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イラクの小さな橋を渡って
著者名 : 池澤夏樹・文 本橋成一・写真
出版社 : 光文社
発行年 : 2003.1
N D C : 915
ひとこと : 2002年秋、戦争前のイラク。

もしも戦争になった時、どういう人々の上に爆弾が降るのか、そこが知りたかった。 メディアがそれを伝えないのならば、自分で行って見てこようと思った。

2002年秋、戦争にもならなかった戦争前の、イラクの普通の人々の姿を伝えている。
独裁の国ではあるが、人々は明るく、外国人におそろしく親切。食物は十分にあり、仕事もあって世間話をする相手もいる。人と人との間の敷居が低い。イラクの女性たちは社会進出を果たし、顔を隠してはおらず、髪を覆う確率は半々くらい。報道機関の独立性はなく、言論の自由はない。しかし、どんな内容の本でも販売が許可されている。 緊迫した情勢であるはずなのに、町に兵士が溢れているわけでも抗戦の構えを見せているわけでもない。

現在のイラクと過去の負債について淡々と綴られていく。

湾岸戦争の後、国連が行った経済制裁によって、イラクでは150万人の死者がでたと推定されること、そのうち62万人が5才以下の子どもだったこと、医薬品さえ輸入できなかったこと。湾岸戦争で落とされた劣化ウランのためにイラク南部には放射能症に苦しむ子どもや大人がたくさんいるということ。アメリカには国民がイラクを訪れることを禁止する法律があるらしいこと(著者はアメリカからの観光客を目撃している)。

経済制裁と簡単に言うけれど、苦しむのはごく普通の国民である。

(ソーダ)