ブリュメールのクーデタの後にスタートしたのは、統領政だった。
政体としては共和政であり、議会があり、選挙がある。
ただし、立法府にくらべて行政府が強いのが特色といえる。
この点で、直前の総裁政府時代と明瞭に違う。
行政府のなかで大きな権力をもったのは、第一統領のボナパルトである。
この統領政は4年続いた。
その4年間に、政府は革命以後おさまることのなかった社会的混乱をおちつかせた。
破滅的であった財政状態をめざましく改善した。行政改革や司法界改革をおこない、成果をあげた。
ヴァンデの乱をひとまず鎮圧した。アミアンの和約によって、イギリスとの関係を好転させた。
10万人にも及ぶエミグレの帰国を実現した。
ヴァチカンとの間にコンコルダ(政教条約)を締結した。
思いつくままにあげても、統領政府はこれだけの仕事をしたのである。
どれをとっても、ひとつもできれば、一政府の立派な業績といえるもの。
歴史家のなかには、これを「統領政の奇跡」と呼ぶ人もいる。
統領政は、事実上、ボナパルトを軸に動いていた。
だから、「ボナパルトの奇跡」と呼ぶのが正しい。
(続く)