If 〜変容〜

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「あぁぁーっ!んっんっ…あぁ…っ!」
自分の嬌声を、半助は信じられない思いで聞いた。
あの人のモノでは無い、月氏の血。
力づくで含まされたソレは、半助を激情へと誘った。

山田先生。私、先生のモノになら…なっても良いです。
山田先生のモノにして下さい。

あの時、長年思い続けた伝蔵に…
逢えないと思っていた伝蔵に、思いの丈全てを必死に伝えようとした。
あの…血が沸き立つ様な高揚。
それに…似てはいないか?
あの高ぶりは、月氏の血が成せる技だったのか?
「違うっ!」
半助は、自分の身体を、ひしと抱いた。
「違う!」
あの人の時と、違うのだ。
同じな訳がない!
「違う!」
静まれ!静まれ!必死に祈った。

…山田先生を、心から好きだったから
だから、抱き締めて貰いたかった。
振り向いて欲しかった。
見詰めて欲しかった。
その為なら、どんなに浅ましいことになっても、自分の全てを捧げるつもりだった。
だからこその…
だからこその、欲情だったのだ。
半助はそう思っていた。
その…だった筈だ。

しかし、身体が……。
涙がドッと出た。
目の前の月氏は、伝蔵では無いのに…。
「何が違う?」
雅之助が、半助を見ていた。
そんな雅之助を視界に入れてしまった瞬間、半助の身体を甘い衝撃が走った。
「あ…ぅ…」
信じられなかった。
雅之助を間近で見ただけで、声を聞いただけで半助は、下肢を汚していた。
「ぅ…嘘だ」
半助は、自分の変化が信じられなかった。
雅之助は、声を立てて笑った。
雅之助には、半助が自分の声に反応して果ててしまった事が、その芳香ですぐに分かった。
「可愛いヤツだな。」
顔を隠す様に、雅之助に背を向けていた半助を仰向けにすると、上半身に腕を乗せ上半身を拘束する。
雅之助の触れた所全部から、じんわりと熱が広がって、半助は抵抗を忘れていた。
そして何の苦もなく、ズボンに手を掛け、ドロドロになった下着ごと脱がす。
「下着に出すなんて、勿体ない事をするな」
その言葉で、半助は自分が下半身だけ露わにさせられている事に気付き、赤面した。
雅之助は半助の両足を限界まで開かせると、間に身体を入れ、足を閉じられない様にした。
「あ…」
雅之助の視線を感じるだけで、さっき放ったばかりのモノが頭をもたげてくる。
信じられなかった。
なんでこんな事になるのか、分からなかった。
雅之助の手が自分のモノに伸ばされる。
それはすっかり固くなり、くちゅりといやらしい音を立てた。
半助のモノは、たったそれだけの事で、イッてしまいそうだった。
「俺が、オマエから精気をもらって、再びオマエに俺の精気を入れる事で【血の契約】は成立する。」
雅之助が何を言っているのは、半助には半分も頭に入ってはいなかった。
とろんとした瞳で、自分に成される事を見詰めるだけだった。
「こうして見ると、人も可愛いもんだな。しかもこれからオマエは、俺に強大な力を与えてくれる訳だ。」
雅之助は可笑しくてたまらないといった風で、半助のモノを口にした。
「嫌ーーーっ!んんっ!」
雅之助が自分のモノを口にするのを見ただけで、半助は達していた。
あっと言う間のことだった。
それを美味しそうに飲み下す雅之助。
「やめ……」
雅之助は、名残惜しそうに、根本から半助を舐め上げる。
「…んっ…んっ…」
その度に、半助の先端から、とろりとろりと甘露が漏れる。
「確かに、これは凄いな。」
雅之助は、自分の身体に底知れないエネルギーが湧いて来るのを感じた。
たった一度の搾取で、これ程とは、正直思っていなかった。
改めて、目の前の果実を見る。
汗で乱れた髪を頬に張り付かせ、両目は涙で一杯だった。両足はしどけなく開かれたままで、ぐったりとしているが、ひくひくと間欠的に震えている。
ここまで、衝撃を受けているのは、自分が山田伝蔵以外の手で【果実】になったからか?
そう思うと、絶対的に支配してやりたくなってくる。
伝蔵の事など、考えられないように、自分の色に染めてやる。
そして、伝蔵に引き合わせてやったら…どんな顔をするだろう?
悪辣な思い付きに、雅之助は下肢がじわりと熱くなる。
「おい」
雅之助は、半助に馬乗りになった。
半助は、はっと我に返る。
雅之助は、半助の前で自分のモノを取り出す。
「オマエは、俺用の果実だ。俺の精気を得る為なら、どこからだって飲み込む淫乱だ」
それを何処に突き込むつもりなのか…半助には分かっていた。
昔から、何度か経験させられていたから…。
「そんな…事…」
しかし、雅之助は、意外な行動に出た。
「あるんだヨ…どこからだって…な」
雅之助は、にやりと笑うと、そのままの体勢で自分のモノを扱きたてる。
半助は予想外の展開に、呆然と、それを見詰めた。
「オマエを見てると、幾らでも出来そうだ…流石果実だな」
雅之助の手淫は、激しさを増す。
しばらくして、うぅ…と呻いたかと思うと、雅之助のモノから、びゅうと精気が迸る。
それは、半助の顔や胸、腹に撒き散らされた。
こんな事、始めてじゃない。
半助の理性は、早くシャワーで全てを流してしまうことを望んだ。
しかし、同時に激しい焦燥感に襲われた。

…喉が乾いた。
勿体ない。
なんで口に出してくれなかったんだろう?
アレが…欲しい。

………っ!
半助は、自分の考えにギョッとした。
自分は、今何を考えたのか?
「見てみろよ」
意味深に雅之助が、半助の胸元を指さす。
雅之助に汚された胸。
そこに散っていたドロリとした滴が、蒸発しているかの様に消えていく。
「染み込んでるんだ。そこで吸収してる」
「う…嘘っ!」
しかし、滴が消えていく部分が、カッと熱い。
はぁはぁ…と半助の息が上がる。
身体中に、ゾクゾクと電気が走る。
先程、雅之助の血液を舐めた時と同じ…。
「嫌…嘘だろ?!そんな…馬鹿な!」
「こんな皮膚からでも俺が欲しいのか?凄いなオマエ」
「違う!嘘だ、こんなの…」
それが事実なのは、半助自身が実感していた。
雅之助は、全てが半助の中に入っていくまで、その様を半助と共に見届けた。
それが吸収されていくにつれ、自分の鼓動も大きくなる。
嘘を付きようがなかった。
それは、鮮やか過ぎる程の快楽だった。
今まで味わったことのない、明確な快楽。
理屈抜きの原始の衝動だった。
身体に引きずられて、欲しい…と思ってしまった心。
それを甘受する身体。
自分は…何という存在になってしまったんだろう?

……その位の理性を保てない様では、畜生に落ちる。
利吉を諫める伝蔵の言葉だ。

自分は、ソコに…否、それ以下にまで、落ちてしまった。
…落とされてしまった。

半助は、虚ろな目をしてそれを見ていることしか出来なかった。
【血の契約】が成立すると、果実は、月氏の精気が糧となる。
特に主人の精気は絶対で、主人の気まぐれに左右されないように、それこそ全身から受けていかないと、生きていけない。
雅之助も、果実を持ったことがなかったので、生で見るのは初めてだった。
面白い見せ物に、雅之助はひとまず満足した。


                     ◇   ◇   ◇


その日、半助は肌から吸収させられた精気が熟成するまで、散々我慢させられた上、一転、空になるまで絞りつくされた。
半助に残されたのは、泥に沈み込むような倦怠感と、干涸らびてしまうような焦燥感。
「死んじゃう…死んじゃうよぉ…」
半助は、泣きながら雅之助の精気をねだった。
「ケツと、顔に掛けるとのどっちが良い」
雅之助は残酷な選択を迫った。
精気を熟成させるまで、雅之助は半助の下肢を執拗に弄くった。
半助が感を極める程に、精気は熟成する。
人の時に感じた前立腺は健在のようで、当然、雅之助は、より良い精気に熟成させるため、そこを見逃す筈は無かった。
半助のそこを女の性器のようにしておいて、ささやくのだ。
どちらが良いか…と。
顔で精気を受けて、滴るまでの間に、本来有り得ない皮膚という部分から、浅ましくそれを受け入れ、充足を得る事だけは嫌だった。
まだ、人の世界でもあった男同士の性交のまねごとの方が良い。
「こ…ここに…下さい。…お願いします」
半助は、獣の姿勢になり、自らソコを開いて雅之助を招き入れた。
「絡みつくな…」
雅之助の言葉は、真実なのだ。
半助の粘膜が、雅之助の精気を求めてうねっていた。
雅之助は、半助の淫らがましい器官の感触と、嬌声をしばらく楽しむ。
そして、やっと与えてやるのだ。
「そ…ら、くれてやる!」
雅之助の余裕の無い声を聞きながら、半助は、身体の奥に燃える様な迸りを感じた。
「あぁぁ…ん!…ん!」
ソコが、全てを飲み込む様な動作をするのを止められなかった。
しかし、半助は満足していた。
干涸らびた大地に恵の雨が染み込むように…。
間違いなく半助の身体は、充足を得た。
それが半助を傷付けた。
「今、やった分は、明日の夜搾ってやるから…楽しみにしてるんだな」
雅之助は、そう言って部屋から出ていった。
あまりの悔しさに、半助は自らの指をソコに突き込み、掻き出そうとしたが、既に、ソコは、雅之助の精気を嬉々として受け入れ、涙ほどにも摂り零す事はなかった。

これから…
こうして生きていくしかないのか?
毎日、雅之助に抱かれて…。
求めさせられて…。
それが…当たり前になって…。
気が狂いそうだった。

たった一晩の事なのに
たった一晩で…全てが変わってしまった。
変えられてしまった。
あなた以外の人に。
変えられるなら、あなたに変えられたかったのに…。

半助は、初めて…自分を拒んだ伝蔵を恨んだ。


―終わり



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