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物語
ナポレオン
の時代

    Part 1  第一統領ボナパルト

  第1章 統領政のスタート
物語 ナポレオンの時代









6. ジェルミナル・フラン

 
 革命政府が国家財政の危機を切り抜けるために目をつけたのが、教会の所有する財産だった。

 なにしろ教会はフランスのどんな町にもどんな村にもあり、その所有する財産は全体として見れば莫大なものだった。
 これを没収して国有化するのだ。

 国有化した教会財産を担保にして売り出されたのが、「アシニャ」という名の国債だった。
 
アシニャ債はつぎに紙幣になる。
 予算がたりなくなるとどんどん印刷したので価値が下がり、やがては額面の20分の1の価値になってしまう。

 第一統領ボナパルトが最初にやったのは、売り出しすぎた国債の相場を支えるために「減債基金」をつくることだった。

 つぎに通貨への信用を取り戻すために、銀を含有する貨幣「ジェルミナル・フラン」を発行した。

 経営困難におちいっている企業を救うために「フランス銀行」を設立した。

 こうして矢継ぎ早に手を打ったのであるが、1800年と翌1801年の国家財政はいぜん赤字。

 けれども1802年ごろから好転の兆しが見えはじめる。

 官吏の給与や国債の利金が正貨(つまり金貨か銀貨)で支払われるようになったのが、この時期である。


 正貨による支払いを知った国民はなんとなく安心した。
 
国全体の経済マインドがすこしずつ変化していく。

 そうなってから、ボナパルトは間接税の復活を決めた。

 間接税は、いつの時代でも、どこの国でも、ひどく嫌われる。

 現代日本の消費税も間接税である

 しかし国家元首たる者は、それが必要なことであれば、国民に嫌われることもやらねばならない。

 1804年2月、「一括税」という名前の間接税が導入された。

    (続く