「日常勤行式」とは、
日々の勤行において、
どのような経文(きょうもん)・偈文(げもん)をどのような順序で唱えるか、
その次第のことを意味します。
そして、その日常勤行式の実践が、いわゆる日々の「お勤め」なのです。
皆さんがお持ちの
日常勤行式のお経本には、お経や偈文がたくさん並んでいますが、
その一つ一つに意味があり、役割があり、全体として一つの流れになっています。
そこに目を向けることで、少しでもお勤めを身近に感じていただければ、と思います。
ぜひ、お経本を開いて、一緒にご覧ください。
「日常勤行式」の構成
この、構成について、とてもわかりやすい解説が、『知恩』に掲載されておりましたので、
まず、ご紹介させて頂きます。
「日常勤行式」は、普通@序文(=導入部)、A正宗分(=中心部分)、B流通分(=締めの部分)
の三つに分けられます。
まず、@序文では、自身の身と心を清め(香偈・懺悔偈)、仏法僧の三宝への帰依(※1)を表明し(三宝礼)、
仏を道場に迎えます(奉請)。
次にA正宗分では、「読経」によって経典に記された教えを再確認し、その教えに説かれる阿弥陀仏などを
「礼讃」によって讃嘆します。さらに、その阿弥陀仏の教えに基づいて「念仏」を実践し、
その功徳を多くの人に回向(※2)して、皆で往生を目指すことを宣言します(総回向文)。
そして、流通分では、自身の仏道成就とその実現の手段としての往生を願う気持ちを表明し(総願偈)、
往生実現のために改めて念仏を唱え(三唱礼)、最後に仏に私たちの仏道修行を見守ってくれるよう、
お願いし、仏を見送ります(総仏偈)。
(『知恩』2012.4 安達俊英師 「浄土宗日常勤行式」より)
※1 帰依(きえ)…信じてついていくこと。
※2 回向(えこう)とは、文字通り、「回し向ける」ことで、自分がお経を読んだり
お念仏を唱えたりして積んだ功徳を、他の人(ご先祖様の仏道修行など)に回し向ける、
という意味。
表にすると、このようになります。
浄土宗日常勤行式
@序分(=導入部)
(じょぶん) |
香偈
(こうげ)
三宝礼
(さんぼうらい)
奉請
(ぶじょう)
懺悔偈
(さんげげ)
+十念 |
ー自身の身と心を清める
ー仏法僧の三宝への帰依を表明する
ー仏を道場に迎える
ー過去・現在の一切の悪業を悔い改める
|
A正宗分(=中心部分)
(しょうじゅうぶん) |
開経偈
(かいきょうげ)
読経(四誓偈など)
本誓偈
(ほんせいげ)
礼讃
(らいさん)
法然上人御法語
摂益文
(しょうやくもん)
念仏一会
(ねんぶついちえ)
総回向偈
(そうえこうげ)
+十念 |
ーお経に出会えたことに感謝する
ー経典に記された教えを再確認する
ーお経を読んだ人が
極楽へ行けるように願う
ー教えに説かれた阿弥陀仏などを称賛する
ー念仏を申す者は皆阿弥陀仏の光明に迎えられる
ー阿弥陀仏の教えに基づき「念仏」を実践する
ーその功徳を多くの人々に回向して
皆で往生を目指すことを宣言する
|
B流通分(=締め部分)
(るづうぶん) |
総願偈
(そうがんげ)
三唱礼など
(さんしょうらい)
送仏偈
(そうぶつげ)
十念 |
ー自身の仏道成就と実現の手段としての往生を
願う気持ちを表明する
ー往生実現のために改めて念仏を唱える
ー仏様に、私たちの仏道修行を見守って
くれるようにお願いし、仏様を見送る
|
このように、
日常勤行とは、色々な行程によって成り立つ儀式のようなものなのですね。
また、浄土宗では、『
無量寿経』『
観無量寿経』『
阿弥陀経』の3つを大切なお経とし、
これを「
浄土三部経」と言います。(『
四誓偈』とは、『無量寿経』の中の一節を指す)
「読経」の時には、主にこの三部経の中のもの(またはその中の一節)を読みます。
日常勤行式の流れは、理解していただけたでしょうか。
お勤めをされる時、“今仏様をお迎えしているんだなぁ…”などと思いながらお唱えすることで、
いつも唱えていらっしゃるお勤めを、よりわかりやすく感じて頂けるのではと思います。
尚、法界寺の月参りの勤行次第では、この日常勤行式を基本とし、「読経」の時、二種類のお経を
お唱え致しております。
最初のお経では、“阿弥陀仏のお誓いを信じ、ご家族全員が極楽往生できますように”と念じます。
そして二つ目のお経では、“先に往生されたご先祖様が、極楽浄土で阿弥陀仏のご指導を頂かれ、
一日でも早く仏道修行を終え、仏として生まれ変わって頂きたい”との思いで、
この世から功徳を振り向けさせていただくように、念じております。
したがって、法界寺の月参りは、
今生きている方々・亡くなられたご先祖様 の双方に、阿弥陀仏のお救いをお願いしているお勤め
になっております
。
各偈文の詳しい説明も、少しずつ掲載していきたいと思います。
そちらもまた、ご覧ください。