真田紐の種類と用途
●真田紐の種類と用途

 真田紐には

   ○草木染め正絹袋織り真田紐
   ○草木染め木綿一重織り真田紐
   ○草木染め木綿袋織り真田紐
   
   ○正絹袋織り真田紐
   
   ○木綿一重織り真田紐
   ○木綿袋織り真田紐
   
   ○人絹(交織)一重織り真田紐
   ○人絹(交織)袋織り真田紐

 などの染めや織りの種類があり、それぞれ約6mm(曲尺2分幅・種類よっては3分幅から)から約3mm(曲尺1分幅)刻みに
 約5cm幅位まであります。

 一重織りは、リボンの様に一重に織られ、袋織りは強度と厚みを増す為、袋状に二重に織られています。

                袋織りの断面       一重織の断面

 桐箱に使う場合、一般的に美術価値の高い物や茶碗・棗・香合には正絹の袋織りを,重い雑器類(花瓶・釜等)には
 木綿袋織り真田紐を使い、軽い雑器類や日用品には木綿一重織り真田紐や人絹交織真田紐を使います。
 又、草木染め真田紐はその趣のある表情から茶人の皆様に御愛用頂いております。
 正絹の真田紐は光沢・高級感があり結び易いのが特徴で、木綿の紐はザックリとした質感で丈夫なのが特徴です。
 人絹(交織)真田紐は、化学繊維を使った物を言いい価格的には一番安く,よくお土産品や記念品などの箱に使われて
 いますが,結んでもすぐ解けてしまうのであまりお勧めはしておりません。

●真田紐の長さや幅


 御茶道具の桐箱などにつける際の参考の長さ・幅を書きます。

 箱の結び方と言うのは中の作品の使用用途や作家の作風、宮中の型の物、武士の型の物、流儀の決まり等によって
 変わってきます。
 
 一般的な利休型の茶入・棗等の小さい箱には通常3分幅(9mm)の十字掛けで1.3m(腹紐の場合50cm程度)程度必要です。
 茶碗では4分幅(12mm)の十字掛けで1.4m〜1.6mです。又、花生や水差などでは5分幅を使います。
 花瓶・お釜等それより大きな箱になると6分・7分・8分・1寸幅(いずれも曲尺)等紐穴に合う真田紐(袋織り)を使います。
 長さは大きさによりかなり違ってきますので,十文字掛けの場合、高さ×4+奥行き×2+幅×2+結び目(茶碗で約60cm程)で
 計算して下さい。
 また、同じ中身でも紐の掛け方によって必要量は変わってまいります。材質は絹でも木綿でも結構ですが中身の格や重さにより
 使い分けてください。
 幅は箱の大きさによって変わってくるわけですがこの場合の大きさとは箱の蓋面の面積の事を言います。結びになった場合に箱の
 蓋の面積に占める紐の面積により変わってきますので高さはあまり関係がございません。
 時には作品の作風上意図的に細い紐使ったりする場合もあります。
 結び方については「真田紐の結び方」の項を御参照下さい。

          腹紐(胴掛け)の結び方 十字掛けの結び方

●箱
  茶道具などに使われる箱には、これも流儀によって決まりがあります。
  一般的によくあるのは利休箱・遠州箱・平箱等で利休箱は千家流の箱、遠州箱は遠州流の箱と言う事に
  なります。

   またそれぞれ被せ蓋になっていたり、印籠蓋になっていたり、四方桟になっていたり、二方桟になっていたりと、色々な形
   の物があります。
   一般的に京都でよく見られるのは利休型と呼ばれる箱で四方桟の場合(蓋の裏に四角形に桟が付いている物)、
   甲盛りと言い亀の甲羅の様に蓋面が中心部にしたがって微妙に盛り上がっている蓋を使い、側面角の部分が組手に
   なっており底面には足が付けられその足に(底板の下側に)紐穴があります。底面以外の角はすべて手に優しい様に
   角を丸くしてあります。
   
   桐箱に紐をかける際、一般的には蓋面の木目の広い方を右に細い方を左にして紐をかけます。
   これは右側に大きな文字で作品名を、左側に小さな文字で作者名を書く為で文字の大きさに比例しています。
   ただし書付を頂く事が前提で箱を作る場合、箱書を蓋裏に書いて頂く事が多いので左右が逆転します。


●コラム1


 骨董品を買われる時、まず気を付けなければいけない事は、その中身の作品に対して、箱書き(極め書きや花押など)が
  合致しているか?・箱の形状がその流儀に合っているか?箱や紐の柄や種類などが時代や作家に合致しているか?
  という事です。
  箱にしても遠州箱・利休型など色々な形の箱がありますし、紐も約束紐など独特の柄の真田紐があります。
  これらは古くから茶人や作家さん方が各々の感性で選んだもので、そのすべてが揃ってこそ作品としての完成形であり,
  又,そこには偽物防止のために二重三重の暗号がかけられています。それら箱や紐が箱書きや落款などの働きなのです。
  ですが昨今、そういった知識が茶道具店等でも曖昧になるにつけ、それを利用した偽物も多く流通しているのが実情です。
  落款や箱書きの偽物を作ったり書いたりするプロも居ます。箱・紐の場合は技術的・物理的に難しいのですが,手を変え品を
  変えあってはならぬものが付いている場合も多々あります。
  紐や箱の場合、色で大体の時代が解るのですが中には贋作品・箱・紐などをコーヒーや紅茶で煮たり、土に埋めたり、紫外線で
  日焼けさせるなど人工的に古色を付けた物や、中身の無い古い本物の箱に別に買ってきた古色を付けた贋作を入れた物などを
  入れ売っている業者も事実として居ます。
  これ等を避けるには、数多くの物を見て目を肥やしたり、書物を読んだり、我々関係業種にご相談戴いたりするのが一番です。
  有名な作家さんの子孫などがまとめた作品目録などの資料もあります。
  しかし、何はともあれ若干高価であっても信用の置ける茶道具屋さんや作家さんの個展等で直接買われるのが確実なの
  ではないかと思います。
  又、贋作を見分ける時、大体の方は作品を表面的に見られますが、作家さん・職人さんが一番気を使い、手を掛けるのは、
  合口や底など実際に使う時に実用的な部分であったり箱や紐などのしつらえなのでそういった所の出来も一つの目安になります。
●コラム2

 おもしろい話があります。
 茶道の抹茶茶碗の桐箱に使われている四分幅の真田紐は1、5m〜1、6m程あるのですが、実は着物の帯締めと同じ幅・同じ長さなのです。
 ですから、御茶会のお手伝い等で会場に行ってから着替えようとした時、帯締めを忘れた!!と思ったら練習用の茶碗の箱に付いてる真田紐
 (袋織りの紐の方がしっかりしていて綺麗です)を使えるのです。
 使用後は、ちゃんと箱に戻さないといけませんが…。
 ちなみに、茶入れや棗の箱の紐は帯留め用の紐と同じ長さ・同じ幅です。
 茶道の先生でもあまり多くは知られて居ない水屋知恵の一つです。

●コラム3

色々な真田紐の使用方法
 下駄スケートについて
  現在ではほとんど使われていませんが,昔,北国では下駄の下にスケート刃を付けた「下駄スケート」というもので氷上を滑る遊びが冬の遊びとして
  一般的だった様です。
  単にこの下駄を履いただけですと足首が不安定ですので,そこで足首と下駄を固定するのに荷物用の真田紐が多く使われれて居たそうです。
  昭和一ケタ生まれの方にはまだ記憶されている方もおられるかも知れませんが、諏訪湖畔の博物館には実物も展示されているようですので
  お近くに行かれたらご覧になってみて下さい。

                                   下駄スケート」ABC-TV「探偵ナイトスクープよりキャプチャ

 花嫁道具としての真田紐
  真田紐は非常に日本人の生活に近しい存在として使われてきました。
  昔,岐阜県のおばあさんに聞いた話ですが山間に住んでおられたそのおばあさんの若い頃、結婚して都会に出て恥をかいてはいけないと言う事で
  お母さんに正座の練習と言われ着物の背中の中に尺指しを入れられ正座した足の太ももとスネを真田紐で巻いて練習さされてたそうです。
  結婚してその通り名古屋に出られたそのおばあさんの結婚道具にも真田紐が入れられ、家事のときにはたすきにしたり,旅行の時には風呂敷に入れた
  荷物を真田紐で巻いたりしたそうです。
  おかげで名古屋で恥をかかずに済んだと久しぶりに見た真田紐に母親の愛情を見られたのか少し涙ぐんでおられました。