シ リ ー ズ − 【 美 術 と 岩 内 】

 

  美術と岩内(1)  
 
 
 

 岩内の三代目運上屋加賀屋を引き継ぎ、仙北屋佐藤仁左衛門が岩内場所請負人となったのは、 1823 (文政 6 )年でした。のちに二代目佐藤仁左右衛門が相続し場所請負人制の廃止される 1869 (明治 2 )年までの 46 年間を仙北屋の初代と二代目が岩内の開発に努めたのです。

 場所経営をするかたわら仙北屋佐藤は書画・骨董に趣味を持ち珍品・高名な美術家の作品を蒐集しました。 4 冊あるといわれる『佐藤仁左右衛門・所蔵目録』の一冊だけでも、屏風 116 双、軸物 492 幅、文庫等が記されています。所蔵品の一部をあげるだけでも、松前波響の書、蠣崎波響の『葛ノ花雄鶴、茨ノ花雌鶴』をはじめ、唐画、明画、巨勢金岡『十二天ノ画』、狩野探幽斉『芙蓉枝二鳥』、池野大雅堂『龍ノ画』『竹二虎』、円山応拳『金魚ノ図』、長谷川等伯『鷹ノ画』、英一蝶『狐釣之図』、梅北友松『岩下暦日之図』、山口雪渓『布袋ノ図』、大徳寺一休『鹿自画賛』、池坊専定『山水画』、谷文晁『松竹梅二鶴三羽』、また岩佐又兵衛の極粉画『猿楽ノ図』などが収められています。二代目仁左衛門は 1865 (明治 2 )年、職務を退いてから、家財を整理し生活の糧にしていきました。しかし、財産を売り尽くすと仮寓での生活をつづけ 1906 (明治 39 )年、 82 歳でひっそりと人生を終えたのでした。

 運上屋時代の豪勢な生活と人知れず晩年を送った人生はひとの世の悲哀をにじみうかばせます。


(R.M)