Part 1 第一統領ボナパルト 第1章 統領政のスタート 9.徴兵制度 |
時計の針を10年ほどまえに戻す。 フランス革命が時間がたってもいっこうに沈静化せず、どんどんエスカレートするのに、周辺の国は驚き、不安にかられた。 これらの国のリーダーは、フランス革命の恐ろしい熱気が自国に飛び火するのを危惧して、包囲作戦のために連合した。 フランスにしてみれば、周囲がみな敵国になったようなもので、兵力を急いで増強しなければ戦えない。 この時代の軍隊は基本的に「志願兵」からなり、不足分を金で契約した傭兵で補っていた。志願兵とは、貧農の子弟や都市の食いつめた労働者などである。 せっぱ詰まったフランス政府は、徴兵制度を思いつく。新しい法律をつくって、30万人の兵士を動員することにしたのだ。 空前の新事態である。徴兵されるなどということは、およそヨーロッパの人間の通念にはない。 革命政府の側からいえば、この新しい制度のおかげで10万単位の若者を短期間に動員することができた。それも安価に。そして対仏大同盟の諸国と戦争することも可能になった。 戦争は、いくどかの中断期間をはさみながら、このあと20年ほども続く。 |