8. 有能な人材
大きな仕事は、ひとりではできない。
国家規模の財政改革や行政改革などをおこなうには、優秀なブレーン、勤勉な部下が必要である。
ボナパルトは財政改革や行政改革だけでなく、司法改革や教育改革にもやがてとり組むのだが、そうした仕事を進める上で頼りにしたのは、参事院(コンセイユ・デタ)だった。
参事院は諮問機関である。
わが国の「参議院に」似ていてまぎらわしいが、立法府ではない。
改革をするとは、新しい制度をつくることである。
具体的には、法律を改正すること。
参事院の主要な任務は、まさにその法案を準備することだった。
発足時のメンバーは29名。
官吏や各分野の専門家からボナパルト自身が選んで任命した。
どのような組織でも、それをフル稼働させられるかどうかは、リーダーの力量次第である。
第一統領には、まだ30代なのに、自分のめざす方向に官僚や専門家をひっぱっていく能力があった。
それこそがリーダーシップである。
部下がどのくらい自分の役にたってくれるか。
それをボナパルトはすぐに見抜いた。
有能な者は、貴族の出であれ、庶民の出であれ、差別なしに登用した。
だいじなのは能力であり、家柄や育ちでない。
この点でボナパルトは公平だった。
(続く)
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