五月節句飾り(初節句織)の豆知識

6.鯉幟(こいのぼり)・吹流し・旗幟(はたのぼり)について
外幟は、馬印(各家の印)を立てたごく簡単なものでした。
本来神を招く目印として立てられたものです。
鯉のぼりといえばすぐに五月節句を想いつくほど代表的なものですが、これの始まりは左程古いものではありません。
これは、徳川政権下お節句に武家では旗幟・挿し物・吹流し等を飾り立てましたが、町家で立てることが許されなかったので、旗・挿し物の代わりに鐘鬼や武者を描いた幟を立て、吹流しの代わりに鯉の形を吹貫きとすることを創案して民家で立てるようになりました。
鯉は度胸が座った魚で又、龍門の滝を登り龍となって天に登るという中国の伝説から出世の魚といわれ勇気と成功の象徴とされ日本人には受け入れられ易かったのでしょう。
金箔の鯉がありますが、これは鯉の形に龍を表したものだそうです。
※中国の伝説に出てくる龍門にいる魚は、鯉ではなくチョウザメですが、日本にはチョウザメがいないために、龍にヒゲがあることからと日本では度胸のある魚といわれている鯉に置き換えられたそうです。

吹流しの色は”五色(ごしき)”ですが、古代中国の”五行説(ごぎょうせつ)”に由来しています。
万物は、木・火・土・金・水の五つの要素で形成されているとの考え方です。 
   ※中国の五色の糸を体(腕)にかけて厄を払う風習から由来しているとの説もあります。
神道では、木は色・火は色・土は色・金は色・水は色を表現しています。
お祝い事に、仏事を想いおこす白と黒の取り合わせが好ましく思われなかったために、吹流しの色は変更されました。
県内では、白一色の3本足の吹流しをあげる場所もあります。

※明治時代以降、一般に矢車と吹き流しと鯉のぼりを一緒にあげるようになったそうです。
私の思うところ
鯉幟は、
”神様の庇護の下、無事に成長するように厄払いをして、子供の立身出世を願う。”
という意味が込められて飾るものです。
※神様とは、八百万の神様のことです。
7.鎧・兜について
五月飾りの鎧兜の金具部分(吹返・草摺(くさずり)・大袖などの部分に付いている金属部分)には、
雛道具と同じように”菊唐草紋(文)様””牡丹唐草紋(文)様”等が多く使われています。
紋様の美しさもさることながら、富貴や繁栄・守護の意味が込められているそうです。
また、の彫りこまれた物も見られます。
昔より、昆虫は、幼虫からサナギそして成虫に美しくかわる事より立身出世”を表すものの代表です。
トンボは、前進しかしないことより勝虫(かちむし)とも呼ばれ、好んで前立に使った武将もいます。

一般的な”星兜”を説明します。
※兜の鉢(はち※半球形の部分)に”星※兜の鉢の鉄板を留める鋲(びょう)”が打ってあるもの。
兜の鉢の天辺(てっぺん)に穴を開け※”天辺の穴”、縁に共金の覆輪或いは金銅の葵葉形の座と菊座玉縁を施して”八幡座(はちまんざ)”とし、鉢の裾(すそ)には帯状板金をまわして腰巻とし、鉢に”星”を打つのが普通です。
 
”八幡座”は、神の宿りたもうところとして神聖視され、”天辺の穴”に指を入れることは硬く禁じられていたそうです。                                     (日本の甲冑より)
  ※兜の天辺は、神様の鎮座する場所としているそうです。

”星”は夜空の星に例えられて、古来より神聖な存在であり”運命”を象徴するものです。
兜の鉢には、数多くの”星”が打ってあることから
”数多くの人生の選択肢の中から、自分の運命を決める”との意味が込められているのです。

”鍬形(くわがた)”は、昔の農具の鍬からきたものとされています。
 ※諸説いろいろですが、
   大将の威厳もさることながら、”自分の足で大地にしっかりと立つ””その土地を治める”
   との意味が込められているのでしょうか?

わたしの思うところ
鎧・兜飾りは
”神様の庇護の下、自分の人生を切り開く、雄々しい子供に育つ”という願いが込められ飾られるものです。
※神様とは、八百万の神様のことです。
実際、古く南北朝のころから、天照皇大神・春日明神・八幡大菩薩の神号を祓立や三つ鍬形に透かし彫りしたものがあります。
(徳川家康の三社の甲冑・武田信玄の諏訪法性には、諏訪上下大明神・
上杉謙信は、摩利支天の甲冑や三宝荒神の甲冑)

八幡座(はちまんざ)・天辺の穴(てっぺんのあな)・星(ほし)・吹返(ふきかえし)・眉庇(まびさし)
・忍の緒(しのびのお)・鍬形(くわがた)・面頬(めんぼう)・鳩尾版(きゅうびいた)
・栴檀板(せんだんいた)・草摺(くさずり)・大袖(おおそで)・籠手(こて)・佩楯(はいだて)
・臑当(すねあて)・毛履(けばき)

※近年、当店では新作の名将の鎧も人気があります。
(伊達政宗・織田信長・徳川家康・上杉謙信など)
8.日本の名将
織田信長公:美濃の国の城主の息子に生まれ、冷静な判断力と優れた分析力で乱世を生きた英雄の
      中の英雄。
上杉謙信公:謀略渦巻く戦国の世にあって、謀を潔しとせずさっそうと生きた武将。
       ライバルの武田信玄に塩を送ったのは有名な話。
徳川家康公:徳川300年の長期政権の下を築き、その死後も「権現様」と神格化され敬われた武将。
       その生涯は屈辱と忍耐の連続だったが、智謀と強運で戦乱の世の勝者になった。
伊達政宗公:奥州の一寒村の豪族からわずか5年の間に睦・奥州制覇を成し遂げ、天下を取る器を
      持ちながら秀吉に仕え、後、家康の外様大名として家名の存続をはかった。「伊達者」のルーツ
9.弓太刀・大小刀について
一般的に、内飾りの横に添えられるものに”弓太刀”がありますが、名前の”太刀”は主に儀式に使用されるものです。 
それとは別に、二本差の大小刀がありますが、名前の”刀”は実戦の武器として使用されるものです。
古来より、これら刃物は神聖視されていて、魔物は刃物を嫌うと考えられて厄払いの意味で飾られるようになりました。
  (脇に差す場合、
   ”太刀”は、反りを上にして上弦の月のようにして差します。
   ”刀”は、反りを下にして、下弦の月のようにして差します。)
10.飾り方と仕舞い方の注意点
鎧・兜は、多くの金具(金属部分)を使っていますので
くれぐれも直接素手で金具には触れないように注意します。
※布の手袋を使い御飾りください。
※お店でも、手袋を使うのは金具がデリケートなため、手油や汗などでくもらないようにするためです。
                  (素手で触ると2〜5年後、金具がくもる(サビ)場合が多いです。)
     
※飾っている時も鍬形部分は素手で触らないよう注意が必要です。

仕舞うときには、
季節がら季候が不安定な日が多いので、くれぐれも晴天の日に(できれば晴天の日が2日ほど続いた後に)窓を開け風通し、櫃(ひつ)の中などに防虫剤を入れないで御仕舞い下さい。
※防虫剤を入れると金具部分がくもる原因になります。
飾り台、屏風については、仕舞う場所(蔵・物置など湿気の多い場所の場合)によりシリカゲル等の
乾燥剤を入れてください。
シリカゲル等の乾燥剤は、カメラ専門店などで購入できます。
 ※乾燥している場所に仕舞う場合には必要ありません。(木地をいためる場合があります。)
 ※分からないことがあったら、五月飾を購入した店に問い合わせてください。