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物語
ナポレオン
の時代

       Part 2  百日天下

   
第10章 ワーテルロー(上) 

  9.戦線が動く

 ドルエ・デルロンの第1軍団が横隊を組んで進んでいく。
 それを見たイギリス軍が砲撃をはじめた。
 横隊とは横に開いた隊形のことで、砲弾をまともにくらう。
 フランスの砲兵隊も負けじと、80門ならべた大砲でいっせい砲撃した。

 ポンソビー将軍率いる2500人のイギリス軍騎兵隊が、このとき襲いかかってきた。
 フランス軍歩兵隊は方陣をつくる間がなく、じりじりと後退する。
 それを望遠鏡で見ていたナポレオンは、騎兵隊を急いで投入し、かろうじてイギリス軍の猛攻をくいとめた。

 つぎに現れたのは、ピクトン将軍のスコッツ・グレー。
 体重のある灰色の馬に跨がっているので「グレー」と呼ばれるスコットランド騎兵隊である。
 フランス軍歩兵は銃剣をふるって防御するが、長剣を振り回され、肩をえぐられてなぎ倒された。
 勢いにのったスコッツ・グレーは、フランス兵を追いかけまわす。
 深追いしすぎて、新たに送り出されてきたフランスの騎兵隊の猛反撃にあった。
 指揮官ピクトン将軍は額に弾丸をうけ、馬からころげ落ちる。
 有名なビーバーの毛皮の帽子をかぶり、軍服でなくモーニング姿であった。
 スコッツ・グレーはほとんど全員が死傷した。

 この間も、左手のウーグモンの農場では、突入と撃退が相変わらず続いている。
 業を煮やしたナポレオンは曲射砲の使用を命じ、砲をすえる場所まで指示した。
 やがて農場は炎上し、破壊された門からフランス兵がなだれこんだ。
 もっと早く有効な火器の使用を思いつくべきであった。

 中央のラエ・サントでは、ネー元帥がキオ大隊の先頭にたって突撃し、午後3時半ごろにようやく農場を奪取する。
 ウェリントン将軍のさし向けた
ドイツ兵部隊は、農場に近づくまえにフランス軍胸甲騎兵隊によって撃退された。
                                                                 (続く