【はじめに】
 本充電器の製作のきっかけとなったのは、電気柵用のバッテリー(12V)の補充電装置を作ったのがきっかけで、昔12Vバッテリーを充電したことはあるが、正規の充電装置ではなく定電圧電源から無理やり電流を流し充電していた。これでは過充電や充電不足で安定充電は出来ない、今回も予備バッテリーを定電圧電源から2Aで充電し14時間後(翌朝)確認すると、6A電流計が振り切れ状態となっており、バッテリーを確認すると、6セル中2セルがショート状態となり、8Vバッテリーとなってしまいました。このような不具合を避けるためには正規のフローチャートでバッテリー充電を行うことが必要で、又、手元にある部品でなんとか消化出来ないか設計を行ってみた。

【元直流電圧の生成】
 電源トランスを使用して生成していたが、手持ち部品では結構条件に制約を受け、充電電流の最大値を幾らに仕様設定するかで大きく左右される。そこで、スイッチング電源で24V-3.3Aの電源が3台手元にあり、これは以前、中間アンプの製作で集まった電源で今回利用出来そうだ。本電源を使用する場合は、充電電流の最大値=2.5Aに設定する。 5A設定時では24V-10A品を、10A設定時では24V-20A品を使用のこと。 ネットでは¥2K~¥3Kで売られています。
          

【電圧制御素子】
 
電圧制御にはNJM723を使用し、電流制御にはNPNダーリントントランジスタ2SD2081又は2SD2083を使用します。NJM723は過去パワーMOS-FET電力アンプを製作した時にFETのバイアス制御用によく使用し、電流制御機能が付いておりこれを使用します。制御トランジスタ2SD2081(10A-30W)は手元にあり、充電電流=2.5A品には使用出来るが、5A品10A品にも使用出来る2SD2083(25A-120W)を秋月から購入した。
        

【逆流阻止として使用するダイオード】
 20A品又は30A品を使用する。以前、ミーティングで数多くゲットした10A品のFMQG5Gを2個パラで使用することにする。
        

【リレー】
 電流を意識しない1回路2接点、2回路2接点、RL3は2A品の1回路2接点、いずれも秋月で販売されており、出力回路のRL1は16A品でリニアアンプに使用しているリレーで千石で販売されている。リレーは全て12V駆動品。
        

【電圧制御するためのデバイス】
 マニアルモードではパネル取付のVRによって出力電圧の調整を行いますが、Autoモードでは自動で電圧制御する必要があり、これに使用可能な電子制御デバイスとしては+5V単一電源又は±5V駆動のデバイスは、何種類も存在するが、高耐圧用の制御デバイスとしては限られて、アナデバのAD5290を使用する。これは過去の自作機でフレキシブルなLPFを設計した時に使用した。しかし、これには1つ欠点がありデバイス形状がMSOPしかありません(MSOP10ピン) そこで、秋月に売られているMSOP10ピン→DIP10ピンに変換する基板を使用します。
      

【放熱器】
 制御トランジスタ(2SD2083)とダイオードを取り付ける放熱器は
          
充電電流=2.5A仕様 →Pd=20W の放熱器が必要
          充電電流=5A仕様  →Pd=40W の放熱器が必要
          充電電流=10A仕様  →Pd=80W の放熱器が必要
いずれの仕様にも合致するように、過去、集めていたアルミ放熱器を20cmX11cmにWカッターで切断。実際には、この半分位で問題ない。
           

その他の部品は汎用品で、いつも自作されている局長さんなら周りにゴロゴロしている。

【回路動作】

                       回路図-Main    回路図-Display

 元電源のDC24Vは出力電圧調整で+20.0Vに調整して使用する。電圧制御にはNJM723を使用して3.2V~17.2Vまで可変出来るようにして、電流増幅には2SD2083(25A、120W)のダーリントンNPNトランジスタを使用します。NJM723は②-③間で検出することにより電流制限の設定が出来ます、2.5A仕様ではR2=0.47Ω(10W)、5A仕様では0.47Ω/10Wを2本パラで接続、10A仕様では0.22Ω/10Wを2本パラで接続。制御回路の電源は+15Vで、+5Vは表示ユニットへ供給している。
 
① リレー回路
   RL1は充電器出力を出力端子へ供給するか、バッテリーと切り離すかを切り替えます。
   RL2は充電器出力の電圧を計測するか、バッテリー単品の電圧を計測するかを切り替えます。
   RL3はバッテリーのダミー抵抗(10Ω/10W)、ダミー電流のON/OFFを切り替えます。
   RL4はNJM723の電圧制御でパネルVRで制御するか、AD5290で制御するかを切り替えます。
 ② 電圧検出回路
   R7、VR2、R11の分圧抵抗の電圧を、CNP7④番からA/Dコンバーターへ供給し、LCDで電圧表示させている。
 ③ 電流検出回路
   R2の両端電圧を検出してU4のオペアンプで増幅し、CNP7の③番からA/Dコンバーターへ供給して電流表示させている。
   電流検出の精度を上げるために、オペアンプのマイナス電源が必要となり、当初は+5V入力で±12V出力のDC/DCコン
   バーター(MAU108)を秋月から購入して使用していたが、途中から-12Vが出なくなり、MAU108が壊れてしまった。よって
   DC/DC使用は止めて小トランスで-12V追加生成した。(バイポーラーオペアンプ2個の駆動のみ)
            
 ④ バッテリーチェッカー駆動回路
   RL3リレーによって、バッテリーダミー電流=1.3A流し、バッテリー電圧を検出することによりU5(オペアンプ)で駆動
   している。本来なら、数十アンペアのダミー電流を流して検出すれば精度は上がるが、簡易形式にしている。100uAの電流
   計を使用してグリーンゾーン/イエローゾーン/レッドゾーンに区分けしている。左下のJPG画像をシールにプリントアウト
   してメーターに貼り付ける。
              

 ⑤ 自動電圧制御回路
   自動充電モードではRL4リレーでU6(AD5290)側に切り替えて、CPUからAD5290を経由してNJM723を制御し、常に電圧を
   コントロールしている。

【製作】
 製作するにあたり基幹部品の収集は出来たが、回路図にしたがって製作するにプリント基板のエッチング製作をローカル局長さんに頼んでみた。SSOP部品があり、上手く出来上がるか心配したがバッチリな出来であった。
 パターン1倍寸法 pdfファイル シルク印刷1倍寸法 pdfファイル

完成したプリント基板に部品を装着しAssyを完了し、ケースの中に収納しました。
 
ケースは安価で、パネル加工がし易い物を選択した。
   

【調整】
 元電源(24V)は20.0Vにセットしておくこと。’MODE’キーと’START’キーを押しながら電源をいれる。
 ① 電圧検出調整
   1)出力端子にマルチメーター(テスター)を接続して、15.5VdcとなるようにパネルVRを調整する。
   2)LCD表示の電圧が15.5VとなるようにVR2を調整する。
                
 ② 電流検出調整
   1)充電最大電流調整
    VR1を右一杯にセットしておく、次に、出力端子のプラス(+)とマイナス(-)間にマルチテスター(10Aモード)で接続する。
    つまり、出力のショート電流が計測出来るようにセットする。この状態で、VR1を徐々に左に回しマルチテスターの表示
    が、2.50AとなるようにVR1を調整する。調整が終わるとマルチメーターを除去する。
                
   2)電流表示調整
    パネルVRを左一杯にしておく、次にマルチテスターの直流電圧計で、CNP7③番ピンにて、±0VとなるようにVR4を調整する。
    次に、パネルVR位置は何処にあってもよい、出力端子をショートさせる。この時に、LCDの電流表示が2.50Aとなるように
    VR3を調整する。調整後、速やかにショートを解除する。
                

 ③ Battery-Checkメーター調整
   LCDの電圧表示が12.7Vとなるように、パネルVRを調整する。次に’START’キーを押す、メーターの針が振れるからVR5を調整
   して、100%(フルスケール)となるように調整する。調整後は再度’START’キーを押して元に戻す。
                

これで全ての調整が完了し、電源をOFFにして通常使用が出来ます。

【完成状態】
 フールプルーフとして、バッテリーの逆接保護としてはハード的対応ではなく、ソフト対応しております。NORMAL-MODEでは強制的にバッテリーへ充電電流を流すことが出来ますが、逆接していると、又、途中で逆接しても、’NOT-BATTERY’と表示されALL-OFFします。AUTO-MODEでも、どの段階においても逆接すると、同様に’NOT-BATTERY’となります。B-CHECKモードでは、メーターが振れないだけで問題ありません。