奈良 円成寺・唐招提寺
2011.8.15


平安時代末期には武士が台頭し政治が乱れた。 民は生活に困り、平安京は治安が乱れて、世には末法思想が流れて、

希望をなくした人々は心の拠り所を現世に求めることが出来ず、浄土思想が浸透して浄土教が広まっていった。

 そんな時期、この円成寺も建立された。 美しい池を中心にした庭園に伽藍を構えた。 宇治の平等院を思わす

様な極楽浄土を表した素晴らしい景観である。 こちらの浄土は自然に溶け込んでいて、 これから秋が深るにつれ

更に、その美しさは深化を増すことであろう。  珍しくギンヤンマが、池の水面で盛んに玉子を産み付けていた。

 久しぶりの緑の目のトンボの雄姿に興奮を覚えた。 この辺りは良い昔が残り、ギンヤンマもよく環境を知っている。 


円成寺は1026年命禅上人が十一面観音を祀られたのが始まりで、1112年、迎接上人が阿弥陀如来が祀られ

1153年、仁和寺・寛遍僧正になられ寺門が広げられたが、応仁の戦火で多くの伽藍をなくした。



楼門 1468年再建、美しい檜皮葺。 重要文化財

池の脇を通り入母屋造りの楼門より山内へ入る。




阿弥陀堂(本堂) 重要文化財

本堂は1446年、再建されたものであるが、その造りは藤原時代の阿弥陀堂で寝殿造り、須弥壇は格天井に

周りは四方流化粧天井が張り巡らせた素晴らしいもの。 三方開放高御座型大型厨子に阿弥陀如来が

安置されている。 内陣中央方形に配した4本柱に描かれた菩薩来迎図は素晴らしく色を留め見ものである。

阿弥陀堂を出て多宝塔に参る。 多宝塔は最近出来たものか真新しい丹塗りの典型的な形をしている。

建物は新しいが祀られている仏像は平安時代の国宝・大日如来坐像である。

運慶が25才(1175年)の作である。



多宝塔 大日如来坐像 国宝

漆箔仕上げが剥落していて、これがまた茶色の漆地を見せ、何とも落ち着きのある尊顔を鑑賞できる。

円成寺は山の小さなスペースに配置された寺院であるが、実に見ごたえのある美しい寺であった。

名残は尽きないが、次の唐招提寺へと柳生街道をまた走る。  やがて三笠山が左手に見え東大寺

の大伽藍が山裾に大仏が座した様に見えてくる。 東大寺は何時も正面から見ていたが、反対から

見る東大寺も広がりがあって、南都に入って行く感じがする。 唐招提寺は奈良といっても西ノ京にある。

三笠山の脇を貫け県庁前を右折、平城京に向かって大通りを走る。 間もなく赤い朱雀門が見えてくる。

朱雀門前を通って三条大路5丁目を左折する。 街は平城遷都1300年祭の飾りつけはすっかり払われ、

元の奈良に戻っていた。 秋篠川に沿って南に走ると唐招提寺の大駐車場に到着。



唐招提寺

唐招提寺は759年、唐の高僧・鑑真和上によって創建された。 鑑真和上は聖武天皇の願いに

答える為、五度の渡航失敗に耐えて来日し、政府中心者への戒律を教え、その後、戒律を学ぶ

道場として当寺が創立され、律宗総本山となり今日に至っている。 和上は688年中国揚州生まれ

14歳で出家、21歳で長安実際寺の階段で弘景律師の戒律を受け、揚州大明寺で戒律を講義し長安

洛陽では戒律の一人者となっていた。



南大門を潜ると、正面に金堂がある。 横に広がりを見せた美しい屋根をもった天平建築である。

堂内は、本尊・盧舎那仏坐像が中央に、右に薬師如来立像、左に千手観音立像の

国宝三尊像が並び圧巻である。 須彌壇4隅には四天王立像が守護し、脇士には梵天、帝釈天

が従い、連子窓からの柔らかな光に栄え、天平が迫って来る。



金堂 国宝

金堂の背後は講堂がある。 この建物は平城宮の東朝集殿で朝廷より賜り講堂として

移築したもので平城宮唯一の宮殿建築で国宝に指定されているもの。 他に国宝は

鼓楼、経蔵、宝蔵などがあり、境内一番奥に和上御影堂がある。



鑑真和上 御影堂

堂内の公開日は6月のみで、東山魁夷の襖絵のある部屋も残念ながら見れなかった。

後は御影堂の右手奥に離れた林域にある鑑真和上廟所へ参る。



廟所への静かな佇まいの参道





鑑真和上御廟所 中央塔が墓

墓の前に立つと、、鑑真和上が6度も危険な航海に何故、挑んだのか、それ程

日本に惹かれたものは何だったのか? ?

謎は残るが、鑑真和上が日本に骨を埋めるまでの思いに、頭が下がる。

何れにしても、往時の日本人は今と違い熱意が大勢だったのであろう。


   
戒壇前蓮池                                        戒壇 多くの人が僧となるため授戎した場所


唐招提寺拝観後、西大寺に向かうが、駐車場の小父さんが、申し訳なさそうに、”今日は終わりました” 

との言葉に、駐車場でユーターンをさせて貰い、終わることにする。


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