タペット再調整
やり残した宿題を終わらせる・・・・・ことが出来るかな?





K100RSが到達した領域まで、あと5000km。
そこまでは確実に走らせたい。向こうに出来て、こっちが出来ないはずは無い。


振り返れば2005年の正月。正月休みを使ってのタペット調整(正確にはタペットは使ってないけど)を行いました。
その作業の甲斐あって、エンジンの異音は多少静かになりましたが、その代償としてはあまりにも大きな痛手を受けました。


     
人生初の調整はかろうじて成功?したものの、
素人作業丸出しのミスでヘッドカバー固定ボルトをねじ切りました。



折れたボルトと新品未使用のボルトの比較。
長さから察するに、1cmくらいはボルト穴に残ってる。


で、そのままの状態でアチコチ走り回り、折れたボルトの事は見て見ぬふりでいました。
当時でさえ大体6万km以上走っていましたが、その調整後は現在までに約3万km以上も走り回ったわけで。
(GPX750R生誕20周年&25周年イベントで明石にも行ったし、『代走』で北海道ツーリングにも行ったんだよねぇ)




ただ、2012年の車検時に改めて観察し直すと、そういった状態で「触らぬ神に祟り無し」といっていられなくなったことが分かりました。
あのヘッドカバーの所からのオイル漏れが気になりだしたのです。



車体左側・斜め後方からのエンジンの眺め。
このようにオイルの跡が目立ってきていました。


やはり『8本』で留めるべきカバーを『7本』で留めているのですから、完全に押さえつけられていないのか、
あのねじ切った角のところからのオイル漏れがもうどうしようも無いほどに進行していて、これを直すにはヘッドカバーを
ちゃんと『8本』で留め直すしかなさそう。そのためには、あの捻じ切ったボルトを抜くしかない。

そのヘッドカバーを外してボルトを抜くんだったら、そのタイミングでタペット調整をもう一回やってみよう。
それで多少なりともエンジンのストレスを減らして、10万km=メーター1周へ到達しよう・・・・・・という目標をもって
再チャレンジを決意しました。



その再チャレンジ=一番は捻じ切ったボルトの残りを取るために
工具屋で逆タップを購入し、穴あけ用のドリルも新たに買い足しました。


その再チャレンジの項目の一つに、ヘッドカバーパッキンの再利用をするというのもあります。
過去のイベント時の話のネタとして必ず話になる「ヘッドカバーパッキンが無い」というパーツ供給状態が
GPXのタペット調整の作業を必要以上に困難にさせているのですが(新品パッキンが無いとやっぱり不安になる)、
今回は再利用を前提としたパッキン固定対策を考えて実行する実験も兼ねてます。
これが成功すれば、GPXの維持管理に新たな道が開ける・・・・かも?


     
ヘッドカバーボルトに厚みが1mm強のワッシャーを追加して
ヘッドカバーパッキンなどの痩せた分を補うように固定したいと思います。


まあ、このようにいろいろと準備だけは2013年夏前から進めていました。
秋ごろにはGPXの車検→K100RSの車検→K1300Sの定期点検と車体の入れ替えがあるので、その期間にGPXのために
重点的に時間を割いてこの作業をやってしまおうと思っていました。
カレンダー的にも9〜10月は日曜を含めた2連休(日月と休めれば、連続した作業時間も確保出来るし)が続く配置だったこともあり、
そのタイミングを逃したくなかった。
これを逃したら、次は正月ごろじゃないと作業時間が取れないぞ。


しかし、その意気込みも9月中は台風などの悪天候と休日出勤で打ち砕かれ(それでなくても、休日出勤が続いた秋だった)、
もしかしたらヘッドカバーを開けずにコンテナにUターンか?とも諦めかけてた時もありましたが、
10月の連休で奇跡的に晴天&仕事無しの休みが確保出来たんで、いざチャレンジ!



久しぶりにGPXの皮を剥ぎ取って、剥き身にしました。


手際よくカウル類を取り外し、途中の作業手順を見失わないように『手をつける場所』をちゃんと確認する。
まずヘッドカバーを外して、タペットクリアランスを調べて再調整→次にあの捻じ切ったボルト穴からボルトの残骸を取り除く
→パッキン類を掃除して液体パッキン併用でヘッドカバーを戻す→カウルを取り付けて何がなんても走らせる姿に戻す。

と、気持ちを整えたところで、ヘッドカバーに手をかける。『7本』のボルトを外し、パッキンを切らないように丁寧にカバーを取り外す。



ナンダコリャ?


開けたそばから衝撃的なモノが目に入ってきました。
前回の調整がマズったのか、一個ロッカーアームが外れてました(場所は一番右側のシリンダー・左側の吸気バルブの)。
これって、いつ外れてしまったんだろう?多分、昨日外れたって訳じゃないだろう。
作業開始早々から意気込みを打ち砕くような光景がシリンダーヘッド内に広がっています。
ま、しかし、これだけのコトが発生しながら、エンジン内部に余計なダメージらしきのが無さそう。走ってる最中にエンジンロックなんか
してたものなら、もっとマズかった。これだけで済んだのだから、良しとするか。

外れたロッカーアームと調整ネジ部を拾い上げて、残る固定ナットを捜したものの、シリンダーヘッド内には残っていなかった。
ここに無ければ、カムチェーントンネル内を落ちてオイルパンにでもころがってるか?


さて、気を取り直して、まずはタペット(バルブ)クリアランスの再調整から。
このために自分のサイトを見直して、過去の手順を思い出したりしてました。もう8年も前のことですもの、記憶が曖昧です。

今回も吸気側=0.1mm・排気側=0.15mmで揃えていって調整していきました。しかし、前回ほどその数値にはこだわらず、
それぞれの最低クリアランス・・・・0.08mmと0.13mm・・・・のシックネスゲージが入ればそれでもOKってくらいにしました。
なぜならば・・・・・・


     
外れたロッカーアームの接触面が2mm弱くらい磨り減っていて
シックネスゲージのしなやかさをもってしても、その曲面を捕らえきれなさそうだったから。


さすが10万km近い走行距離を重ねたエンジン。ただで済むような状態ではなかった。
ま、そうは言ってもマイクロロンを添加したおかげか、磨耗した部分もそこそこ滑らかな接地面になってたのが救いです。

こんな状態のロッカーアームを15個調整しなおして、この部分は終了。最後に全て(15個)の固定ナットを締め付け確認して終わり。
後で別のロッカーアームが外れてもイヤだから、その確認だけはしっかりしておきました。


さて、次は懸案のボルトの残りを取り出そう。



あの穴(残ってるボルト)にドリルで穴を開けるために周囲を防御します。
特にボルト穴周辺から切り子がエンジン内部に入らないように。
これ以上余計なモノは入れたくない。


仕事場から持ってきた電動ドライバー(14,4V)に細いドリルを取り付けて、残ったボルト以外に傷をつけないように注意しながら
レッツトライ!

なかなか固い材質なのか、買ってきたドリルがヤワなのか、ボルトの残骸に穴が開きません。
中途半端な穴の状態で逆タップを使ってみようとしてみたって、ドリルの穴に入っていかないので、そこはちゃんと穴を開けたい。
しかし、力強く穴を開けようとドリルを使うと、回転力がボルトに伝わって、さらに穴の奥にボルトが進んでいく!
それがイヤで力を抜くと、ドリルの穴は開かないし・・・・・・・。で、力を入れなおすと、ドリルの芯がずれてボルト穴に傷をつけそうになるし。

何度かドリルの刃を交換しながら悪戦苦闘した結果、ようやく逆タップの噛みこみそうな穴が開いた。
そこに逆タップを押し付けて慎重に回してみたら、少しづつ回りだした。もう「勝ったも同然」だね。


     
やっとのことで取り出せました。


ようやく『宿題』が終わった瞬間です。ボルト穴の方も傷つかずにしっかりと新品ボルトを固定出来そうだし、無事に成功しました。
この後は、ブレーキクリーナーで周囲のカスを吹き飛ばして、ひとまず終了。この日一番の山場を越しました。

この後は、ただただ安全第一で元通りの姿へ戻していくのみ。ここで気を緩めると、大失敗の元です。
ヘッドカバーやシリンダーヘッドにくっついたままになってる古い液体パッキンのカスを、爪や古いウエスを使ってきれいに取り除き、
さらにブレーキクリーナーで強力に脱脂して、乾かしておく。
一方の古いパッキン類(ヘッドカバーに使うカバー外周部のと4つのプラグホールの)も、ついてる古い液体パッキンのカスを
きれいに掃除して、やっぱりブレーキクリーナーで強力に脱脂。これも乾かしておきます。
ヘッドカバーボルト(7本+新品1本)に、ワッシャー(8枚)とヘッドカバーボルト用のパッキン(昔用意した新品7個+中古1個)を
入れておいて、工具箱から液体パッキンを取り出す。

で、液体パッキンをシリンダーヘッド部に薄く塗りつけ、ヘッドカバーパッキン類を乗せ、これまた薄く液体パッキンを塗った
ヘッドカバーをそ〜っと乗せる。そこへヘッドカバーボルト8本を取り付けていく。
この時、ボルトを回すのに使ったのは『指先』のみ。いきなり工具を使ってまわすのは危険と判断して、『指先』で回らなくなるまで
入れていって、最後の固定で10mmのメガネレンチを指先で持つだけの力の入れ方で180度くらい回して終わりにしました。
ボルトでの固定よりも、液体パッキンでオイルを止めるくらいの気持ちで固定しました。気合の入れすぎでまたボルトを折ってもねぇ。



ヘッドカバー固定後の様子。


この状態でヘッドカバー周囲のパッキンのズレとかを再確認して、はみ出た液体パッキンをきれいに拭き取る。
ついでにエンジン周りのオイル汚れとかをウエスで掃除して、外したカウル類を元に戻し、ライト等の点灯を確認して完成です。

この後は、液体パッキンが完全に乾くであろう24時間後を目安に買い物がてらの試走に出かけて、エンジン周りのオイル漏れなどを
チェックすれば、完全に整備完了。そこまで確認すれば、この先何年かは大丈夫でしょう。
が、前にもやった「調整間違いでバルブが閉じずに、エンジンがかからない」ことがあるかもしれない?と心配になり、
ちょっとエンジンをかけてみた。

燃料パイプを外したせい?で、なかなかエンジンがかからなくて多少焦りましたが、そんな心配を他所にちゃんとエンジンがかかった。
ほんのちょっとだけどエンジンの異音も減った気がするし、一応OKってことで。




さて、連休2日目。やっぱり連休って良いね。ゆっくりバイクが楽しめる。
たっぷりと余裕を持ってGPXの準備をして、前回調整時にも行ったライコランドへ買い物がてらの試走へ。

前日ちょっとかけたせいか、エンジン始動については問題無し。
で、懸案のエンジンの異音。やはり調整が効いたのか、ほんの少しだけ減った気がする。本当にちょっとだけ。
それに、ほんの少しアイドリングも安定した気がするし。やっぱりやってよかった。

走り出しても快調そのもので、異音が大きく聞こえることもなくて、いたって普通に走れた。
渋滞時に『ラジエターファンの配線がファン自体と接触してて、ファンが回り始めると接触音が発生する』というのがありましたが、
帰ったあとで、それを修正(ドライバーなどで配線位置を移動した)しちゃって終わり。作業後の問題点は発生しませんでした。

そのライコランドの他にも出かけたりして、十分に走りこんだ後のヘッドカバーの様子はと言うと・・・・・


     
とりあえず覗けるとこからあちこちチェックしてみたけど、漏れてる様子は無いし
オイル臭いことも無い。


この部分も大丈夫だな。
これにて一件落着。今回は大成功ってところでしょう。
よかったぁ〜。やる前には『また失敗してたらどうしよう』って心配もしてました。特にあのヘッドカバーボルトの処理のトコなんかは
傷口を広げかねない可能性もあったわけですから。
でも、無事に取れたわけだし、向こう暫くは安心して乗れます。・・・・・・・・・1コ取れてたヤツは、また将来のネタとしよう。


その後、インターナショナル・トレーディング・ムラシマへGPX用の部品を幾つか注文を出して、将来の準備をしました。
メインの品物は、あのロッカーアームの『無くなってた部品』を用意することです。



ナット1個だけだと割高なので、いろいろと取り寄せました。


あのナットの他に、新品エアクリーナー・ラジエターのキャップ・ヘッドカバーのパッキン8個、それとクラッチスレーブシリンダー。
こんなのを用意しておきました。
で。この注文のときに、過去に在庫無しと言われた部品もダメ元で注文してみました。
具体的な商品名では、ヘッドカバーのパッキンとウォーターポンプ。そして、この2つはやっぱり無かった。
そして、比較検討用として1個だけ新品ロッカーアームも注文したのですが、これも「在庫無しのメンバー入り」をしてました。残念。


     
このナットを用意しておけば、このロッカーアームを復元できる。
ただ、すんなりとカムシャフトの下に入るのか?


すぐに出番はないけど、無くなる前に手元に置いておけば、安心出来ます。
まあ、走るのには不都合は無いし・・・・・・バルブが1個動かないだけだから・・・・・、10万kmまでこのままで行こう。

という事で、GPXイジりは終了です。