’ものづくり’のイメージは、高度成長時期に繁栄した製造業を想像し、高度な技能労働者をイメージしますが、私は1970年~2008年に電機メーカー(弱電メーカー)に従事しておりました。いわゆる第1次ベビーブームの生まれで団塊の世代です、最初の経験がカラーTVの設計開発でしたが、当時、回路GrとしてはチューナIFブロック/信号処理(輝度信号クロマ)ブロック/偏向(垂直水平)ブロック/電源オーディオブロックに分かれて、私は信号処理ブロックの先輩につき指導を受けながら何故か新製品の電源オーディオを担当した記憶があります。以降、38年間’ものづくり’に従事してきましたが、昔と現状では体制も取り組みもかなり異なるとは思いますが、私の経験上での’ものづくり’を簡単にお話してみます。私の場合は映像機器/オーディオ機器カテゴリーが大半ですから、無線機器関連は全く経験ありません。ひとつの商品を創出するには、色んな専門分野の組織が絡み、基本的には事業部の全組織が動きます。創出するまでの大まかな流れは

 

                          製品開発フロー

 

 一番の要因は、目標コストに達成するか否です。製造原価の算出は

       ・部品材料費

       ・労務費(直接費)

       ・間接費

       ・その他特許費用等

       ・金型費用

金型費には一般的な部品(パネル/キャビ/電気・機構部品)金型、物によりメカ関連も必要となり、商品の差別化を図るためにオリジナルカスタムLSi等、新規半導体開発となると、これだけで¥数億となり多額の経費となります。

金型費用/償却台数で計算して1台単価に割り込み計算します。1商品にかかる金型費用は、商品の形態(マイナーチェンジモデル/新規商品/新規カテゴリー商品)によって異なりますが、大体¥2億~¥3億を要するのではないでしょうか、仮に金型費=¥3億だとすると、目標償却台数=10万台であれば、¥3憶/10万=¥3000の経費となりますが、償却台数=1万台であれば1台当たり¥3万の経費となります。

以上の合計となります。当時、国内生産で行った場合は、売価=製造原価の2.53倍と言われていました。結局は、償却台数を幾らに設定出来るかによって、売価設定が大きく左右されます。逆に、目標売価設定に入るように償却台数を設定し生産する場合があり、金型償却が出来ず、赤字商品となるモデルが多々あります。 同一のカテゴリー商品で1社のみ(独占)で生産出来る商品はなく、多くのライバル企業間で競争し合っていました。仮に、1世帯1台普及する商品だと想定すると、国内で計3000万世帯でシェア1%確保出来たとすると、3000万世帯/1001%)=30万台の償却が可能となりますが、なかなか計算通りにいきません、これが、一般家電品ではなく、アマチュア無線機器となるともっと厳しく大変なはずです。

  何年頃だったか記憶は定かではないのですが、価格競争が厳しくなり国内で生産するには人件費が高く、競争力に勝てる商品づくりが出来なくなりました。そこで各メーカーは人件費の安い東南アジア各国(韓国/台湾/中国/インドネシア等)に工場を設立し、基幹部品のみ国内から支給し生産することにより低価格商品を生み出し生き残ることに必死でした。このことにより国内の空洞化が社会問題となり失業者が増加しました。これを考えると現状通販で売られている部品ですが、先日、ビックリしました。今まで自作によく使ってきた表示器(LCD)は秋月電子で、¥800/単価で購入し使用しておりましたが、知り合いの局長さんから、もっと安く売られている場所があるとお聞きし、調べてみるとAmazonLCD部品として秋月の¥800品と同一仕様で端子形状のみ異なるだけで¥210です、少し前までは¥190でありました、しかも送料=無料で動作をさせても全く問題無くきれいに動作します、これだと、今までの法則でいくと秋月の¥800LCDの製造原価=¥8003=¥270Amazon-LCDの原価=¥2103=¥70以下でなければ採算がとれない計算となります、勿論、中国生産でLCDとはいってもTFTではありませんが、それにしても国内では成り立たないプロセスです。

 

      秋月のLCD ¥800           Amazon-LCD ¥210          動作状態

             

 

【製品開発プロセス】

開発していく上で、最初の手作り品を試作して、各試作ステップで機能/仕様の確認を行っていく

 

                       製品開発プロセス

 

 

 オーディオ/映像機器へのマイコン導入は1980年頃からだったと思いますが、民生機器の電化製品では、たしか家電(調理器等)が最初に導入されたと記憶しております、当時は殆どの商品がマイコン搭載となったものの、CPUそのものが今のようにフラッシュROM内蔵マイコンは存在していなくて、開発したソフトは金型をつくると同様に、マスクROM化して量産しておりました。よって、量産GOした後にソフトバグが発見されると、何とかハード対策処理で対応したものです、それでもハード対応不可の場合は、バグ対応されたソフトでマスクROMのつくり直しをし、マスクROMの費用がWに費やされたりしました。その後、ワンタイムROM方式のCPUが現れ、第1ロットのみワンタイムCPUを使い、バグを抽出しきってマスクROM化していた記憶があります。その後、商品もデジタル家電商品や携帯電話等、システムが大きくなるCPUが必要となり、マスクCPUやワンタイムCPUでは対応出来なくなり、これらのニーズに対応したフラッシュROM内蔵のCPUが出現してきました。これによって、バグ対応やバージョンアップ対応が可能となりました、テレビやデジタルレコーダーのようにチューナーを搭載している商品やネットワーク接続している商品は、エンドユーザーは何もしなくてもメーカー側から自動でバージョンアップ出来るようになりました、その他の商品でのバグ対応やバージョンアップはリコール対応し、各拠点(サービスステーション)でソフトの書き換えを実施する。新製品をデビューさせた時は、ネットの口コミ情報が直ぐ出てきます、メーカーと型番を入れると、良い事/悪い事、バグに値する内容等、気にして毎日確認していたものです、逆に、メーカーはこの情報を元にバージョンアップしたりするケースもあります。

アマチュア無線機器の自作

  無線機を自作するとは言っても、時代に即した機器を作るとなると、アナログ(AFRF)技術はもとよりデジタル処理、FPGAFieldProgrammableGateArray)DSPCPU(ソフト)技術が必要となり、我々団塊の世代の無線家にとっては簡単には出来ない、ただ、このような機器を自作するのであればメーカーから販売されていますから、これを買ってくれば解決します、ましてや団塊の世代は金を沢山持っていますから簡単に処理出来ます。自作は購入したくても購入出来ない機器、世界にたった1台しか無いと言うのが魅力です。アマチュア無線家は色んな志向があり、私は今ではDXにもカード収集にも興味はなく、同じ境遇の無線家同士でラグチュー(志向が似たもの同士で無線を通して話し合う)するのが好みで、SSBモードのみの運用です。

今の無線機は通信信号はアナログであっても、機器内部はデジタル処理が大半です、他の機器、オーディオ/映像機器では信号そのものが、アナログ信号からデジタル信号へと変遷しメーカー側もユーザー側も革命となりました、テレビは今ではフラットパネルで50100インチの大型が導入され4K8Kへと移行していきます、こんなハードが実現しても、テレビの信号がいつまでも4.5M帯域のアナログ信号では美しい映像は出力出来ません、コンピューターにしても昔の大型計算機センターに設置されていた機器より小型で高性能な機器が家庭にパーソナル用として普及し、非常に大きな変革がありました。しかし、アマチュア無線の世界では50年前と何が変わったか? 周波数安定度が上がり機器の安定度が増した位で、ユーザー側にとっては(ラグチュー派では)大きな変革はありません、SSB-3KHzアナログ信号で、QSB/ノイズ/ジャミングを伴いながら今でも通信しております、メーカー側からするとデジタル処理により無調整化と機器の安定化が図られ生産性は向上しております。 だからこそ、年老いた我々にも未だ自作が出来るのかも知れません、つまり、無線機器は入力信号と出力信号は昔から変化が無いため、今でも昔の技術が通用するのだと思います。昔アマチュアとしてテレビを作った事がありますが、今ではその頃の深い技術知識を持っていたとしても通用しません。

 

        

 

昔から受信機は、3つのS(3S)をカバーすれば良いと言われていました。

       ① 感度(Sensitivity)------どこまで弱い信号が判定出来るか

       ② 選択度(Selectivity)----受信帯域(SSBの場合は3KHz)以外の周波数ゾーンの

                  信号はどこまで排除出来るか

       ③ 安定度(Stability)------特にSSBの場合は周波数安定度

 アンテナとスピーカーを直接接続すれば、音がでるのでは?強力な信号であれば了解出来なくても音は出そうです、しかし、3Sを満足させることは出来ません、SSB派にとっては、3Sとは別に忠実度が要求されます。最近はHi-Fi-SSBと称されるグループがあり、聞こえれば良い/了解出来れば良い と言うだけでなく聞こえてくる音色に敏感となり、結構うるさい局長さんがおられます。音色に関してはデジタルイコライザー技術によって、かなりの幅まで自由設定できますが、SSB派は、このようなゾーンではなくフィルターの種類・特性に神経を費やされます、つまり、フィルターには振幅特性と位相特性があり、いずれも音色に左右するからです。メーカー製は位相歪を最小限に抑えられるデジタル処理によってフィルターを構成し、3Sの選択度を最優先し理想的な振幅特性になっております。この振幅特性、帯域内特性ではなく帯域外特性が音色を左右するのです。これは結果として、選択度と忠実度が相反する項目で、メーカーはエンドユーザーが不特定多数ですから、多種の志向に対応する必要がありますが、自作は対象が自分一人ですから自分の志向に合った機器を作れば良い。ここで自作時にも十分考慮する必要があるダイナミックレンジに関して少しふれておきます。

 ダイナミックレンジは

受信機にしても送信機にしても、出力も入力も音声信号ですがダイナミックレンジの定義は、再生可能な極めて微小音から極めて強力な音までの幅のことを言います、オーケストラの再弱音~再強音は120Bと言われていますが、こんなダイナミックレンジ音を、自分以外の人(近隣の人、自分以外の家族の人)に迷惑をかけないで再生するには、かなりの防音設備を施さねば可能になりません、普通の住宅騒音=3040B、チョット煩い住宅で=50B位と言われていますから、オーケストラを完全に再生するには、70B位の防音装置が必要となります。大きなダイナミックレンジ信号を小さなパイプで伝送するには、コンプレッション技術で伝送出来ますが、では実際、アマチュア無線機器はどの位のダイナミックレンジが必要なのだろうか、特別なオペレート室を設けた場合は別として、一般家庭のお父さんに与えられる部屋を想定すると、バック騒音を非常に気づかってFAN等なくし静かにしたところで60Bのレンジが確保出来れば十分実用になります、余裕をみても機器としては80Bもあればオーバースペックです。少なくとも、自分が運用している部屋の再生可能なダイナミックレンジ以上を設ける必要はありません、広いD-レンジを経験するにはヘッドホンと言う手段がありますが、難聴と言うリスクがありますから私は特別なケースを除いて小レベルで使用しています。

 自作する場合に使用する部品、特にどんなデバイスを使用するか検討する上で、昨今は周辺に調達可能なお店が無くてもネットでの調達で幅広くGET出来るようになりました。しかし、部品の種類となるとデバイスメーカーもアマチュア無線機器用に特価したデバイスは需要の関係で、なかなか開発には至ってもらえません、やはり携帯電話とかテレビのような民生機器用等には新しい多くの専用部品が出現してきますが、厄介なことにこれ等の部品は面実装部品が大半で、しかもSOP形状ではなく、もっとマイクロ形状部品となり自作派にとっては選択部品が限定されます。無線機器のICとして長く使用されてきましたバラモジ用のICMC1496UPC1037HAN612)は、カラーTVの色変復調用に開発され、民生機器用として膨大な数が消費されました、今では携帯用としてはありますが、HF機の無線機の自作には使用出来ません、このように昔、民生機器用として開発されたICを探して自作に流用していくしかありません、逆にこの場合は形状が、SIPDIPの部品があり好都合です。量産する訳ではなくデリバリーには関係なく、1~数台製作するだけですから。3040年前に開発されたデバイスは勿論現状では生産されてはいませんが、ネット上で探せば、世界中の何処かに存在はしています。現状の自作では各局長さんの専門知識で異なりますが、団塊の世代では入力から出力までの信号は100%アナログ信号で扱い、これ等を制御するに必要な回りの制御処理(表示/SWDDS等)は、可能であればデジタル制御で行う、このことにより操作性/見易さ等が好みに自作出来ます。

受信機

 受信機を自作する場合、先ず、自分の志向にマッチした仕様を決める。私の場合はラグチュー派でCWDX通信も行いません、よって、受信機の優先順位の項目は

1]=安定度、 [2]=忠実度、 [3]=選択度、 [4]=感度 の順番となります。

【1】最大許容入力レベル

 これは、自分の受信環境においてアンテナから入力される最大信号を確認しておく、ビームアンテナのように利得の高いアンテナを使用すると、それなりに受信レベルも高くなり、許容値を大きくする必要があります。アンテナをスペアナ入力に直接接続し受信帯域内での最大入力信号を調査する、時間帯/シーズンにより異なりますから最大値を取得します。感度/ダイナミックレンジとの関係もあり、あまり大きくも出来ません、よって、本項目はアッテネーター機能と併用して設計することが望ましいと思います。私は最大入力=-20Bmの仕様とし、20BATTと併用します。SメーターはS9=-73Bmに設定しますから、S9+58Bまで直線増幅し、これ以上はATTを利用し、最大=-20Bm+20B0Bmまで(S9+78B)対応出来るようにしています。

【2】最大感度

 アマチュア受信機の感度表現は正確には知りませんが、最大感度と実用感度があり、アンテナ端子の信号を下げていきAF出力でSN30Bのポイントでのアンテナ入力信号値を実用感度と称して、dBu又はdBmで表現する。AF出力でSN10Bのポイントでのアンテナ入力信号値を最大感度と称します。実用感度=-110Bmが得られるように目標仕様とします。

【3】電波型式

 メーカー製では殆どがオールモード機ですが、私の志向ではSSBISBモードのみで、これ以外は不要です、とは言ってもFM以外は大半が検波出来ます、後はフィルターの選択により完全な検波モードに仕上げることが出来ます。電波型式の大半は振幅変調ですから、SSTV/データ/FAX等はパソコンとの併用で可能です。SSBモードは一般的に了解は出来ると思いますが、ISBモードは、あまり耳にしないと思います、IndependenceSideBand (独立側波帯) これはLSBUSBの信号を同時に送出するもので、各側帯波の変調信号の内容が同一の信号であればWSB(両側帯)方式となるが、ISBLSBUSBの変調内容が異なる電波型式です、変調信号は音声でもデータでも可能です、しかし、我々知り合い各局の中では殆どがステレオ音声を送出するケースが大半です、LSB側=L-CHUSB側=R-CHとして変調します、この電波型式を’B8W’と称します。以上の電波型式が復調出来るよう設計します。

【4】変換構成

 ダイレクトコンバージョン/シングルコンバージョン/ダブルコンバージョン/トリプルコンバージョンと各種ありますが、受信機の場合は志向もありますが、受ける電波が不特定多数のアマチュア局電波を受信するため、どこまで考慮した仕様にするか難しいです。送信機の場合は不特定多数に対して発射はするものの、発射電波は交信局に対して1局だけです。基本的には信号が通過する通路は限りなく短く(部品点数を少なく)することが望ましいですが、各構成で一長一短あります。 ダイレクトコンバージョン通路としては最短で最少の部品で構成出来ますが、感度と最大許容入力値の設定が難しく、不要電波の排除機能も容易ではありません。ダイレクトの場合、今までの自作経験でアンテナ回路(TOP)はバンド毎のバンドパスフィルターではなく、u同調方式で受信周波数にトラッキングさせる方式が前提となる、感度を得るにはRFアンプを入れますが、その後は検波となります、入力がBPFだと夜間等で大陸の強力な電波が受信周波数が離れていても検波回路に入力され非直線歪によってスプリアスが発生します。よって、RFアンプの利得は大きく設定出来ません、次の考え方としてRFAGC回路を装着し、検波回路への入力信号を制御する手法がありますが、受信機のAGC回路は基本的に受信帯域(SSBの場合3KHz)信号でフィードバックさせるのが基本です、でなければ、大陸の強力電波でAGC抑圧されます。よって、入力に狭帯域の同調回路を設け、AGC-RFアンプとし、検波後のAFでもAGCをかけ、RF20BAF40B 計60BAGCで構成出来れば理想的です。 シングルコンバージョンダイレクトコンバージョンの弱点を補うことが出来ます、つまりIFを1段設けることにより、RFアンプの設計が楽です、IFアンプで大きく利得を確保し、希望とするフィルター帯域を選択することにより狭帯域AGCをかけることができ、感度の確保も楽です、しかし、IF周波数の選択によってはイメージの問題が発生します、イメージを解消するにはIF=9MHz~10MHzに設定すれば、TOPBPFと併せて可能ですが、最終の検波回路においては周波数が低い程、容易で安定した回路にする事が出来る、一般的にフィルター等の入手を考慮すると455KHzを選択したくなりますが、455KHzだとTOPBPF特性でイメージ回避は困難です、よって、特殊なリジェクション方式を採用するなどの工夫が必要となります。 ダブルコンバージョン通路長としては長くなりますが、感度、選択度、いずれの項目としても容易に達成することが出来ます、やはり、受信機の基本構成となるのではないでしょうか。

【5】フィルターの種類

 以前は送受信機共にフィルタータイプが殆どでしたが、現状ではSSB信号の生成/復元はデジタル処理された機器で、低域~3KHzまで処理可能となっておりますが、アナログ処理となるとフィルターは必須となります、肉声を伝送する場合、高い方は3KHz制限がありますが、低い方は特に制限はありません一般的に男性の第1フォルマントは100Hz前後が多いです、これを忠実に伝送するには電気的に50Hz伝送を必要とします。フィルタータイプではキャリアポイントをフィルターの内側に移動させ低域伝送を試みたことがあります、これでは、どんなにシェ-プファクターの良いフィルターでも逆サイドの低域成分が犠牲となります。そこで、自作派はPSN(Phase・Shift・Network)手法で音声信号の変復調を行い、忠実度を優先するためキャリアポイントは十分フィルターの内側にセットし、逆サイド音声は出力しないように構成しています。このような構成の無線機をメーカーとしては量産することは出来ません(生産性が悪く、個体差の吸収も困難で販売出来る単価が得られません)、よって、自作派にとってはピッタリなのです、1台に対して十分な時間を費やし高価な部品選択で設計も可能です。

 PSN機器であってもフィルターは必要です、上の変換構成によりフィルターの種類も異なってきますが、最近、ルーフィングフィルターとか言って、文字を見たり耳にすると、いかにも高尚なフィルターで難しそうに聞こえますが、屋根形状フィルターのことでメカニカルフィルター/クリスタルフィルターと同様です、どういう過程で言葉が生まれたのか不明ですが、今までにない語彙でしかもヨコ文字で表現すると何か進展したような錯覚になる心理を利用しているような気がします。受信機ではIF(第1/第2IF)フィルターが最もウエイトが大きく、SSBLSBUSB)フィルターとして最も適した位置にキャリアポイントをセットし、パスバンド内のリップルに注視し、特に隣接強力信号によるAGC抑圧に問題なければシェ-プファクターは、あまり気にしない方が良いです、PSN復調により逆サイドは問題ないため。ダイレクト方式だとIFが無いため、RFフィルターとAFフィルターとなります、帯域を選択するためのフィルターはAFフィルターで構成することとなります、アナログAFフィルターにも色んな種類があり、自作派ではLC/アクティブ/スイッチドキャパシタがよく使われるタイプです、ダイレクトではS/N、ダイナミックレンジの関係でスイッチドキャパシタは不向きです、又、狭帯域/中帯域/広帯域と3種類位設けたくなります、LCではmHのHi-QLを作るには形状も大きくなり3種類となると結構面倒です、そこで、やはり簡単なのはオペアンプによるアクティブフィルターを選択するケースが多いです。IFフィルターでは455KHzや910MHzでは今でもセラミック/クリスタル/メカニカルフィルターは入手出来そうです。

【6】AF出力電力

 無線機のスピーカー出力としては1Wもあれば十分で、5W前後のデバイスを使う場合が殆どです。併せてヘッドホンアンプも同居させます、このアンプは高出力オペアンプで十分発揮出来ます。又、受信機の再生音は、不特定多数を受信しますので、ハイカットトーンとローカットトーンVRを付加させると便利です。

【7】各種機能

 受信機としての使い方にもよりますが、付加機能として特別にハードを要する項目に関しては優先度により考慮しますが、トランシーブ機能やRIT機能/IF-Shift機能のようにソフト処理だけで可能な機能は簡単に処理出来ます、但し、キー(操作ボタン)が必要となります。私は受信機として単品構成で受信信号/波形モニター/送信時のエアモニ音声信号 全て1台の受信機で処理しますから、最低必要な機能として

      1)トランシーブ機能→周波数/モード/バンドは送信機と連動させる(ONOFF)機能

      2)送受制御機能  →・送信時はエアモニター音声信号として受信しますので、自動で入ATTONさせます、又、スピーカー

               回線がONOFF出来るSWを設け、ハウリングチェックが出来るようにします。

                 ・送信から受信に切り替わった時、自分のエアモニ信号はS9+3040Bで受信しており、相手局が微弱

               な電波であった場合には、AGC復帰時間により頭が確認出来ない場合がある、よって、TX→RXなった

               瞬間(数十ms)にAGCを即座に放電し、最高利得へ移行させる。

      3EXTEND機能   →これは自分のエアモニター音声信号は、可能な限り広い窓で確認した方が判りやすいため、受信機の最

              も広帯域バンドで確認する、SWを設け通常の受信帯域での確認も出来るようにする。

      4IF-Shift機能  →上下にシフトすることにより音声信号の低域/高域成分の制御が出来ると同時に、隣接局のリジェクシ

              ョンも出来ます。

      5RIT機能     →最近では不要な機能となりつつありますが、Hi-Bandでは交信時に必要な時もあります。

 

送信機

 受信機と異なり、11交信が殆どですから、自分志向(好み)に設定すればよく、だから、送信機より一般的に受信機の方が難しいと言われる要因かも知れません、先ず最初にブロック毎にゲイン配分を設定します。

【1】平衡変調器

 オーディオ信号からSSB信号を生成する平衡変調器のデバイスに何を使用するかによって、平衡変調器の最大入力振幅が決まってきます、ここで使用できるアナログ変調器では、昔からのIQ変復調用ICを使用するか、スイッチ系のデバイスを使用するか何十年前のデバイスを流用するしかありません、最大許容入力は、歪のレベルをどこまで許容するかで決まります、エキサイターレベルの送信機は大電力(リニアアンプは別)ではありませんので、目標値として歪を含め全ての項目(キャリア/逆サイド等)で、Low-Band-60BHi-Band-50B位に、平衡変調器出力の歪としては-70B位確保出来ます。IQ変調用ICでは、高い物でも許容ベルは100V前後です、スイッチ系では2Vpp入力まで許容できるデバイスもあります。いずれにしても、ここで使用するデバイスによって全体のゲイン配分が決まり、搬送波の形態も変わり全体が左右されます。

【2】オーディオ信号の処理

 SSB信号を生成する平衡変調器までのオーディオ信号では、いくつかの機能ブロックが必要となります、マイクアンプ/2TONE信号/外部入力信号やこれ等を切り替えるSW回路、制限増幅回路、場合によってはAFフィルターが必要となりますが、受信機のダイナミックレンジはAGCでカバーしましたが、送信機のダイナミックレンジは制限増幅器やALCで処理します。ここで重要なのは制限増幅器の出力を何Vppに設定するかです、私の自作では平衡変調器の前段に6Bアンプを設置しますので、1Vppに設定しています、制限幅を幾つまで対応させるかによって、そこまでの(入力)回路が決定されます、つまり、20Bの制限をかける必要がある場合は、入力=10Vppレンジが必要となります、40Bの制限をかける必要がある場合は、入力=100Vppレンジが必要となります。次にIFフィルターに依存しないPSN変調では、AFでのHPFLPFフィルターが必要となります、このフィルターの挿入位置ですが、制限増幅器の前にいれるか、後ろに入れるかですが、受信機のAGC理屈と同様です、つまり、パスバンド内(通過帯域内)の信号に対して利得制御するのが理想です、となると、HPFLPFも前に設置するのが正解です、後ろに設置すると、アンテナから発射されない周波数成分(3KHz以上の高域音や低域の風切り音)をマイクロホンが拾うと制限増幅器へ入力されていまい、実際には発射しない周波数成分で制限されてしまう、しかし、前に設置するとなると制限機能を持たせるために、かなり大きなダイナミックレンジのHPFLPFが必要となります、後ろに設置すれば1Vpp以上の信号は扱いませんので色んな種類のフィルターが可能となります、2ポジ位に固定されたフィルターであれば、十分なダイナミックレンジで設計できますが、フレキシブル対応となると複雑な構成としない限り困難です。