物語
ナポレオン
の時代
コンサルヴィはまだ44歳なのに、教皇庁の国務長官でした。
アメリカ合衆国には国務長官がいる。が、教皇庁にそのようなポストが存在するのか、といぶかる人がいるかもしれません。
ヴァチカンはひとつの国です。
当時もいまも、ひとつの主権国家なのです。
いまでは国土面積がずいぶんと縮小され、ローマの一部分にすぎません。
昔はかなり大きかった。
最盛期はルネサンス時代で、教皇領国はパルマからカンパニアにまでのび広がっていました。
教皇は、政治的には、教皇領国の元首なのです。
ヴァチカンが国家であるからには、国務省など多くの省があってもいいわけです。
国務省の長が国務長官であり、他の国にたとえれば首相兼外相というところ。
1801年5月にパリに着いたコンサルヴィは、独立国家ヴァチカンのいわば首相でした。
(続く)