京都・西山々麓界隈の秋
08.12.2
 京都府大山崎町銭原5-3


京都、西南の西山連峰の麓は平安遷都の直前、長岡京のあった地域で古寺や古墳が点在し

今日は、その内の2寺と天王山の美術館を訪ねた。


訪問先

大山崎山荘美術館、宝積寺、西山・光明寺勝持寺花の寺)



大山崎山荘美術館

  
  
大山崎山荘美術館はアサヒ・ビール社の美術館であるが、以前は関西の実業家、

  加賀正太郎の別荘であった。その後、手を離れ放置されていたが、地もとの住民を

  初めとする人たちから保存要請の声が上がり、京都府の斡旋で、アサヒ・ビールが

  修復整備を行い、又、新規に新館を増設して、1996年に美術館として発足された。

  その後、建物の文化的価値が認められ、2004年には国の有形文化財として登録
 
  された。 新館は絵画が展示され、旧館には河井寛次郎や浜田庄司などの陶磁器や

  染色などの作品が展示されている。


国鉄・山崎駅の近く天王山の南麓にある大山崎山荘美術館は周囲を森に囲まれた恵まれた位置にある。。

天王山は織田信長死後、秀吉と明智光秀とが戦った山崎合戦のあった場所で城址も残る。

美術館は山崎駅の直ぐ北にある踏切を渡ると、天王山登り口」と彫られた石碑が見える。その横に

美術館の案内も出ていて、真直ぐに天王山に向って急な坂がつづく。 洒落た手すりの歩道を登って行くと

丁寧に、また、案内板があり、そこからが長い如何にも大邸宅へのアプローチと思われる通路を

進むとコンクリートのトンネルの様なゲートがあり、正面に大山崎の名前が彫られていて10分ほどで着いた。

トンネルを抜けると、明るくなり、そこは、眼も疑う紅葉がいっぱい朝日にはえてアプローチが続く。 



洒落た手すりの歩道





アーチを抜ける





アプローチがつづく



  
     
美術館へのアプローチ。               道脇には寂びた灯篭などが置かれ来訪を迎えてくれる。





竹薮等もあり変化に富んだアプローチは、やがて、木立奥に美術館が見える。 

見るからに古きよき時代の建物と分かる佇まいである。 心臓がときめき不整脈が・・・

 やはり興奮しているのだ。 少し気持ちを落ち着けて>
 

この建物は加賀正太郎が若い時、ヨーロッパに遊学し、英国のウインザー城からのテムズの眺め

に模し木津、宇治、桂の三川の合流するここ大山崎に、大正初期に山荘を建て昭和に更に増築された。

当時、夏目漱石に山荘の命名をしてもらったが、それを使わなかったと言う逸話があるそうだ。



紅葉の後の竹薮






美術館・正面








玄関は山荘と呼ばれるだけに、木製の重厚なドアーがあり、古き老舗のカフェの構えである。

中へ入ると、結構、人が多いのに驚く。 イギリスやドイツに見るチュ―ダ―方式の美しい木造の

柱梁構造で造られていて、施主本人が設計を手掛けたと言うだけに彫刻やシャンデリヤなどに

上品でセンスのよさが見え、西欧文明をを心得ているようで、何とも気分が落ち着く。 

受付ホールの奥には展示室があり、アサヒ・ビール初代社長・山本為三郎の収集したコレクションが

展示されている。 主に柳宗悦の提唱したながれを汲む河井寛次郎の民芸風の素朴な陶磁器の作品を

中心に益子焼の浜田庄司、バーナードリーチ等の作品に、中国、李朝の古陶磁などもある。



展示室

奥の展示室には、シリアのパルミラ遺跡より掘り出されたとされる石棺の上に飾られる彫像や

オランダ・デルフトの壷、フランスのガレのアール・ヌーボー風の花瓶が

日当たりのよい空間に飾られていた。



奥の展示室・パルミラの彫像


2階への階段踊り場には洒落たヨーロッパ風のステンド・グラスがはめられ、手作りの

ガラスらしく外の景色が揺らいで見える。 2階はミュージアム・ショップと喫茶室があり

テラスもオープン・カフェに利用され、こちらより見える展望は、建設当時は建物も少なく

素晴らしかったであろうが、今でも木津川・宇治川・桂川を含めた展望は気持ちがよい。



テラスより見る宝積寺の三重塔

山荘の工事中、夏目漱石がこちらに訪れた時、こんな句を残していったと言う。

” 宝寺の 隣に住んで 桜哉 ”



一階・アーチ型柱のテラス

アーチ型の角柱にイスラム風の細い柱をくっ付けて、世界を見聞したして来た

加賀氏のこだわりが見えてくる。



外部より見るテラス、凝った外灯がユニーク






テラスより見える日本庭園






テラスより見る白雲楼

白雲楼は建築主の加賀が1911年最初に建てた塔屋で、この上から

山荘工事の指揮をしたと言われ、力の入れ具合が伝わってくる。 


本館を見て、新館へと進む。 両側コンクリートの壁に、はさまれた階段を下りて行くと

地下のギャラリーに着く。 入ると、直ぐ正面にピカソの青の時代と言われる「肘をつく女」が

青白い顔で物思いにふけっている表情をみせる。


新館は円形の展示場で安藤忠雄氏が設計されたもので、入ってみると、

オランジュリー美術館を真似たような、一周して見える様になっていた。

オランジュリーと同じ様に「睡蓮の連作」の一部が懸けられていた。

ジュベルニーの池の睡蓮、春の水が萌え立つ様な空気と縦使いのタッチ。

しかし、証明が暗くてモネの色が鮮明に見えないのが残念であった。

願わくば自然光で見たいものである。 皆さんはどう感じたか?

他に、ノルマンディーの海岸の黄色い絵もあった。

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円形のギャラリーの中心には円柱に囲まれた吹き抜けの小さな部屋があり上から自然光が

はいり、大聖堂をイメージする様な空間に、ルオ―の描いた太いタッチの「キリストの顔」

やはり、この空間を大聖堂に見立てたのではと、思った。



本館より新館への通路、これより地下へ


新館を出て庭内を散策。 陽に照らされた紅葉は艶やかにはえ、

天気は快晴。 実に気分爽快!


加賀が山荘の名前を「悠々居」とつけ、庭は和と洋とあるが、和の灯篭の傍に

オブジェの様な彫石を置いたりして、その境が目立たず緩やかに変って行く。 

この辺りは西欧のよさを消化した彼の素晴らしい感性でもあろう。

この地で閑雅な自適の生活を送った様が髣髴とされる。




本館・庭園





琵琶の池





本館前・庭園





同、 木の根もとの散りもみじが又、情緒をそそる。





オブジェの様





本館前芝生広場





芝生広場のウサギ像、バリー・フラナガン作






蘭栽培の温室、加賀氏は洋蘭の栽培・研究にも没頭し蘭花譜を残している。





庭より見る宝積寺三重塔の相輪


三重塔の相輪だけではと、宝積寺も見ることにする。 

美術館を出て坂道を登ると、丁度、裏側にあった。

   つづく   HOME