物語 
ナポレオンの時代








Part 1  第一統領ボナパルト

 
第1章 統領政のスタート

 9.徴兵制度

 時計の針を10年ほどまえに戻す。

 フランス革命が時間がたってもいっこうに沈静化せず、どんどんエスカレートするのに、周辺の国は驚き、不安にかられた。
  周辺の国とはイギリス、オーストリア、プロイセンなど。

 これらの国のリーダーは、フランス革命の恐ろしい熱気が自国に飛び火するのを危惧して、包囲作戦のために連合した。
 「対仏大同盟」を結成したのだ。

 フランスにしてみれば、周囲がみな敵国になったようなもので、兵力を急いで増強しなければ戦えない。

 この時代の軍隊は基本的に「志願兵」からなり、不足分を金で契約した傭兵で補っていた。志願兵とは、貧農の子弟や都市の食いつめた労働者などである。
 志願兵も傭兵も、集めるには金も時間もかかるし、そんなに大勢の人間を集めることはできない。

 せっぱ詰まったフランス政府は、徴兵制度を思いつく。新しい法律をつくって、30万人の兵士を動員することにしたのだ。

「18歳から25歳までの男性は、既婚者を除いて、ただちに入営せよ」という布告がでた。

 空前の新事態である。徴兵されるなどということは、およそヨーロッパの人間の通念にはない。

 革命政府の側からいえば、この新しい制度のおかげで10万単位の若者を短期間に動員することができた。それも安価に。そして対仏大同盟の諸国と戦争することも可能になった。

 戦争は、いくどかの中断期間をはさみながら、このあと20年ほども続く。
 
国民皆兵の徴兵制度がなければ、フランスはそんなに長く戦い続けることはできなかったろう。(続く

お知ら