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物語
ナポレオン
の時代

    Part 1  第一統領ボナパルト

    
第2章 マレンゴの戦い

   3.オーストリアとの戦争

 フランスとオーストリアとの間には、北から南にドイツ、スイス、イタリアが横たわってる。
 この三つの国がいわば緩衝地帯である。
 両国の軍隊はドイツではライン川の下流と上流で、そしてイタリアの北部で対峙していた。
 ジェノヴァでは仏軍が明らかに劣勢で、追い詰められている。
 他方、ドイツでは膠着状態が続いていて、ライン川をはさんで仏墺の軍隊がにらみ合っている。

 こうした状況を見て、ボナパルトはある作戦計画を立てた。
 ライン方面軍にライン川を渡らせ、敵の背後からいっきょにウィーンに攻め込ませるのだ。
 虚をつかれたオーストリア軍は浮き足立つだろう。ジェノヴァ攻囲どころでなくなるだろう。

 しかしライン方面軍の司令官は、腰の重いモローである。
 この作戦に難色を示した。
 陸軍大臣からいくども指示を出させ、部下を派遣して説得させても、この慎重な将軍は首をたてにふらない。

 その間に、ジェノヴァの戦況が緊迫してきた。
  マッセナ将軍の指揮する3万の仏軍が、袋のなかのねずみのように閉じ込められてしまい、食料の備蓄も残り少なと通報してきたのだ。
 (続く