物語
ナポレオン
の時代
スカラ座
スカラ座は、パリの「オペラ座」とニューヨークの「メトロポリタン・オペラ・ハウス」と並んで、
オペラの三大殿堂といわれます。
このなかでもっとも長い歴史をもつのが、スカラ座です。
できたのは、1778年。
建物の外観はさほど豪華でありませんが、内部に入ってみると、その壮麗さに目をみはります。
平土間はそれほど広くありませんが、周囲の桟敷席が独特です。
一階から六階まで、美しい円柱が半分に切られたように、桟敷席が舞台と相対しているのです。
この時代のスカラ座は、現代でいうなら劇場であると同時に映画館でもあり、テレビのある小宴会
場の集合体でした。
ひとつひとつの桟敷席は、それぞれが小さなサロンと呼べるほどのスペースがあり、控え室までつ
いている。 飲み物をのんだり、かんたんな食事もできました。
ミラノの貴族やブルジョワたちは、人を自宅でなくスカラ座の桟敷に招くのがふつうでした。年間
を通してそこをレンタルしていたのです。
この1800年6月のある晩、ボナパルトが劇場に到着すると、着飾ったミラノの観客たちは盛大な
拍手をしました。この30歳の将軍が4年前にこの地でいかに輝かしい武勲をあげたかを、よく覚えて
いたからです。
あのとき遠征軍の司令官であった男が、いまやフランスの元首なのです。