第1章 統領政のスタート
12.ひとまず治まる
統領政府は発足時に、こう宣言していた。
「革命は終わった。秩序を確立せねばならない」
「秩序を確立する」というのであれば、ヴァンデの乱をなんとかしなければならない。
そこでヴァンデに派遣すべき6万の軍が編成される。
6万というのは、大軍である。
ボナパルトがイタリアに遠征したときに率いた兵士は、名目上3万5千とも4万ともいわれたが、じっさいには2万5千程度にすぎなかった。
エジプト遠征にしても、民間人を含めて、総勢で3万数千人ぐらいであろう。
ヴァンデの叛徒の多くが正規の軍人でないことを考えれば、6万の兵士を派遣するというのは、政府のなみなみならぬ決意を示していた。
総司令官は、ブリュンヌ将軍。
ブリュンヌは元ジャーナリストで、骨の髄からのジャコバン。
革命の初期に軍隊に入り優秀な将校になり、イタリア戦役でボナパルトにその能力の高さを認められた。
ジャコバンと王党派は、たがいに相手を憎悪している。
手加減せずにやれ、というボナパルトの無言のメッセージが感じられる人選だった。
1800年1月から2月にかけて、叛徒を鎮圧する作戦は着々と進む。
やがて叛徒の指導者のひとりドーティシャンが和平に応じる。
ブルモンやカドゥーダルも降伏。
フロッテはつかまり処刑された。
西部地方にようやく平穏が戻ったかに見えた。
(次章に続く)
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