香偈(こうげ)

  願我身淨如香炉  がんがしんじょうにょこうろ

  願我心如智慧火  がんがじんにょちえか

  念念焚焼戒定香  ねんねんぼんじょうかいじょうこう


  供養十方三世仏  くようじっぽうさんぜぶ




  [ 読み下し文 ]

   願わくは我が身(きよ)きこと香炉(こうろ)(ごと)

   願わくは我が心智慧(ちえ)の火の如く

   念念に(かい)(じょう)の香を焚焼(ぼんじょう)して

   十方三世(じっぽうさんぜ)の仏に供養したてまつる




   [ 訳 ]

   願わくは、この私の身体の清らかなことが、まさに香炉のようでありますように。
   願わくは、この私の心が、智慧の火のようでありますように。
   一念一念に戒と定の香を焚いて、
   十方三世のあらゆる仏様に供養致します。

                                                             
 


説明

 浄土宗の場合、「日常勤行式」はこの「香偈」という偈文(げもん)で始まります。
日常勤行は、日々の生活の中でお唱えするお念仏とは違い、一種の儀式のようなものなので、
やはり心身ともに清浄にしてから行いたいものです。ですから、まずは「香偈」をお唱えし、心身をお浄めするところから始まるのです。


 香炉は、お釈迦様の時代から用いられていたと言われている大切な仏具です。
用途によって色々な形がありますが、どれも清らかで美しい形をしています。
まず、わが身も香炉のように清らかで美しくありたいと願います。


 
智慧は、物事を正しく見極めて惑いを断ち、悟りに至る力をもっています。
また、智慧は煩悩をやき尽くす力をもっているので、これを火に喩えて智慧火といいます。
“わが心が智慧の火のようでありたい”とは、少しでも煩悩をなくすように努めていきたいということです。

 常に戒律を守っているという功徳は、香のように四方を薫じるので戒香(かいこう)といいます。
定とは禅定のことで、心を静めて思案し、心を散乱させずに正しく分別することです。
事の善し悪しや好き嫌いという感情によって動揺する心をなくすことを定香(じょうこう)といいます。

 十方とは、東西南北、上下のあらゆる方向を指し、三世とは過去・現在・未来のあらゆる時間を表します。


香偈は

 わが身は香炉のように清く美しくありたいと願い、その香炉に智慧という火を置き、
 戒香と定香をたいて心身を清め、あらゆる世界にいらっしゃる仏様を供養いたします。


 
そんな思いをもって、お唱えいただければと思います。

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