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中山身語正宗 天徳山 金剛寺です

過去の法話

平成24年11月

わが子に、親が残してやれるもの

 

今年の7月頃だったかな。「たかじんのNOマネー」で水道橋博士(たけし軍団)が子供のキラキラネームで激怒されておりましたね。私も赤ちゃんの名付けをよく頼まれますが、一方的な名付けはせず、親にいくつか候補を考えてきてもらっています。ところがですたい。最近は「これ、なんて読むの」ってのが多い。過去に一回こんな子が相談に来ましたよ。
「お坊さん、名前って、改名してもいいんですか。まったくうちの親は、私が将来社会に出ることを考えなかったんですかね。恥ずかしくて、名は家を表すでしょ」と。


 名づけに限らずですばい。親が将来を見据えずに、その場の感情だけでことを処して、子供が頭を抱えるケースは案外に多いですよ。お墓や仏壇の継承についてもしかり、借金についてもしかり、親族とのつき合いにしても、またしかりです。いい加減な親から、いい加減な子供が育ったんなら問題はないんです。まかり間違って、いい加減な親から、ちゃんとした子供が育った場合に問題が起こるんですな、これが。なんでうちの親は、とね。

 今年の7月30日に縁あって、西日本テレビ午後の情報番組「タマリバ」に生出演させてもらいました。それがきっかけで現在、収録出演ですが木曜日に1分間ほど同番組に出させていただいておりますが、画面に見える華やかさの裏は、想像以上に大変そうですばい。

生放送では視聴者からのファックスで、家族の問題を受けつけたんですが、やっぱり、子育ての悩みが多いようですね。まあ、何にせよですたい。子供は育てただけしか育ってませんもんな。オギャーと生まれたら横一線。0からのスタート。ヨーイ、ドンで子育てが始まります。10年経ったら4年生になりますが、この時点で子供たちに差が出ています。これは子供の差じゃないもんね。育てた親の差が出ているだけだもんね。「三つ子の魂百まで」でっせ。この差を子供は案外に長く引きずりますばい。親の責任は重大だよ。

たまにお寺に、30歳、40歳になる子供の愚痴を言いに来らっしゃる親がおられます。「いい年してうちの子は」とね。いやいや、オギャーと生まれて明日30歳になる子はいないからね。誰がそう育てたのっていう話です。しかし、子供が何歳になろうが、親は生きている限り親ですからね。愚痴を言う前にやんなきゃならんことがありますばい。

最近、中学生になる子供が反抗期で、口もきいてくれんようになりましたとの相談もよくきます。子育ては「やどかり方式」ですな。突きゃ突くほど中に入っていきますばい。ほっといてんない。じわじわ外に顔を出してきよりますから。但し、出てきた場所が子供にとって安らげる場所ならね。親はその場所をただ作っておきさえすればいいんです。成長していく段階として、反抗期は誰にでもありますから。問題は、受け皿の方ですよ。

夫婦の問題も同じですばい。「仕事でもないくせに、主人の帰りが遅い」と愚痴をこぼす奥さん方が多いようですがね。帰ってきてホッとする場所なら帰ってきよりますがな。小鳥ちゃんなんだから。玄関開けた瞬間に鬼の形相で仁王立ち。不平不満をまくしあげて、出てくるご飯が「チン」ばかりじゃ、ね。・・・こりゃ間違いなく、炎上するな。

 まあ、まあ、しかしですばい。やっぱり子育ては難しいよね。特にわが子はね。他人の子は嫌われてもそれほど支障はないばってんが、わが子は先があるからね。

私にも子供が3人いますが、特に真ん中の女の子は気を使いますな。いつのタイミングで言いあげちゃろかいなと。タイミングを誤ったら携帯電話に限らず、顔を突き合わせる日常会話までも着信拒否されますからな。ところがですたい。そのタイミングがやってきたんですわ。大学で家を離れることになったからね。本人ルンルン気分だから、今がチャンスと、18年間気になってたとこを「心得条」として突きつけたりましたで。覚悟して。

( 心得9カ条 )

1、学生の本分をわきまえ、何のために大学で勉学に励んでおるかを常々心に問いかけよ。お金は天から降ってくるものに非ず。身を粉にして働く親の姿を忘るるべからず。

2、仕送りは計画を立てて使え。一か月は31日ある。心の赴くままに使えば無くなることは必定。欲におぼれる生活は控えよ。

3、約束の時間は厳守せよ。人を待たせるくらいなら自分が待て。時間にルーズな人間は全てにおいてルーズになる。人の時間を盗むべからず。

4、服装の乱れは心の乱れにつながる。人生の乱れにもつながる。着飾るよりも心を飾れ。加えて、感情を顔に出すことならず。いついかなる場所でも笑顔を保て。

5、如何に些細なことでも、いい加減な心で事に当たるな。これくらいならいいだろう。これくらいなら許されるだろうの行いは、必ず人に迷惑をかけることとなる。

6、人と話をするときには、自分が言われて嫌なことは言うことならず。一度心の中で言葉に出し、確かめてから言うべし。口は災いを生み出すを心得よ。

7、確かめもせずに、この人はこんな人だと決めつけるな。人がそう動くからには、そう動くだけの理由が必ずある。理由もなく人が動くことはない。勝手な潜在意識は捨てよ。

8、人の口車に乗ってはならん。特に学生証提示や、署名、捺印する場合は重々考慮せよ。その他、選択事はどんな些細なことでも親に相談せよ。簡単に物事を考えるな。

9、いかなることも、まず自らが率先して動くこと。人は誰しも苦しいこと、辛いことには目を背ける。人の嫌がることをやって、初めて徳が身に着く。人並みは、人並みでしかない。努力もせずに得られるものなど、この世には唯の一つもない。

 「私って、こんなに気をつけなきゃいけないことがあったの」と、娘が。ほう。受け入れおったか。ほぼ、賭けだったんだけどね。タイミングがよかった。ラッキーだったね。ちなみに娘の名誉のために、今はこの9カ条、半分はクリアーしとりますばい。

旧暦の11月15日は、1年間で最良の吉日といわれとります。だからこそ、そこに七五三詣でを持ってきたんでしょうな。子供は授かりものです。授かりものだからこそ、3歳まで、5歳まで、7歳までこのように育てましたと、氏神さんに見せに行っておるんですばい。そして子供としての最期の参詣、そう、成人式です。その時、その子のその姿を見て「この親に預けて正解だったのかな」と、神さんに思われんようにせにゃならんですわね。

 ちなみに、赤ちゃんがお腹に入って5カ月目の戌(いぬ)の日に、腹帯というのを巻きます。犬は安産ということからあやかってるんですね。その腹帯の長さは7尺5寸3分(七五三)、約257センチ。お腹におるうちから、幸福を願ってのことなんでしょうな、親は。