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物語
ナポレオン
の時代

       Part 2  百日天下

   
第8章 内憂外患 

    9.1815年のフランス軍


 
ところで、この時期フランスの正規軍の兵力はどうだったのか?
 動員できる兵士の数は15万から16万。
 対仏連合軍を迎え撃つとするなら、これをすべての国境に配置しなければならない。
 国民軍は前述のように王政復古下でも存続していたし、1815年の時点でおよそ14万。
 数だけでいえばかなりのものである。
 が、ナポレオンは国民軍を一種の予備軍としてしか見ていない。信用していないのだ。
 なんといっても、ラファイエットの息がかかった組織なのだ。

 正規軍の兵士たちの士気は高かった。
 復帰したブルボン王家にたいしては不満たらたらで、エルバ島から戻ってきた皇帝の下で戦うことに満足している。
 とはいえロシア遠征以後のたびかさなる戦争で、兵士の数も馬匹の数も弾丸も足りなかった。
 とりわけ大砲と砲兵の数が十分でないのが痛い。
 優秀な砲兵こそがナポレオン軍の強みであったのだから。  

 それ以上に大きな悩みは、上級士官の不足であった。
 兵を指揮する司令官クラスのすぐれた将官が払底しているのだ。
 軍の最高幹部である元帥たちは、その多くが昨年春にナポレオンに退位を迫った連中である。
 かれらの大部分は復活したブルボン王家に仕えている。
 厳密にいえば、ネー元帥がその一例だが、ルイ18世とかれらの関係は各人各様で、全員が厚遇されているわけではない。

 ナポレオンはそうした違いを考慮したうえで、元帥たちのなかで使える者はなるべく使おうとした。
 ベルティエ、マルモン、ヴィクトールなどは、ルイ18世に従ってベルギーにに赴いたので、残念ながら問題にならない。
 グーヴィオン・サン・シールやウディノは、元帥名簿に残しはしたが、軍の指揮権を剥奪した。
 モルティエ、スーシェ、ジュルダンの3人については、とくに咎めることなくこの4月から現役に復帰させた。
 つまりは配下に加えたのである。

                 次章に続く