構成としては、PSNによるオールバンド・ダイレクト送信機です。WコンバージョンによるオールバンドPSN送信機(MT-Pluto/TX-Neptune)を製作しましたが、ダイレクトでのオールバンドPSN送信機は未であったため、トライすることにしました。尚、ACN(オート・キャリア・ヌル)機能も付加し安定化を図ります。オールバンドで設計スタートしたものの、過去10年以上21M/28MでのQSOの実績がなく未使用バンドとなりますので、3.5M/7M/14Mのバンドに絞り込みます。

【仕様】
          
① ダイレクトオールバンドPSN送信機。(3.5M/7M/14Mに変更)
          ② 各バンドの逆サイドバンド調整値(Phase/Balance)は記憶保持。
          ③ ACN(オート・キャリア・ヌル)の検出は、455KHzで生成。
          ④ 出力=最大250mW。

          ⑤ LPF=ActuveとSCFの切り替え方式。
          ⑥ HPF=33Hz/48/70/85/100/125/150/185Hzの8ポジ切り替え。
          ⑦ MODE=LSB/USB/ISB


【オールバンド・ダイレクト送信機のポイント】

 ① シングルコンバージョン/ダブルコンバージョンのケースでは、どのバンド周波数においてもSSB生成器では 固定キャリアで
   構成出来きます。(例えば455KHzとか128KHzとか)よって、SSB生成器のキャリアが固定で動かないため、PSN変調器に使用
   するためのI/Qキャリア生成が容易で、RF-PSN機構も簡単です。ところが、オールバンド・ダイレクトとなると同一バンド内に
   おいても周波数が変わり、安定したI/Q信号のキャリアが必要となります。
 ② ①を達成するためには、128KHzや455KHzの固定キャリアI/Qを生成するために、4倍発振させ1/4手法でI/Qを生成し、VR
   によりRF位相の微調整(RF-PSN)をすることにより容易に達成出来ますが、 固定キャリアであるため簡単であります、周波数
   が高く可変となると容易ではない。 例えば455KHzの位相=90度では、時間軸=550nSであるが、3.5MHzでは71nS、14
   MHzでは17nSと小さく、周波数により数値も変わる。この90度位相の時間軸絶対値が小さい程、逆サイド特性がクリチカルと
   なる。例えば1nSの変動に対して、位相変動からみると、455KHzでは90/550=0.16度の変動、3.5MHzでは90/71=1.27度の
   変動14MHで90/17=5.3度の変動となり、ダイレクトではVRによるアナログ調整の手法はとれない。当然、4倍手法によるキャリ
   ア生成の手法もとれない。又各バンド毎にRF位相の調整値を確保する必要がある。固定キャリアでのRF位相調整は、下図の
   ような手法で行うが、このような固定遅延によるアナログ調整では、周波数が変化することにより遅延値は変化しないものの
   結果として位相シフト量が変化するため、この手法は採用出来ません。

             

 ③ 従って、ダイレクト変調用のRF信号(I/Q信号)は、デジタル的にミリ度分解能で、時間軸遅延ではなく位相値の調整制御が必
   要です、位相値制御であるため周波数が変化しても位相は不変です。但しバンドにより異なった位相調整値が確保出来ることが
   必要です。これは変調回路においてバンドが変わる(周波数の変化量が大きくなる)と、個体差により最適調整値が変化ためで
   す。
 ④ 以上の条件から、DDS回路を色々検討した結果、今回は最高に近い新しいDDSの採用を試みることにしました。ダイレクト受信機
   で使用したDDSは、200MHzクロックでチューニングワード=48bitでしたから一般的に言われる割り切れないBITが捨てられ誤差
   を生じると言われますが、48bitですから12乗以上は確保されます。つまり、基準クロックでロックさせますから、GPS/ルビ
   ジューム等の基準クロックを使用すれば基準精度と殆ど変わりはありません。しかしDAC=12bit仕様でしたから、この度DAC=14
   bit仕様の400MHzクロックで1.8V駆動の低パワーのDDSを使用します。 しかし、難題が1つあり、48ピンQFPとパッケ-ジは小
   型ですが、ピン間ピッチ=ウルトラSSOP(0.5mm)で、いままで使用したQFP80ピンではSSOP(0.65mm)でした。SSOPより
   密度の高いパッの手ハンダは未です。
 ⑤ 逆サイドバンド調整に関しては、 バンド内では200KHz位の周波数変化ですが、他バンド間では倍の変化となりますので個体差
   による差分で、各バンド毎にRFPSNによる調整値とAFPSNのU列/L列バランス値が独立調整出来るようにし、この調整値を記憶さ
   せる。
 ⑥ ACN(オート・キャリア・ヌル)を実現するためには、周波数が変化するため その都度、現状周波数のキャリア検出を行うこと
   ことは出来ません、今まで製作してきた機器はダブルコンバージョンでIFのポイントでキャリア検出を行うことが出来た、ダイ
   レクトではキャリア検出専用としてのミキサーを設け、 本機では455KHzで検出を行う。本回路は送信信号ルートとして経由す
   る訳ではないので、信号品質に影響は与えません。


         

                       操作マニアル

                       調整法と確認法

    



【DDSユニット】


        
マスタークロック周波数は、26MHzで外部基準クロック(10KHz)にロックさせ全てのクロックは、このマスタークロックから生成します。ダイレクトPSN変調するためのI/Q搬送波は、AD9951(14bit-DAC)DDSを使用しIQ間の位相差はRF-PSN機能として位相単位で制御出来ます。ACNとしてキャリア検出用のミキサーへ供給する搬送波は、AD9851(10bit-DAC)を使用し常時、送信周波数+455KHzの搬送波を出力します。SCF用クロックは、100倍クロックのSCF(MAX294)を使用しているため、カットオフ=3.0KHzの場合は300KHzのクロックを供給します、BCDプログラマブル分周器で26MHzを分周し、100Hzステップでカットオフが設定出来るようにしています。
マスタークロック(26MHz)を外部10KHzにロックさせる比較器は74HC86(X-OR)を使用しており、26MHzからの10KHzはデューティー50%を供給し、外部10KHzが入力されていない時は、比較器出力は10KHzのデューティー50%がそのまま出力され、26MHzのVCXOには1/2Vccの制御電圧となるため、周波数のズレは非常に小さく抑えることが出来ます。

           DDS基板と各信号出力      DDS改修ファイル 





【Displayユニット】


 部品面に装着する部品は、タクトキー/LCD/LED/エンコーダーとダイオード2本/コンデンサー(223)2個です。その他は全てハンダ面から装着します。LCDは基板から浮かせるのではなく、金具を基板に接触させ、14ピンの穴は抵抗の足を利用して接続する。ハンダ面からの装着部品は、特にLCD下に位置する部品は確認要(ICの方向等)

   動検(CPUユニット含)
   ① CNP1の①番=+5V、③番=GNDとして+5V単電源を供給する。
   ② 消費電流=約60mAです。大きくズレていればNGです。
   ③ VR1(502)を回して、LCD表示のコントラストを調整し、下写真のように白文字がハッキリ確認出来るようにする。


   基板ユニット完成     パネルユニット完成    CPUユニット 


   メーター文字板貼り付け用のシール  ELECOM フォトシール EDT-PS4(お探しNO=L11)





【MAINユニット】

 オーディオブロックは今までの構成と変わりはなく、LPFのみActiveとSCFの2種類を実装しパネル面から切り替えることが出来るようにしております。バラモジはスイッチタイプだが周波数が高いため、伝搬遅延の小さいバススイッチを用いてドリフト影響を小さくします。キャリアヌル回路はACNのダイナミックレンジを広くとれば、前置調整する必要はないのですがACNの分解能が粗くなります、分解能とレンジを考慮すると、各バンド、各モード(LSB/USB)でACN=センター値で、キャリアヌルのプリセット調整をとるようにしています。以降は今までのシリーズと大きく変化はない。ACNのキャリア検出はダイレクトであるためその都度のキャリア検出が出来ない、そこでACN検出専用のためのミキサーを設け、常時同じ周波数(455KHz)が得られるようにし2段増幅検波でキャリア検出を行っております。
  部品面側にAFPSNユニット、ハンダ面側にHPFとActiveLPFユニット   
  を取り付け3段構成にしております。                          MIN改修ファイル




【各ユニット】

【AFPSNユニット】

 大事な事を忘れていました、AFPSNユニットの入力抵抗(R17/R42/R67/R92=103)4本は、ユニット単体での調整時には必要ですが、実装時は、4本共にカットする必要があります。撤去するのではなく、足をカットしておく方がよいです。(再度調整時は取り付け)要
8段オールパスをくみ上げ、久しぶりに自作の位相計と3DDSを取り出し、各ポールの調整を行いました。調整した結果、50Hz~4KHzのスイープ信号(3DDSから出力)を入力し、オールパスのU列出力と、L列出力の帯域内位相アバレを確認しました。
        AFPSNユニット、ISB対応のため
        LSB用とUSB用の2系列搭載   

        フルスケール=±0.1度、グリーンベルト内=±0.02度
        つまり、逆サイド=75dB以上は確保されるはず。
                       帯域内位相差分の動画 


【LPF/HPFユニット】

 HPF(ハイパスフィルター)と、LPF(ローパスフィルター)は、今まで設計使用してきた種類を踏襲し、HPFは4次のフィルターで8ポジ(33Hz/48Hz/70Hz/85Hz/100Hz/125Hz/185Hz/230Hz)切り替え、LPFはアクティブとスイッツドキャパシターの2種類を切り替えて使用出来るようにし、アクティブは4ポジ(2.7KHz/3.0KHz/3.5KHz/4.0KHz)対応の8次チェビシェフです。スイッチドキャパシターは1段/2段いずれの使用も可能で、1.4KHz~4.0KHzまでの100Hzステップで設定出来ます。尚、これ等のユニットは、メイン基板装着時にハンダ面から装着するため、低めのヘッダーピンを使用します。
                     各ユニット 
 HPFの各実測結果 LPF(Active)の各実測結果 LPF(SCF)の各実測結果