東北・関東の要地防空師団

 高射第一師団は、昭和19年12月22日に編制されました。要地防空を主目的としており、宮城と生産施設周辺の配備が大半でした。
 後には重要工場・交通拠点にも配備されるようになり、ある意味で本土決戦を感じさせるものでした。
 配備当初の主兵力は八八式野戦高射砲を主体としており、誰がどう考えても能力に劣っておりました。即ち最大射高がB−29の高々度爆撃に届かないのであります。実際に当初の高々度精密爆撃では、大した戦果を挙げていません。これに伴い三式十二糎高射砲が配備されだし、多少戦果が挙がり出しました。
 しかしこれらの火砲増強も、照空灯との連携のみで、電探との連携が成されて居らず、効果的とは言えませんでした。対空砲は本来命中を期するものではなく、破裂した弾幕弾片で有効打を与えるのが目的のため、有効な空域に多量の高射砲弾を集めるということが必要でしたが、ここまでは及びませんでした。
 師団は、敵の目標を判定して素早く目標地点に到達するため、多くの自動車化部隊を保有しておりました。これらは、地点防空という点では、有効に活用されていたと思われます。
 この師団の火砲で特筆されるのが、十五糎高射砲です。本砲は当初から高々度で来襲する敵機を想定しており、初めから対B−29を撃墜する目的で開発されました。実際には4門程度完成したようですが、2門が昭和20年5月久我山に配備され、B−29に向けられました。そして8月2日、初めて砲門が開かれ、第1弾が見事にB−29 2機を撃墜したのでありました。これに配置された砲兵は熟練者であったこと、砲の性能が頗る良かったことが連動していました。以後B−29は、久我山上空を通ることはありませんでした。
 司令部所在地は、久我山の後に上野国立科学博物館へ移動。
 
 通称号は晴兵団でした。

終戦時

高射第一師団

対空部隊概説

師団長 司令部 東京上野
臨時衛生隊 東京上野
高射砲第百十一連隊 安行
高射砲第百十二連隊 世田谷 晴1902部隊第一大隊五式十五糎高射砲
高射砲第百十三連隊 川崎 東部1903→晴1903
高射砲第百十四連隊 月島
高射砲第百十五連隊 市川
高射砲第百十六連隊 板橋
高射砲第百十七連隊 横浜
高射砲第百十八連隊 後楽園
高射砲第百十九連隊 市川
独立高射砲第二大隊 立川
独立高射砲第三大隊 国府台
独立高射砲第四大隊 太田
独立高射砲第四十四大隊 大垣
独立高射砲第四十九大隊 福生
独立高射砲第五十大隊
独立高射砲第九十五大隊 大宮
独立高射砲第九十六大隊 宇都宮
独立高射砲第四十八中隊 日立
独立高射砲第四十九中隊 日光
独立高射砲第五十中隊 三崎
独立高射砲第五十一中隊 大井
機関砲第一大隊 宮城
機関砲第四大隊 川崎
独立機関砲第一大隊 四谷
照空第一連隊 八王子
独立照空第一大隊 上尾 照空9個中隊
第一要地気球隊 宮城 阻塞気球30個
第百一要地気球隊 千代田

 B−29の爆撃が本格し始めた昭和19年末から昭和20年初めにかけて、本土決戦と要地防空を目的として高射師団・高射連隊が続々と編制されました。
 もともと帝国は諸外国に比べて割と早い時期(高射砲第一連隊は大正14年編制)から対空に関する意識を持っていましたが、昭和10年代にその意識がストップしてしまい、装備に関しても運用に関しても大東亜戦役の頃には二流になっておりました。その後帝国自体の航空戦力有効性確認と敵国の航空兵力増強でやっと再認識し、開発を進めていましたが、陸戦兵力への火砲割り当てが優先してなかなか配備が進みませんでした。
 経緯としましては、特に関特演での配備が最も多く、これを大東亜戦役直前に内地で大規模に編制替えして、呼称も高射砲連隊から防空連隊へとしました。しかしB−25による本土初空襲では全く有効に機能せず、大きな改変を必要としました。これを受けて部隊の増設と指揮機能が逐次成されましたが、前述の通り火砲の整備が追いつかず、遅々としておりました。
 昭和19年4月、各防空連隊の呼称を再び高射連隊と改め、更に編制を更新していきました。その最終的な形として、昭和19年末の高射師団化となったのであります。

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機関砲第四大隊 川崎 川崎工業地帯管轄
  二式多連装機関砲1中隊 二式双連機関砲4中隊

機関砲第一大隊 千代田 皇居防空
  二式多連装機関砲4中隊 二式双連機関砲2中隊

独立高射砲第九十六大隊 宇都宮 宇都宮工業地帯管轄
  八八式七高3中隊

独立高射砲第九十五大隊 大宮 大宮周辺管轄
  八八式七高3中隊

独立高射砲第五十大隊 三崎 要塞周辺管轄
  八八式七高3中隊

独立高射砲第四十九大隊 福生 福生航空工場管轄
  八八式七高3中隊

独立高射砲第四十四大隊 大垣 大宮周辺管轄
  八八式七高1中隊 九九式八高3個中隊

独立高射砲第四大隊 太田 太田周辺管轄
  八八式七高3中隊 三年式十二高1個中隊

独立高射砲第三大隊 国府台 市川工業地帯管轄
  八八式七高1中隊 九九式八高2個中隊 照空1個中隊

高射砲第百十九連隊 立川 立川周辺管轄
  八八式七高5中隊 九九式八高4個中隊 照空3個中隊

独立高射砲第二大隊 立川 立川周辺管轄
  九九式八高4個中隊

高射砲第百十八連隊 後楽園 都内中心部管轄
  八八式七高6中隊 九九式八高1個中隊 照空2個中隊

高射砲第百十七連隊 横浜 横浜地区管轄
  八八式七高7中隊 九九式八高4個中隊 三年式十二高1個中隊 照空6個中隊

高射砲第百十六連隊 板橋 東京西部管轄
  八八式七高5中隊 九九式八高5個中隊 三年式十二高1個中隊 照空6個中隊

高射砲第百十五連隊 市川 東京東部管轄
  八八式七高4中隊 九九式八高8個中隊 三年式十二高1個中隊 照空6個中隊

高射砲第百十四連隊 月島 東京沿岸管轄
  八八式七高3中隊 九九式八高6個中隊 三年式十二高3個中隊 照空3個中隊 照空船4隻

高射砲第百十三連隊 川崎 東京南部沿海管轄
  八八式七高6中隊 九九式八高4個中隊 三年式十二高2個中隊 照空4個中隊 照空船2隻

高射砲第百十二連隊 世田谷 東京西部管轄
  八八式七高5中隊 九九式八高4個中隊 三年式十二高3個中隊 照空6個中隊

高射砲第百十一連隊 安行 東京北部管轄 
  八八式七高7中隊 九九式八高4個中隊 三年式十二高1個中隊 照空6個中隊