物語
ナポレオン
の時代
ところで、この時期フランスの正規軍の兵力はどうだったのか?
動員できる兵士の数は15万から16万。
対仏連合軍を迎え撃つとするなら、これをすべての国境に配置しなければならない。
国民軍は前述のように王政復古下でも存続していたし、1815年の時点でおよそ14万。
数だけでいえばかなりのものである。
が、ナポレオンは国民軍を一種の予備軍としてしか見ていない。信用していないのだ。
なんといっても、ラファイエットの息がかかった組織なのだ。
正規軍の兵士たちの士気は高かった。
復帰したブルボン王家にたいしては不満たらたらで、エルバ島から戻ってきた皇帝の下で戦うことに満足している。
とはいえロシア遠征以後のたびかさなる戦争で、兵士の数も馬匹の数も弾丸も足りなかった。
とりわけ大砲と砲兵の数が十分でないのが痛い。
優秀な砲兵こそがナポレオン軍の強みであったのだから。
それ以上に大きな悩みは、上級士官の不足であった。
兵を指揮する司令官クラスのすぐれた将官が払底しているのだ。
軍の最高幹部である元帥たちは、その多くが昨年春にナポレオンに退位を迫った連中である。
かれらの大部分は復活したブルボン王家に仕えている。
厳密にいえば、ネー元帥がその一例だが、ルイ18世とかれらの関係は各人各様で、全員が厚遇されているわけではない。
ナポレオンはそうした違いを考慮したうえで、元帥たちのなかで使える者はなるべく使おうとした。
ベルティエ、マルモン、ヴィクトールなどは、ルイ18世に従ってベルギーにに赴いたので、残念ながら問題にならない。
グーヴィオン・サン・シールやウディノは、元帥名簿に残しはしたが、軍の指揮権を剥奪した。
モルティエ、スーシェ、ジュルダンの3人については、とくに咎めることなくこの4月から現役に復帰させた。
つまりは配下に加えたのである。
(次章に続く)