物語
ナポレオン
の時代
シエイエスのほうから積極的に誘ったわけではない。
両者のあいだを取り持つ者(タレーランやリュシヤン・ボナパルトなど)がいて、二人の連携がなった。
クーデタのシナリオは、主としてシエイエスが書いたもの。
ボナパルトは、かなり前から、強い政府をつくりたいと考えてはいた。しかし、そのためのプログラムあるいは青写真をもっていなかった。
だからどう動けばよいのかわからない。
かれは、すこし躊躇してから、シエイエスと手をくむことにした。機に乗じたのである。
準備段階では、シエイエスやそのまわりの改憲派の政治家にとって、ボナパルトは「剣」にすぎなかった。「頭」である自分たちの手足のようなものだった。
ところが、クーデタのあとで力関係が逆転する。新政府のトップになったのは、意外にも30歳の将軍だった。
(続く)