マイクロホンの種類には幾つかありますが、大別してダイナミックマイクとコンデンサーマイクの2種類です。用途により使い分けされますが、それぞれの特長を生かした形で使われます、マイクロホンの共通特性を若干列記しておきます。
  1.指向性
   使い方により単一指向性を選ぶか、無指向性を選ぶか決めます、ボーカルマイクはボーカル以外の音源を拾うとボーカルの音質を
   損ないますので単一指向性が望ましいです、インタビューや会議等で使用する場合は無指向性が望ましいです、アマチュア無線用
   は、ボーカル伝送が目的ですから単一指向性となります。中には部屋中の音源が全て聞こえる局長さんもおられますが、運用して
   いる周囲の騒音を極力下げ、野鳥等のさえずり音をマイクを通して伝送したい時に無指向性を使う場合がありますが、特例です。
  2.口元とマイクとの距離
   近づけるとマイク出力の電気信号はおおきくなり、遠ざけると小さくなる、よって近づける程S/Nは良くなる、しかし近づけ過ぎ
   るとポップノイズが発生します、レコーディング等ではポップガードを付属しポップノイズを軽減している。又マイクへ近づける
   と近接効果と言われるもので、低音が強調されてきます、遠ざけると反響効果で、近づけ過ぎても遠ざけ過ぎても声の質が低下し
   ます。無線で使用するマイクはモービルとか移動は別にして20~30cm位が理想ではないでしょうか。
  3.感度
   1パスカルの気圧変化が生じる音の大きさが感度の基準となっている。マイク感度は0dBを1Vとしたときの電圧を表記しており、
   例えばマイク感度=-50dBとなると、1パスカルの気圧変化を生じさせるために-50dB(3.3mV)の電圧が必要となる。 一般的に
   ダイナミックの感度は-50dB台で、コンデンサーマイクの感度は-30dB台と言われております。
  4.ダイナミックレンジ
   人間の耳のダイナミックレンジは、どの位なのだろうか、耳に聞こえるギリギリの小さい音が20uパスカル、耳が痛くなる位の音
   が20パスカルと言われています、つまり、120dBのダイナミックレンジがあります。従って、1パスカル(マイク感度の表記電圧
   )は、かなり大きな音であることが判ります。
  5.平衡/不平衡
   平衡出力の信号は正極性信号/負極性信号の2信号で出力され、受け機器内で差動増幅器により減算されて不平衡信号に変換され
   ているよって、 長いコードで引き込む場合に、誘導ハム/ノイズを受け入れたとしても、減算器でキャンセルされるメリットが
   あります、無線機に使用する場合も回り込みに対して強いと言えるでしょう。
  6.マッチング
   RF信号の送終端50Ωでマッチングをとりますが、 マイクロホンの場合は例えば出力インピーダンス=600Ωのマイクをマイクアン
   プの受けで600Ω終端すると、低域の抜けた軽い音となります、終端インピーダンス=マイクインピーダンスX20倍位で終端します
  7.テスト法
   よくマイクのテストで、マイクをコンコンと叩いたり、フーフーと息を吹き付けたりしますが、テストでは実際の音声(声)を
   入力すべきです。

【ダイナミックマイク】
 
ダイナミックは安価で、衝撃に強く落としても叩いても壊れにくいので、広範囲に使われています。内部構造が簡単で電気の供給も必要としませんので非常に使い易いです。ムービングコイルが入っているため、無線に使用する場合は周辺機器の電源トランスの漏洩磁束を拾いやすいため、マイクの設置位置や方向が限定されます、ヘッドホンで聞きながらブー音(ハム音)が最小となる場所にセットする、又コンデンサーマイクに比べ感度(-50~-60dB)が低いため、マイクアンプの利得が20dB位多く必要です。  信号の出力は数百Ωの出力インピーダンスで不平衡出力が多い、平衡出力とするには2次側センタータップ付きのマイクトランス経由で出力させる。ダイナミックマイクの用途は屋外で使用する演説用やライブ用、又カラオケ用と、特に不特定多数で使用環境の幅も広い用途に使われます。
 
           
ダイアフラムを逆方向にして使用するのがダイナミックスピーカーです、ShureのSM58は代表的なダイナミックボーカルマイクです。

【コンデンサーマイク】
 ダイナミックと比べて価格が高く、¥数万から高い物で¥数十万のマイクもあります、非常にデリケートですからダイナミックのような雑な扱いをすることは出来ません、きめ細かい信号まで検出しやすいため、レコーディングやスタジオ用として使われています。コンデンサーマイクの原理は、 2枚の金属板に直流電圧をかけるとコンデンサーに電気が貯まる性質があり、この貯まった電気量は金属板の間隔によって変わります、この金属板の片方を振動板(ダイヤフラム)を置くことによって音圧により蓄えられる電気量が変化します、つまり、音を電気として取り出すことが出来ます、これがコンデンサーマイクの原理です。 このダイヤフラムを可変電極板と言い、ここに数10V~数100Vの直流電圧が印可されます、これをファントム電源といい、通常+48Vの直流電圧を供給するようになっています、コンデンサーマイクにはボイスコイルのようんものはなく、周波数特性に優れているので音響用マイクや騒音計等の測定器にも使用されます。コンデンサーマイクが高価な要因は、ダイヤフラムから微弱な電気信号を音声信号として抽出するために、高入力インピーダンスと低雑音を兼ねた高性能電子回路が必要となり、湿度や汚れによる絶縁低下でもノイズの発生や特性の劣化となりますので、非常にコストが高くかかります。以上はファントム電源型のコンデンサーマイクで、微弱な信号をファントム電源で増幅回路も内蔵されており、平衡出力が大半です。もう1つのコンデンサーマイクで、エレクトレットコンデンサーマイクがあります、 これは電源は必要なものの電圧が1.5Vとか3V位で十分安価で小型なマイクロホンとしてハンディマイクやパソコンや携帯等広範囲に使われています。高分子化合物を使って静電容量の変化で微弱な信号を拾い増幅して使用するマイクです。ファントム電源とエレクトレットコンデンサーマイクの電源は別物です。コンデンサーマイクの感度は-30~-40dBで、ダイナミックと比べて20dB位高いです。

   

              


マイクの前置きはこの位にして、そろそろ本題(アンプ)の話に移ります。
1.入力形態
 マイクロホンからの信号は、不平衡/平衡のいずれかで出力されてきますが、平衡入力に対応しておけば、どちらにも対応出来ることとなります、 平衡入力の場合は2相の入力信号をそのままA/B端子に入力しますが、不平衡入力の場合はA端子又はB端子のいずれかに入力し片側端子はGNDします。
2.利得
 無線に使用することを前提に考慮すると、先ず使用するマイクの種類ですが、とは言うもののダイナミックとコンデンサーは、やはり考慮せざる得ません、となると最大感度時は感度の低いダイナミックマイクに合わせる必要があります。アンプの利得は使用するマイクの感度値とおよそ同等の利得となります、つまり、私の手持ちダイナミックマイクの感度=-57dB、コンデンサーマイクの感度=-37dBですから、ダイナミック使用時はアンプ利得=57dB、コンデンサーマイク使用時はアンプ利得=37dB必要となります。よって、マイクアンプの最小値=37dBで最大値=57dBの設計値となります。MIC-VRを入れることにより、最小感度=-∞、最大感度=+57dBのアンプとすればよい。

         

アンプの利得を可変するのは、ダイナミックレンジ/ノイズを考慮すると、本来アクティブブロックの利得を可変する手法が理想的だが、アンプの利得可変するにはデバイスの選択が限定されます、であれば、MIC-VRを入力側と出力側に多連VRで挿入すれば同等の作用で動作させることが出来ます。固定のマイクアンプ利得を設け出力側にVRを入れマイクVRとして機能させる場合がありますが、これはマイクVR最大で使用している場合は問題ないが、VRを絞った場合はマイクアンプの入力レベルが大きいから絞るのであって、アンプ利得が固定ですからダイナミックレンジが小さくなります。複雑なVR構成にしなくても上図のように単連VRで構成することが出来ます、但し、この場合は前段(差動アンプ)と後段アンプの利得配分に気を付ける必要があります。前段利得を決めるには自分の使用するマイクの感度が一番高いマイク(コンデンサー)を接続して、使用状態で最大音声を入力し、差動アンプの出力(MIC-VRの前)の波形確認し、電源電圧に飽和するクリッピング波形とならない利得に設定する。前段の利得が決まれば、次に自分の使用する感度が一番低いマイク(ダイナミック)=-57dBであれば、後段アンプ利得=57dBー前段アンプ利得で決定されます。
3.エレクトレットコンデンサーマイク
 2014年にShinさんがネット上に掲載された回路図を紹介しておきます。いずれもFETのソース接地とゲート接地で平衡出力の信号となっています、各種安いエレメント(¥100位)が販売されていますので、マイクロホンの筐体を自作すると面白いです、但し、指向性を考慮して作ると、まんざらでもないです。知り合い各局が自作された幾つかを紹介します。

          ¥100マイク_1      ¥100マイク_2      ¥100マイク_3     ¥100マイク_4
                                
      

4.私が使用しているマイクアンプ

 マイクアンプ全体の利得を変えるには、R2=472の値を変更することにより変わります、利得を大きくするには値も大きく、利得を下げるには値を小さく変更します。 スイッチ付のステレオピンジャックを使用すると、マイクプラグを抜くと、マイク入力の2相ラインはGNDに落ちます、不平衡信号を入力する場合はマイクジャックの⑥番か⑦番のどちらかへ信号を入力し、どちらかはGNDへ接続して運用します。マイクVRは本来出力側へも2連VRにして設けることが望ましいですが、これには個人的な理由があり下記のようにしています。 2連としない理由は、MIC出力は低インピーダンスとする必要があり更にバッファーが必要となるためです。低インピーダンスにする必要があるのは、これが個人的な理由です、私の送信機はどれもLSB/USB/ISBモードで送信出来るようにしているため、バラモジまではステレオ対応の回路にしております、しかしマイクからの音声信号はモノラル信号にしております。 よってマイク出力信号を簡単にL-CH/R-CHへ供給するには抵抗マトリクスで行います、 このことにより、マイク出力が低インピーダンスでなければ、抵抗マトリクスによりL-CH/R-CHの分離度がどんどん悪化していきます、LSB/USBのみの仕様であれば、マイク出力のインピーダンスは全く気にする必要はありません。

  
  

5.マイクロホンへの回り込みハウリング
 無線交信中のエアー・モニターをしながら行うと、モニターレベルを大きくするとマイクとヘッドホンとの位置関係を大きく遠ざける訳にもいかず、ピーピーとハウリングします。 ハウリング条件は発振と同じ原理ですから、閉ループ利得>1で、位相=正相帰還された場合に条件が成立しハウリングに至ります、ならばこの条件を満足させなければよく、利得条件を外すと音が小さくなりますから振幅条件は外されないため、位相条件を外します。マイクアンプの後段にフェイズシフターを設け、位相を常時回転させます、ハウリングが発生しかかると位相が回りハウリングが引っ込みます、やり方として回転させる速度が問題で早すぎても遅過ぎても、実機の状態で行えばボトム点があります、ゲインを上げてハウリングを発生させ速度VRで止めます、この繰り返しでセットします。  振幅特性は全帯域フラットですから違和感はありません。しかし無線機のシステムでは、ここまで必要かどうか、逆にエアー・モニター中は若干のハウリングが必要となる場合もあり、特に周波数ズレのモニター等、この状態が癖になり全くハウリングが無くなると逆に違和感が出る場合もあります。では具体的な対策回路を紹介しておきます。
     
                  
 フェイズシフターは、全通過型フィルターで構成し、上図の半固定VRを0Ω←→100KΩと回転させることにより位相をシフトさせる、位相特性で判るように、0度~180度を回転する。具体的な素子としてはFETを使用し、鋸歯状はで抵抗値を可変していく、くり返し周期は鋸歯状はの周波数を変える、又、マイコン搭載機器であれば、ソフトのマイン1周期にデジタルVRで可変していく、可変ステップはカットアンドトライで確認していく。振幅特性は平坦であるため音質には影響ありません。