林の先に登山口の鳥居が見えてきた。
遂に、到着!!
振り返ると、山は、すっかりガスに覆われてしまっている。
頂上では、四方の山々を見ることができず、残念印を付けて山を下りたが、
けだるい疲労感は残るが、気分はすっきり!
何時か又、登ることになろう。
背後に見えるはずの御嶽の姿はガスの中
帰り道、車窓より見た御嶽山は茜色の夕焼に青墨のシルエットを
何もなかった様に、鮮明に見せていた。
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