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物語
ナポレオン
の時代


Part 1  第一統領ボナパルト

第 1 章 統領政のスタート
 11.ふくろう党

 ヴァンデに起きた反政府運動は、しだいに組織を整えていく。
 王党派の貴族や非宣誓派の聖職者を指導者にかかえこみ、反乱軍と呼んでもおかしくない規模にまで大きくなる。

 根っこに宗教上の対立がある争いは、執拗であり、容易におさまらない。
 革命政府の姿勢は脱宗教あるいは反カトリック的であり、この運動をつぶそうとして討伐軍を派遣した。
 しかし、いっこうにラチがあかない。

 様子を窺っていた「ふくろう党」が、ここにきてヴァンデの叛徒と手を結んだ。
 ふくろう党はフランス語で「シュアン」というが、シュアンは王制支持者たちの集団であり、中核をなすのは西部地方の農民たちである。
 「ふくろう」というのは奇妙な名だが、仲間を識別するのにふくろうの鳴き声をまねたとか、指導者のひとりの名前がシュアンだった、とかいわれてる。

 ヴァンデの叛徒は、大軍を組んで戦うことが多かった。
 他方ふくろう党のやりかたは、後の時代のゲリラ、あるいは第2次大戦時のレジスタンスに似ていた。
 いくつもの小グループに分かれ、伏兵や夜間の奇襲を得意とした。

 あちこちの町を襲い、乗合馬車を狙う。
 とりわけ国有化された教会財産の購入者を目の敵にした。

 風のように襲来し、あっというまに田野に姿をくらます。
 
 シュアンには有力な指導者が複数いたが、とくに有名だったのはカドゥーダルである。
 広い肩幅とたくましい首をもつこのブルターニュ男は、読み書きもろくにできなかった。 
 一見粗野な田舎者だが、寛大な心と堅固な信仰心をもっていた。
 しかも、抜け目なく、豪胆である。

 カドゥーダルの評判はボナパルトの耳にまで達するほどであった。
                                 (続く


ふくろう党