この時期のボナパルトは、がむしゃらに働いた。
起きるのは、通常7時から8時。
従僕がひげをそり、頭髪をととのえている間に、秘書がフランスやイタリアの新聞の主要な記事を読み上げる(ボナパルトはイタリア語を理解した)。
イギリスとドイツの新聞は、秘書が翻訳しながら朗読した。
朝食は10時。食べるのは速かった。
夕食ですら15分から20分ぐらいですませてしまう。
食卓から、そのまま執務室に直行することもある。
夜中に起き出して、秘書に資料を請求することもまれではない。
このように間断なく精神を集中すれば、若い人間といえども疲れる。
そのような時に、ボナパルトは入浴した。
多くのフランス人と違って、たいへんな風呂好きだった。
心地よげにいつまでも浴槽につかってい。
湯船で眠り込んでしまうこともある。
うつらうつらして目を覚まし、秘書を呼んで、急いで出すべき電報を口述したりする。
ベッドに入るまえにも、緊急の連絡を待っている場合は、夜中の何時に起こしてくれと命じた。
ナポレオンが一日に3時間しか眠らないという伝説は、こうして生まれた。
(続く)