ヴァンデに起きた反政府運動は、しだいに組織を整えていく。
王党派の貴族や非宣誓派の聖職者を指導者にかかえこみ、反乱軍と呼んでもおかしくない規模にまで大きくなる。
根っこに宗教上の対立がある争いは、執拗であり、容易におさまらない。
革命政府の姿勢は脱宗教あるいは反カトリック的であり、この運動をつぶそうとして討伐軍を派遣した。
しかし、いっこうにラチがあかない。
様子を窺っていた「ふくろう党」が、ここにきてヴァンデの叛徒と手を結んだ。
ふくろう党はフランス語で「シュアン」というが、シュアンは王制支持者たちの集団であり、中核をなすのは西部地方の農民たちである。
「ふくろう」というのは奇妙な名だが、仲間を識別するのにふくろうの鳴き声をまねたとか、指導者のひとりの名前がシュアンだった、とかいわれてる。
ヴァンデの叛徒は、大軍を組んで戦うことが多かった。
他方ふくろう党のやりかたは、後の時代のゲリラ、あるいは第2次大戦時のレジスタンスに似ていた。
いくつもの小グループに分かれ、伏兵や夜間の奇襲を得意とした。
あちこちの町を襲い、乗合馬車を狙う。
とりわけ国有化された教会財産の購入者を目の敵にした。
風のように襲来し、あっというまに田野に姿をくらます。
シュアンには有力な指導者が複数いたが、とくに有名だったのはカドゥーダルである。
広い肩幅とたくましい首をもつこのブルターニュ男は、読み書きもろくにできなかった。
一見粗野な田舎者だが、寛大な心と堅固な信仰心をもっていた。
しかも、抜け目なく、豪胆である。
カドゥーダルの評判はボナパルトの耳にまで達するほどであった。
(続く)
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