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物語
ナポレオン
の時代

       Part 2  百日天下

   
第12章 二度目の退位 

   4.議会の先制攻撃

 敗戦を知った議員たちは狼狽した。
 フランスはどうなるのか?
 連合軍はどこまで来ているのか?
 数多くの議員が演壇に上がり、興奮した口調でまくしたてた。

 巣をつっつかれた蜂のように、代議院ぜんたいが動揺し、右往左往していた。
 「擲弾兵が
コンコルド広場に姿を見せたらしい。もうすぐここにやってきて、われわれを追い払うのだろう」と、まことしやかに隣席の者に耳打ちする議員もいる。
 それでも時間が経過するにつれ議論はしだいに収束され、このような事態はなぜ生じたのか? だれに責任があるのか、という問題にしぼられた。

 その時、ラファイエット侯爵が颯爽と登壇する。
 議場はシーンとなった。
 「しばらくぶりにここで発言するわたしを、自由を愛する議員諸君はまだ覚えておられるでしょう」と、かれは演説をはじめる。
 「みなさん、今こそ三色旗の下に、1789年の旗の下に、自由・平等・公共の秩序の旗の下に、集まろうではありませんか。
 外国の野望や国内のたくらみに対して守るべきは、この旗なのです」

 ラファイエットは名指しを避けつつも、ナポレオンをとるのか、それとも自由を選ぶのかと問いかけ、つぎの動議の採択を求めた。
 「フランスが危機にひんしている現在、代議院が閉会されることがあってはならない。議会を解散させようとするすべての企てを、われわれは国家反逆罪とみなすと宣言する」

 この動議はじつは違法だった。
 帝国憲法付加法によって、皇帝の議会解散権が認められているからである。
 しかし、興奮している600名の議員たちは深く考えずに賛成・可決した。
 さらに「外務、内務、陸軍、警察の4大臣はただちに議会に出向いて、質疑に応答すべし」という一文もこの動議につけ加えられた。
          (続く