No.34 /2006.6
他館レポート
「ギョレメ・オープン・ミュージアム」


  2005 年 5 月 18 日、トルコ共和国「ギョレメ・オープン・ミュージアム」を訪ねました。キノコ型、尖塔型など奇岩が多いカッパドキアのこの地一帯にはキリスト教徒の洞窟教会や地下都市の遺構が数多く残り、 1985 年世界自然遺産、文化遺産に登録されました。
 私はこの日首都アンカラから 220km の行程を約 4 時間程、バスにゆられカッパドキアに到着しました。この地のギョレメ渓谷は紀元前よりヒッタイト王国の東西貿易の拠点として繁栄しておりました。 3 世紀後年になるとローマ帝国の支配下となりキリスト教徒が弾圧されました。 4 世紀頃より彼らは迫害を逃れる為、岩山を掘って礼拝堂や洞窟住居などを作り隠れ住みました。 7 世紀から 13 世紀にはビザンティン帝国による聖像破壊や、イスラム教徒によるキリスト教徒迫害が続き、各地よりギョレメ渓谷に逃げ込むキリスト教徒の数も多くなり、この地の洞窟住居や教会・修道院等がふえました。地下都市も形成されて来ました。
 現在、これらの遺跡が「ギョレメ屋外美術館」として公開されております。 11 〜 12 世紀頃のものが多く、ユランル・キリセ、エルマルキリセ、チャクルキリセなど礼拝堂や修道院跡など 30 余りが残っております。なかでも「暗闇の教会」は光があまり射し込まない為、フレスコ画の退色も少なく 4 本の柱と 6 つの小ドームで構成され、壁面や天上には“聖母マリア”“キリストの誕生”“最後の晩餐”“天使とキリスト”“ユダの裏切り”などの作品が描かれております。これらのフレスコ画は色彩も鮮やかに保存状態も良く、素朴で力強い表現でした。その他の洞窟内部も素晴らしいものでした。
  私はこれらの遺跡や壁面絵画の見事さと共に、トルコ中央部アナトリア高原(海抜 1200m )の荒涼とした大地に岩や岩壁をくり抜き教会や修道院を作り、洞窟住居に隠れ住みながら宗教弾圧や迫害にも負けず、自からの信仰を守り通した当時の人々の心の強さを見せつけられた思いがいたしました。


  
M.T
  Back Number-----
32号浮世絵美人画の魅力