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物語
ナポレオン
の時代

       Part 2  百日天下

   
第9章 戦争へ 

     6.対仏連合軍の動き

 で、戦争はいつはじまるのか?
 対仏連合軍はすでに行動をはじめており、フランス国境に向かってる。  
 オーストリア軍21万は、フランスの北東ライン川付近に接近中。
 その西側、アルデンヌの山地からシャルルロワにかけては、プロイセン軍約12万が陣をかまえる。
 さらに西方のブリュッセル近郊には、ウェリントン公爵の指揮するイギリス、オランダ、ハノーヴァー、ブランシュヴァイクなどの混成軍約10万が集結しつつある。
 ロシア軍15万はその一部がポーランドに着いているものの、広い領土に分散する軍を集合させるのに手間どっている。
 もっとも、兵力的に圧倒的に優勢であるのを自覚する連合軍は、すこしも急がない。

 大方の評判では、連合軍を総括するのはウェリントン公爵であるが、7月上旬ぐらいにフランスに攻めこもうというのが公爵の腹づもりである。
 このイギリスの将軍は、イベリア半島でジュノ、マッセナ、スルトなど名だたる武将の率いるフランス軍をつぎつぎに破っており、いまやその名声はイギリス本土ではもちろん、ヨーロッパ中に鳴り響いている。
 そのうえ、ウィーン会議でイギリスの外務大臣カスルレーの臨時代理をつとめ、相当の政治的手腕を発揮した。
 いまやオーストリア、ロシア、プロイセンの君主・大臣たちまで大きな信頼を寄せているようだ。

 迎え撃つ立場のナポレオンは、どう考えていたのか?
 先手を打って攻めるつもりである。
 なるほど北東部から北方にかけての国境は、敵軍にびっしり包囲されている。
 数的な劣勢は明らかであるが、個々の連合軍の相互連携はあまり良くないようだ。
 いまのうちに攻撃をしかけ、各個撃破するのだ。
 不意をつかれた敵軍は浮き足立つだろう。
 それが勝機になる。
         (続く)