HOME 著者分類ひとことおすすめ


  副題に「3000万本の木を植えた男の物語」。
  男とは生態学者の宮脇昭である。
  とにかく熱量に圧倒される。若かりし頃は、日本全国を文字通り駆け回ってのフィールドワーク。朝から晩まで植生調査をし、汽車に飛び乗って次の調査地へ。そしてまた朝から晩まで植生調査。研究室に戻っても朝早くから夜遅くまで。休みは正月元旦だけ。原動力は「知りたい、調べてみたいという強い欲求」。
  ドイツ留学で植物社会学と「その土地の自然環境の総和がどのような自然植生を支える能力を持っているかを理論的に考察する潜在自然植生」を学び、これに基づいた森づくりに至る。
  山に木材生産のためのスギ、マツ、ヒノキ、カラマツが植えられたことにより、山のバランスは崩れたらしい。マツクイムシが大量発生したらしい。本来の植生に戻すことで災害を防ぎ、環境を守ることができるらしい。阪神大震災の時も土地本来の樹木で構成された「鎮守の森」で火は止まっていたらしい。タブノキ1本は、消防車1台に値すると言われるらしい。
  先頭に立って熱帯雨林の沼地でもどこへでも行くこの学者は、企業や役所の思惑もなんのその、自分の理論をびしばし通して植えるべき木をどんどん植えていくから爽快だ。周りの人は大変だろうけど、納得できるから参加もしたくなる。
  人も自然も混ざりあっているのが本来の姿。
  「とにかく混ぜる、混ぜる、混ぜる。」いい言葉だと思う。

 

< 過去 読書日記一覧 未来 >