東 京 今 昔 4
6.3.26〜3.28
上野国立博物館
緩やかな桜並木を戻って動物園前広場に出る。
噴水の奥に茶褐色屋根のお城風の本館(重文)が見えてくる。
その右手には東洋館があり、池を挟んで左手には青銅のドーム屋根を持った
バロック風の表慶館(重文)がある。 しかし、今は工事中で中を見ることは出来ない。
構内には他に平成館(考古遺物)法隆寺宝物館、資料館、黒門(重文)などもある。
国立博物館本館
先ず東洋館より見ることとする。
こちらには中国、朝鮮半島、東南アシア、西域、インド西アジア、エジプトなどの
美術工芸、考古遺物が展示されている。
入って、直ぐ目に入ったのは、中国、インドの仏像や仏頭である。
特にパキスタン出土のガンダーラ佛は素晴らしい。 やはり仏像はガンダーラ仏が優れている。
スタッコで出来た佛頭は古代ヘレニズムの雰囲気を持ち、実に美しい姿をしている。
佛頭パキスタン出土
1〜3世紀のガンダーラ佛に次いで6〜8世紀の唐時代の釈迦三尊像
これらはガンダーラ佛と比べると、荒削りで、素朴である。
唐代の釈迦三尊像
3室ではヘラクレスの石彫があり何処となくひなびた感じで微笑ましい。
この像は1〜2世紀にかけてイラクにて発掘されたもので、
この時代にはアテネから見ると、一地方だったのかも知れない。
ヘラクレス像
一際、変わった佛頭に見覚えがあり、考えてみれば三ヶ月前にカンボヂャで出会った
アンコールのバイヨンだった。 もはや懐かしい顔になってしまった。
バイヨンの佛頭 カンボジャ・アンコール
エジプト婦人像 BC20年
中国の考古遺物、漢時代の鼎
二階に上がると中国の南北朝からから唐代の陶磁の展示がされている。
やはり、陶磁の歴史は中国と言うだけに青磁、唐三彩から五彩の景徳鎮は
世界に先駆けていたのがよく解る。
唐三彩、官人と鎮墓獣
五彩景徳鎮 17−18世紀清代
東洋館を出て、本館(日本ギャラリー)に入る。
1階は彫刻、陶磁、刀剣等の分野別に纏めた作品の展示がなされ、
2階は時系列の縄文から江戸までの日本美術の陳列となっている。
先ず時代別の二階から見る事にする。
縄文よりのスタートで、日本と言っても、未だ国の概念もない様なものだが
土器や土偶の材質は別にしてもデザインなどは現在と少しも見劣りがしない。
縄文深鉢形土器
縄文土偶
弥生銅鐸
弥生、古墳時代の銅製品になると機能的にも意匠的にも緻密さが伺われる。
しかし、当時の粗悪な工具で、これだけのものを成型したのには驚かされる。
弥生銅鉾、銅剣
古墳時代銅鏡
古墳時代 鉄盾、甲冑
飛鳥、奈良、平安の時代は仏教美術を中心に展示され、鎌倉から室町へは
日本的な美意識に基いた絵物語や和歌などを絵画化したものや
工芸品も陳列されてりる。 更に佛教について入ってきた水墨画等の
絵画や、書の領域の「墨跡」などが多く並んでいる。
安土桃山では花入、懐石の器、茶の湯、道具等が展示されている。
江戸に入ると、能衣装や歌舞伎衣装、振袖、小袖などの衣装がならんでいる。
絵画では狩野派等の障壁画や浮世を描いた浮世絵等、多岐に渡り、
江戸文化の隆盛振りが良くうかがえる。
観音菩薩像 飛鳥時代 日光菩薩 奈良時代
1階の分野別では、彫刻は仏教彫刻を中心として展示され、
次いで陶磁では伊万里、京焼の陶磁で絵付け装飾の美しい物や
茶の湯の抽象的な造形美を誇る器などが陳列されている。
刀剣のジャンルでは国宝の正宗を初めとして伯耆安綱等の名刀が並んでいる。
博物館を終り、正門の左に重要文化財である因州池田家屋敷門を見に行く。
武家屋敷の門と言えば、東大の赤門(加賀藩前田家)が有名であるが、
こちらは、その風格から「黒門」と呼ばれている。
池田家は初代光仲が家康のひ孫に当り、この上屋敷の表門は
現存する大名屋敷で唯一のものと言われる。
元は丸の内の大名小路にあったと云われるが、明治になって
東宮御所の正門として移され、昭和には博物館の構内に移された。
旧因州池田家上屋敷門(黒門)
この門は、江戸末期に建てられた物で、入母屋造りで、両潜りと唐破風の両番所を
持っていて、最も格式の高い形式と言われている。
当時、大名屋敷はその身分により、場所や構造が決められていたそうだ。
黒門のある前の道を上野駅に向うと道の左手に、上野戦争で焼け残った
上野寛永寺の本坊表門がある。 以前は博物館の正門として使用されていたが
博物館の改修により此方に移されたと云う。 門扉には上野戦争の弾痕が
今も残っていると云われるが、残念ながらフェンスがあり、確認する事はできなかった。
東京散策も上野を以って引揚げる。
この度は1冊の本から東京を訪れることになったが、来てみると
以外にも満開の桜に恵まれ、すっかり、花見旅行となってしまった。
今まで明治維新は古い時代と思っていたが、
神宮外苑、皇居、小石川、湯島、上野、・・・・と、歩いてみると、
歴史が歴史でなくなり、自分の過去の認識の様に繋がってくるのを感じた。
古きを尋ねて思うことは、「欲する心に従いて、則を越えず」と云う
論語の言葉があるが、最近の社会はモラルへの価値観が希薄になって来ている。
日本も自由にして倫理が重んぜられルールを護る国でありたいものである。
今夜もご覧頂き、有り難うございました。
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